【 11 】
唇を、花弁で覆われながら、
そっとりか様の舌を感じる。
揺らめくランプの薄明かりよりも、なお一層頼りなげなわたしの身体。
掌に感じるあの方の曲線を、貪るように指を這わせる。
柔らかく、そして固く、あの方の身体はさざめくように語る。
どんな言葉を聞くよりも、わたしの身体を熱くする。
花弁を巻き込むように、わたしたちの舌は絡みあい、
わたしはこの方の膝の上で、切ない吐息を洩らすばかり。
知らず知らず下肢が強張り、膝が寄せられる。
わたしの弁えの無さを畏れるように。
花弁を押し込むような、強引な口付け。
あなたの舌だけで、わたしはもう目が眩んでゆく。
あなたの吐息だけで、わたしはもう潤んでゆく。
「かおる・・・。」
「はい、りか様。」
わたしたちはこれだけで語りあう。
どれほどに昂まっているか、どれほどにあなたを求めているか、
これだけで、りか様はわかってくださるの。
目尻に薄く皺を寄せて、困った子ねとでもいいたげな笑みを、洩らしながら。
わたしは固まった脚をそっと浮かせる。
りか様がドレスを肌蹴けやすいようにと。
優美な手が、ドレスの裾を肌蹴け、
膝から腿に、薄く指が這う。
そのえも言われぬ震えは、背骨を駆け上がり、
わたしの頭は霞みがかかったように。
ぼんやりと映るのは、りか様の底なしの黒曜の瞳。
万華鏡のように色を変え、吸い込むような光を放つ。
わたしの顎は上がり、口元が緩むのを感じる。
この方の指はお構いなしに、いえ、楽しむように、
円を描くように、腿を上がってくる。
ああ、もうすぐ、あなた様をお慕いするあまり、
しどけなく乱れた、わたしへと到達する。
恥じらいながらも、求めるわたし。
あなた様にはあさましく見えているのだろうか。
それでもいいの、すこしでも情けをかけて頂けるならば。
膝が緩む。
わたくしに身体を預けた、かおる。
剥き出しの胸が触れあって、わたくしの指にあわせるように、
鼓動が上下する。
薄い汗をかきながら、肌と肌とが溶け合うように重なりあう。
背中が強張りながらも、緩んだ口元からは喜びの声と、甘い唾液が。
わたくしにならなにもかをも預けようとするあなた、とても可愛いわ。
わたくしは、あなたを探る指を早めて、
あなたの背が弓なりに仰け反るのを楽しむの。
両の膨らみは、固く喜びに打ち震え。
痙攣するように波を打つ身体。
猫脚の椅子が軋むほどに、喜びは絶えなく。
わたくしはあなたにそっと忍び込み。
柔らかく甘い粘りを指の先で楽しむ。
「 かおる?」
「・・・・はい、りか・・・さ・・ま。」
素直な答え、わたしだけしか見えていない。
だから、わたくしはあなたを信じるの。
傍らから、離しはしない。
天蓋のかかるベッドの上。
目くるめくように授けられた、りかさまの名残が静まる頃に、
わたしはようやく目を覚ます。
ベルベットのローブを羽織り、
りかさまは書き物をしていらっしゃる。
「あ・・・りか・・さま。」
わたしは蜜のようにどろりとなった身体を起こし、
その麗しい名を口にする。
「ああ、かおる。」
「すみません、わたしったら。」
「いいのよ、休んでいらっしゃい。
すぐに書き上げて、そちらにゆくわ。」
漆黒の髪をかきあげて、物憂げにこちらに微笑みかけるあなた様。
真紅の唇は、露を含む花弁のように艶やかに。
長い睫が薄く影を落とす。
羽根の筆を置いて、書類に目を通す。
「海賊どもが、図々しくも我がイギリス領にも入ってきているらしいわ。
わたくしたちの威信にかけて、賞金をかけてでも、捕らえなければ。」
海賊。
わたしたちもかつては同じような目で見られていた。
あの貴族が言っていた。
あの金髪の天使が、乗り込んでくるだろうと。
← Back Next →
| SEO |