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なぜGoogleはパスキーをゴリ押しするのか?その仕組みと本当の狙いを深掘りしてみた

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はじめに

最近、Googleがパスキーのゴリ押しに拍車がかかってるなぁって感じの記事を見つけました。
https://forbesjapan.com/articles/detail/79909?utm_source=Twitter_FJ&utm_medium=social&utm_campaign=A_twitter

「なんだかよく分からないけど、とりあえず設定してみた」
「本当に安全なの?逆に危なくない?」
「そもそもパスキーって何?」

この記事では、そんなパスキーの基本的な仕組みから、セキュリティに関する踏み込んだ疑問、そしてGoogleをはじめとする巨大テック企業がなぜこれほどまでにパスキーを推進するのか、その裏側にある戦略的な「狙い」 までを、まとめてます。

パスキーって何? 🤔 パスワードとの根本的な違い

まず、パスキーとは何か。一言で言えば、「パスワードを使わずに、デバイスの生体認証(指紋・顔)やPINを使ってログインする仕組み」 です。

パスワード認証とパスキー認証の根本的な違いは、認証に使う情報にあります。

  • パスワード: 「あなたが知っていること(知識情報)」で認証します。合言葉を知っていれば誰でも入れてしまうため、漏洩や使い回しに弱いという致命的な欠点がありました。
  • パスキー: 「あなたが持っているデバイス(所持情報)」と「あなたの身体的特徴(生体情報)」で認証します。物理的なデバイスとあなた自身が揃わないと認証できないため、原理的にリモートからの不正アクセスに非常に強いのが特徴です。

この仕組みを理解する上で最適なのが、「自分だけの『合鍵(秘密鍵)』と『錠前(公開鍵)』」 という比喩です。このキーワードだけ覚えておいてください。

パスキーの心臓部「公開鍵暗号方式」を図で理解する 🔑

パスキーの安全性は「公開鍵暗号方式」という技術が支えています。言葉だけ聞くと難しそうですが、以下の2ステップに分けると非常にシンプルです。

ステップ1:パスキーの作成(錠前を預ける)

初回登録時に、あなたのデバイス内で「合鍵」と「錠前」のペアが生成されます。

  1. 合鍵(秘密鍵): あなたのデバイス内の絶対に外に出ない安全な場所(セキュアエレメントという金庫)に保管されます。
  2. 錠前(公開鍵): サービス提供者(Googleなど)のサーバーに送られ、あなたのアカウント用の「錠前」として登録されます。

ステップ2:パスキーでのログイン(合鍵でサインする)

ログイン時には、パスワードのように「合言葉」を送りません。「本人であることの証明書」にその都度サインをして送るイメージです。

  1. サービス側から「今回のテスト問題です」というランダムなデータ(チャレンジ)が送られてきます。
  2. あなたはデバイスの生体認証で本人確認をします。
  3. 本人確認が成功すると、デバイスは金庫から合鍵(秘密鍵)を使い、テスト問題に電子署名をします。
  4. サービス側は、預かっていた 錠前(公開鍵) で署名を検証します。錠前がカチッと開けば、本人だと認証されログイン成功です。

最重要ポイントは、この一連の流れの中で『合鍵(秘密鍵)』は一度もデバイスの外に出ていないということです。 これが、パスキーが安全だと言われる根幹の理由です。

鉄壁の守り パスキーのセキュリティに関するQ&A 🛡️

仕組みがわかると、次に出てくるのは「本当にそんなに安全なの?」という疑問です。ここでは、よくある2つの極論的なシナリオについて考えてみましょう。

Q1. デバイスごと盗まれたらどうなるの?

最悪のシナリオですが、パスキーは 「多層防御」 の考え方で設計されています。
多層防御ってなんぞや?の方は以下の記事が参考になるかもしれません。
https://www.quest.co.jp/column/defense-in-depth-zero-trust.html

  1. 【第一の壁】デバイスの画面ロック: 犯人はまずデバイス自体のロックを解除する必要があります。
  2. 【第二の壁】都度の本人認証: 仮に画面ロックを突破されても、パスキーを使うたびに再度、生体認証やPINが求められます。
  3. 【最後の砦】セキュアエレメント: 『合鍵(秘密鍵)』はOSから隔離された専用のセキュリティチップ(鉄壁の金庫)に保管されており、物理的にもソフトウェア的にも抜き出すのはほぼ不可能です。
  4. 最終手段】遠隔ロック・消去: 万が一の場合は、他のデバイスから紛失したデバイスを遠隔でロックしたり、データを消去してパスキーを無効化できます。

つまり、デバイスを盗まれたからといって、即座に全アカウントが乗っ取られるわけではないのです。

Q2. Googleサーバーが攻撃されて「公開鍵」が盗まれたら?

これも面白い視点ですが、結論から言うと全く問題ありません。
というか、そもそもGoogleサーバーを攻撃できるほどの攻撃者ってナニモノ。。

  • 錠前(公開鍵)ではドアは開けられない: 攻撃者が手に入れたのは、あくまで『錠前』です。ドアを開けるには、あなたのデバイスにしかない『合鍵』が必要です。
  • 錠前(公開鍵)から合鍵(秘密鍵)は作れない: 公開鍵暗号方式の数学的な仕組みにより、『錠前』をいくら分析しても、そこから『合鍵』を複製することは天文学的に不可能です。

パスワードの場合、サーバーから暗号化されたパスワードリストが漏れると、時間をかければ解読されるリスクがあります。しかし、パスキーの場合は『公開鍵』が漏れても何もできない。これが、サーバー側の情報漏洩に対する決定的な強みですね。

【本題】なぜGoogleはこれほどパスキーを推すのか?

さて、ここまでの内容で、パスキーがユーザーにとって非常に安全で便利な仕組みであることはお分かりいただけたかと思います。

では、Googleはなぜこれほどまでにパスキーへの移行を推進するのでしょうか? もちろん「ユーザーのため」というのは最大の理由ですが、その裏には巨大テック企業ならではの、したたかで多層的な「狙い」が存在するのかなと思います。ここからはあくまで、個人的な推測です。

狙い1:(大義名分)ユーザーの救済とコスト削減

これは建前であり、同時に本心でもあります。アカウント乗っ取り被害は、ユーザーだけでなくGoogleにとってもブランドイメージの毀損や莫大なサポートコストに繋がる頭痛のタネです。パスキーで安全な世界を実現することは、ユーザーとGoogle双方にとって大きなメリットがあるWin-Winの関係なのです。

狙い2:(戦略的な本音)エコシステムによる強力なロックイン

ここからが本題です。パスキーはあなたのGoogleアカウントに紐づけてクラウドで同期されます。これは、「認証のハブ」としてGoogleアカウントの価値が飛躍的に高まることを意味します。

ユーザーが様々なWebサービス(Amazon, 楽天, etc.)のパスキーをGoogleアカウントで管理し始めると、そこからAppleなどの他のプラットフォームに乗り換えるのは非常に面倒になります。これは、ユーザーを自社の経済圏(エコシステム)に留める**「ロックイン効果」**を強力に生み出します。

これは、多くのサイトが導入している「Googleでログイン」の究極進化形とも言えるでしょう。

狙い3:(未来への布石)次世代インターネットの「認証」を握る

「認証」は、あらゆるデジタル活動の「玄関」です。このインターネットの最も基本的なインフラの標準を自社が主導して普及させることは、テクノロジー業界におけるリーダーシップを確固たるものにします。

今後、Web3やメタバース、IoTなど、あらゆるものがオンラインに繋がる時代が来たとき、その全ての「玄関の鍵」を管理するプラットフォームとしての地位を確立できれば、そのビジネス的優位性は計り知れません。Googleは、その未来を見据えて今から壮大な布石を打っているようにも思えますね。

そういえば、以下の記事も関連性高いかもしれないです。
結構前に見て以来、忘れてましたー。
https://japan.cnet.com/article/35229750/

まとめ

Googleが推進するパスキーへの移行は、単なるセキュリティアップデートではないように思えました。

それは、「ユーザーの利便性と安全性を劇的に向上させる」 という大きなメリットと引き換えに、「自社のエコシステムを強化し、未来のインターネットにおける支配的地位を固める」 という、極めて高度なビジネス戦略が内包された、壮大なパラダイムシフト、とも捉えることができそうです。
今後の動向に注目したいと思います。

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