「YouTube」に著名投資家の音声合成した偽広告 詐欺の新手口か

AIで生成したとみられる音声を使って、著名な投資家になりすました偽の動画広告が「YouTube」で表示されるケースが相次いでいることが分かりました。詐欺広告の新たな手口とみられ、なりすまされた投資家などが注意を呼びかけています。

今月に入って著名な投資家などになりすました偽の動画広告が、動画投稿サイト「YouTube」で表示されたという報告がSNSなどで相次いでいます。

このうち、YouTubeのチャンネル登録者数が63万人余りいる投資家の女性のもとには、偽の広告を見たという人からメールやコメントなどで問い合わせが100件以上寄せられているということです。

偽の広告では、本人の映像にAIで生成したとみられる音声を合成して「私の投資ノウハウを直接シェアします」などとかたって、LINEグループに誘導しているということです。

著名な投資家の音声を合成した偽の動画広告はほかにも複数確認されていて、金銭をだまし取る詐欺広告の新たな手口とみられます。

なりすまされた投資家の節約オタクふゆこさんは「LINEでの活動は一切やっていないし、SNSやYouTubeの広告も出していません。率直に許せないし、自分の顔が勝手に使われ、嫌な気持ちです。プラットフォーム事業者には詐欺被害にあう人が出ないよう対策をしっかりしてほしい」と話していました。

YouTubeを運営する「グーグル」は「著名人へのなりすましは明確に禁止しています。継続的に広告を審査し、問題のある広告が検出された場合は直ちに削除する措置を講じています」とコメントしています。

専門家 “事前審査や削除の体制強化を”

著名人や投資家になりすました偽の広告はこれまではフェイスブックやインスタグラムなどのSNSで表示されるケースが目立っていました。

ネット広告の問題に詳しい慶応大学メディア・コミュニケーション研究所の水谷瑛嗣郎准教授は、AIを悪用することでなりすまし広告が巧妙化しているとして、プラットフォーム事業者は事前審査や削除の体制をより強化することが必要だと指摘しています。

その上で、水谷准教授は「プラットフォーム事業者にはかなり重い責任があり、より一層対策を強化しないと詐欺の被害を防げない。事業者は国内外の法執行機関と最新情報を共有するなどして連携して対応していく必要がある」と話していました。

また、水谷准教授は「生成AIの普及で多くの人がディープフェイクの手法を使えるようになり、今後は見た目では偽広告を見抜けなくなっていく危険もある。広告に知っているインフルエンサーや著名人が写っていても安易にクリックしない、信じないことも必要になってくると思う」と話していました。

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