TOP   






【 12 】













薄明かり。
もうじき夜が明ける。



海を渡るかもめの声が、細く響く。






意匠を凝らした天蓋の船。
わたしは一夜を、りかさまの傍らで。
穏やかな夕暮れの漣のような愛撫。
嵐に翻弄される小船のように、わたしは揺らぎ波打ち。
そして、凪ぎが訪れる。
瞬く大海原の煌きに包まれるような幸福感の中で、
わたしは眠りの潮に引きずり込まれた。




わたしは、あの方の白い胸に顔を埋めたまま。
昨夜の名残の疼くような痛みに、心地よく身を任す。
触れてくださる唇は、徐々に荒海のような激しさを増した。
きつく絞るように口付けて。
深い真紅の薔薇となり、わたしの身体は染められた。
真珠のような歯が立てられる。
淡い蕾のように、わたしの身体の隅々を侵されて。
薔薇の残骸が埋もれた寝台で、わたしは目を覚ます。

りかさまの深く穏やかな瞳の奥に潜んだ、激しい情熱。
それはときに、花開く。






恐らくは、あの知らせ。
海賊を、この手に。
あの少年を、この手に。
それがこの方をあれほどに昂めたのだ。
わたしは痛いほどの恍惚の中で、
ほんの小さな棘のような嫉妬に身を焦がす。







わたしはあなたさましか見ていない。
わたしはあなたさましか見えない。
だから、りかさま。
わたしを見て。








白い胸に唇を寄せて、恭しくあなたを舌で転がして。
黒い絹のような乱れ髪、長く煙る睫が震える。
薄く目尻に皺が寄り、しなやかな腕をわたしに回してくださるの。
「かおる・・・・早起きなのね。」
「はい。」
そしてまだ、わたしは貪る乳飲み子のようにあなたの胸へと。
全てが光り輝くように美しい、わたしのご主人様。
飾り立てる衣など、なんの足しにもならぬほどに、
美しくて気高くて。
そして今はお側に寄らせていただける。



「ねえ、かおる。」
不意に腕に力が入る。
わたしは両の胸に頬を寄せて、あなたの心臓の音に酔い痴れる。
「総攻撃をかけましょう。」
「ええ・・・ええ・・・
 ・・・・りかさま。」
絹のような滑らかなその感触に、わたしは恍惚となりながら呟くように。
「トルツカ島、あの者たちが根城にしているらしいわ。
 一網打尽にしてしまいましょう。」
あなたさまの瞳に浮かんでいらっしゃるのは、
あの金髪の天使なのでしょう。
でも、それでも、こうしてあなたさまにわたしを埋められる。
細いその首に、滑らかな肩の線に。
深い鎖骨に、しなやかな鳩尾に。
そして柔らかな窪みから、流れる蜜のような流線へと。
誰よりも近しく、血の流れる音を聞く事ができる。
それだけで、わたしは幸せ。





ああ、
わたしがあの天使の首をはねたならば。
あの天使の血に塗れたならば。
あなたはどれほどに、わたしを愛して下さるのだろう。






りかさま、わたしを見て。























 ← Back   Next →










SEO