なぜ国政選挙前にバラマキ政策が行われるのか、バラマキ政策は得票につながるのか #エキスパートトピ

大濱崎卓真選挙コンサルタント・政治アナリスト
写真:アフロ

政府は、物価高対策として、すべての国民を対象とする給付金の実施を決定しました。1人2万円を給付し、子どもや住民税非課税の低所得者にはさらに2万円を加算する内容です。参議院議員選挙や東京都議会議員選挙を前にしたバラマキ政策として、野党からは反発が聞こえてきますが、選挙前のバラマキ政策は効果的なのか、あるいは得票に繋がるのでしょうか。

ココがポイント

1人2万円の給付をベースとしつつ、お子さんには1人2万円を加算、住民税非課税の低所得世帯には1人2万円を加算
出典:テレ朝news 2025/6/14(土)

選挙を最前線で戦う身にとっては、何か選挙を戦う武器が欲しい
出典:テレ朝news 2025/6/14(土)

首相は現金給付について「決してバラマキではなく、本当に困っている人に重点を置いた給付金だ」と説明した。
出典:読売新聞オンライン 2025/6/13(金)

立憲民主党の重徳政務調査会長は記者会見で「選挙前に1回かぎりの給付の方針を決めたことは明らかにばらまきだ。」
出典:NHK 2025/6/11(水)

エキスパートの補足・見解

選挙前の現金給付やポイント付与といった所謂バラマキ政策は、与党は景気刺激という建前を掲げつつ、実質的には政策ターゲティングを通じて短期的投票行動を最適化しようとしているだけです。今回の場合は、自民党が低所得の無党派層や子育て世代層、あるいは公明党対策として動いている点が注目されます。低投票率を期待するシナリオのなかで、低所得の無党派層や子育て世代層、公明党支持者が(選挙区において)自民党候補者に投票するように促す施策といえます。
低所得者層には現金給付の限界効用が大きい利点があります。結果として、潜在的無党派層や公明党支持層の囲い込みを狙うマイクロターゲティングとして機能し得ます。しかし同時に、現役世代、とりわけ所得税・社会保険料負担層からは「減税のほうが可処分所得を恒常的に押し上げる」という効率性指標が提示され、財政モラルハザード批判や世代間衡平性への懸念が噴出します。これらの層が国民民主を支持しており、支持が二分するリスクもあります。

選挙前にこのような給付がなされてきた過去もあることから、給付規模が粗雑なままでよく検討されたものでなければ、単に選挙前の乱発と映り、供与効果より反発が勝る懸念があります。

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選挙コンサルタント・政治アナリスト

1988年生まれ。青山学院高等部卒業、青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。不偏不党の選挙コンサルタントとして衆参国政選挙や首長・地方議会議員選挙をはじめ、日本全国の選挙に政党党派問わず関わるほか、政治活動を支援するクラウド型名簿地図アプリサービスの提供や、「選挙を科学する」をテーマとした研究・講演・寄稿等を行う。『都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ』で2020年度地理情報システム学会賞(実践部門)受賞。2025年度経営情報学会代議員。日本選挙学会会員。行政書士。

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