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つまらない、三文記事をご丁寧に送ってくれる輩も増えてくる。
曰く、『 東洋の呪縛から抜けられるはずも無い、虚仮脅し 』
曰く、『 奇をてらい続けて、モードの本質が理解されていない 』
などなど、一々気にするつもりもない。


あれも、そんな穴埋めゴシップの一つに過ぎなかった。








いつもより少し蒼い顔の、KAORU。
デスクに、くしゃくしゃの雑誌を放り投げる。
「どうしたの?」
「今日、誰かが、ご丁寧に事務所に届けてくれた。」


悪意が剥き出しの付箋紙がつけてある、ゴシップ欄。
『 Leeは手持ちの愛人をコレクションに使っている 』








「ばっかみたいすぎたから、Leeと笑おうと思ったの。」


こう言いながらKAORUは、口を尖らせて顎を上げる。
感情を筋肉で隠す訓練はまだまだのようね。


「全然ね、ばかみたいだけど。」





広がる摩天楼に向かい、吐き捨てる。
顔を逸らしたまま、デスクに腰をかける。


辺りの雑誌をぱらぱらと捲り、声を上げて笑う顔には笑窪の影すら見えない。
痛いほど感じる胸のうちを押し殺し、あたしは鋏でパフォーマンスをしてみせる。







気取られぬほどに、息を吐いてKAORUが口を開く。



「Leeはこんなの全然平気なのね。」


全然かどうか、そういう神経を持っていてはやっていけない世界。
それをあなたに、求めてなどはいないだけ。
そんなものは、あたしだけで沢山。
どうやって伝えようかと、あたしは思案して重ねた指で尖塔をつくる。


「分かるやつだけ分かれば私は満足なのよ。」
「そうだね。」


声はまだ、憮然としたままよ。
口の端を上げたまま、表情は凍りついて。


安っぽいのはわかっているけれど、つい言葉を続けてしまう。
「KAORUの良さは私が一番解ってるってことよ。」
「・・・うん。」


口唇を噛んで、頷いて。
でもね、瞳は窓を向いたままよ。


「自信がなくなった?」


あえて、問いかける。
負けず嫌いの瞳がやっと、こちらを捉える。


「違う。」
「周りは所詮、周りとしての意見しか言えないものよ。」
「うん、解ってる。」













解ってなどいない事、瞳を見ればすぐ解る。
あなたの奥に密やかに隠されている繊細な感受性は、唯一その瞳だけに現れる。
一見穏やかな優しげな風貌の中で、バランスを損なうほどの混沌。
あたしを惹きつけてやまない、揺らぎの翳。
無くしてしまう方が、楽であろうことは承知の上で。
それを無くすことは、あなたを失ってしまうこと、
だから、あなたは解らなくていいの。
あたしはとても、意地が悪いわ。












「KAORU 、もう帰りましょう。
 会社に泊まるなんてしたくないわ。」


伝えあぐねた末に、あたしは情けない顔で身体を椅子から剥がす。
KAORUの表情は、まだ硬い。


「あの、先帰って。」
「戸締りがあるもの。」

「できるから。」

さっきより尚一層、強張った口唇。
もう一歩踏み込んだなら、きっと崩れてしまいそうな。
そして、あたしはその勇気が持てなかった。




「どうして?」


「 ・・・。 」









放り出したジャケットを引っ掴み、部屋を飛び出していくしなやかな後姿。
あたしは、椅子に又大きく沈み込む。


自分の不甲斐なさに溜息をつきながら、手元の仕事にまた頭を戻すしかない。
やめていた煙草に、手が伸びる。









   






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