『 クラップ・ゲイム 6 』
地の底を這う、濁流が渦を巻く。
賽は投げられる。
運命の女神は、しなだれかかる。
俺は、賭けに勝つ。
魂を巻き上げられた奴等が次々地上に逃れていく。
冥府のどん底、逃れられない。
「何しに来た?」
「今夜、街を出る。」
瞳の奥で何かがざわめき、俺は奴に捕らえられる。
「いつ戻る?」
「もう、戻らない。」
「教会で懺悔したら、」
永劫の邪宗の門、偽りの懺悔。
更なる罪を背負いながら。
「払いきれないツケから逃げる。」
闇に歪む声が、虚ろに響く。
剥き出しの残響が、奴の心を抉る。
抉られた瞳は、俺の心を蝕む。
「逃げられないよ。」
あどけない微笑み、笑窪が浮かび上がる。
惹きつけて止まない瞳に、酔わされる。
鏡面に結ぶ虚像のように、俺と奴は向かい合う。
拳が、鳩尾に埋まる。
崩折れる息の下、タイを締め上げられる。
流れる平手の下、苦く血の味が広がる。
跪いて、打擲を俺は受けつづけ。
幾重にも重なる響きは、確実に奴を刻み。
刻まれる奴の慟哭は、奔流のように荒れ狂う。
崩折れ地べたにへばりつく。
縋るように手を伸ばす。
呆けた様に指が頬を滑る。
されるがままに奴の涙が伝う。
「出ろよ。」
黄泉への階段を躓く様に,ゆうひが降りてくる。
カタコンベの墓掘りの様に、逸らす瞳が翳になる。
「行って ・・・・なかったのか?」
「行ける訳、無いよ。」
飽れたように奴が呟く。
俺の瞳を覗き込む。
「俺の事、愛してる?」
頷く俺のタイは捻られ、息が詰まる。
「信じない。」
操るようにゆうひに顎を上げる。
「もう、行っちゃうんだって。」
かけられた呪縛に、彼の目が開かれる。
「惚れてたんだろ。」
引き出される殉教者の陰が、彼の目に宿る。
「やれよ。」
虚ろに彼が俺に触れる。
奴に曝け出したまま、身じろぎも出来ない身体。
操られた手が、服を剥ぐ。
操られた脚が、俺を開き。
操る口は、嘲笑し。
操る瞳は、包み込む。
そして、操る心に血が滲み。
呻きが地を這い、意識が遊離する。
裂かれる痛みが、遠く波を打つ。
床を頬が擦り、重い闇の底埋葬される。
いつか、天国行きの船は遠く。
縋るように、奴は俺を抱き締める。
肉体は瓦解し、魂が晒される。
盲いた俺達は、震える手を絡める。
形而下が剥がれ、初めて世界が見えてくる。
形而上に葬られ、初めて言葉が意味を持つ。
「俺の事、愛してる?」
骸を塞ぐ石が、お前には見えるだろうか。
釘で刻まれたイクティウス。
地中深く葬り去られた、カタコンベ。
永劫の眠りについた者たちだけに、許される。
言葉を持てぬまま、刻まれながら、
俺はかおるを刻み続ける。
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