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何がエロかわからないなら、海外事例でチェック!

大手マンガ企業がエロ広告を自主規制したことが話題の昨今。

私はエロ広告について先日メディアから取材を受けたり、企業の相談にのったりしていますが、広告主としては、何が性的と受け取られるか、判断しにくいと感じることが多いようで、これが自主規制の難しさです。

今回はイギリスで、たった一件の苦情を受けただけにも関わらず、規制となった広告事例を題材に、読者の皆さんがご自身のジェンダー感度をチェックできる記事になっています。

早速規制された広告を見てみましょう!

イギリスで苦情が出た広告

オンラインで掲示されたマッチングアプリの広告。

「成功者の男性が美女とデート。ラグジュアリーな出会いのための最高のサイト。」

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ASAが出した広告のレポートの文章をもとにChatGPTが制作したイラスト

広告には、スーツを着た白髪の男性がビーチに座り、スマホで女性の写真を見つめているシーンで始まる。彼が右の方を見ると、ビキニを着た4人の若い女性が彼に向かってビーチを走ってきた。彼はスマホを空中に投げ上げ、飛び上がりました。女性の1人が通り過ぎる際に彼にウインクしました。彼は女性たちに追いかけられながら、ビーチを走り去った。

広告ではその後、スマホに「BE THE CATCH!(モテ男になれ!)」という文字が映し出され、背景には男性と4人の女性が地面に倒れ込み、クスクス笑う声が聞こえる。スマホの文字には「●●マッチングアプリでデート。無料で登録」と表示され、最後に男性がビーチに座り、画面には「現実世界では女性と男性は4対1」という文字が映し出されていた。

市民からの苦情

この広告に対しての市民からの苦情は、「男女の役割について偏った見方を広めており、嫌な気持ちになる」というもの。広告が有害で不快なのか、イギリス広告審査機関府が審査することにになりました。

この広告は規制されるべきか?

広告主の意図

今回の広告は、「成功者の男性」と「美女」をマッチングするサービス内容を、ユーモアを交えて伝える意図がありました。

広告主は、「この広告は、よくある出会い系サイトの“男性がモテる”イメージを、あえてユーモアたっぷりに描いたもの」としています。

実際、この広告をつくったダイレクターは女性で、「恋愛やデートの好みを“性差別だ”と決めつけたり、その表現を制限したりするのは良くない」と考えていました。女性自身がパートナーを選ぶ自由を持つべきだし、どんな関係を求めるかを伝える広告を規制することは、逆に女性の選択肢を狭めてしまうとも主張しています。

また、広告主自ら「女性や他の人がどんなデートを選ぶかを広告で示すこと自体が、実際に恋愛する人を抑圧するかもしれない」とも認めています。過激と感じる人もいるかもしれませんが、「恋愛の個人の好みが理由で広告が削除されるべきではない」との立場です。

審査機関がNG判定

イギリスの広告のルール(CAPコード)では、「見る人を傷つけたり、強い不快感を与えたりするような性別のステレオタイプ(固定観念)を含めてはいけない」「特定の性別だけが特定の役割を担うような表現は避けるべき」と明記されています

スーツ姿の年配男性と、ビーチで彼を追いかける若い女性たちという構図は、「男性は仕事やお金で価値があり、女性は見た目で価値がある」というジェンダーステレオタイプを強化するような考えを社会に広めてしまう内容と判断されました。

また、「BE THE CATCH!(モテ男になろう!)」というキャッチコピーや、広告内の男女比も、「男性は複数の女性から選ばれる半ば一夫多妻制の原理を思わせること」「若い女性は年上の成功者に惹かれる」という家父長制的な印象を与えていると判断されました。

こうした理由から、「この広告は性差別的で、古いジェンダー観を広めてしまい、見た人に不快感や傷つきを与える可能性が高い」と判断されました。


皆さんは広告主、イギリス審査機関、市民の苦情のどの論点に、賛同しましたか?新しい視点はを見つけられましたか?

もっと難しい事例を見たい方はこちら
https://note.com/advertising/n/n031db10f80b3

審査機関がない日本でリスク管理するには?


炎上する可能性は高いです。ただ、炎上するかどうかは紙一重でしかなく、企業人が考えなければならないのは、その表現や背後にある思想とその影響についてです。

注目したいのは、社会への影響だけなく、消費者の感情も規制の判断基準になっている点です。有効な広告ガイドラインが存在せず、権威主義で赤いきつねの広告などジェンダー炎上した広告に対して『個人の感じ方でしかない』『規制するレベルじゃない』という言論がなされる日本の広告炎上の状況と大きく異なる点です。

また、広告主が「女性の脚本家・監督が担当した」ことを持ち出したのに却下された点にも注目したいです。広告表現の意思決定は、組織の文化が大きく影響するため、制作者の属性が女性だったからと言ってジェンダー炎上のリスクがないというわけではない、ということを、ASAの判断は示しています。この点は、「炎上しない企業情報発信 ジェンダーはビジネスの新教養である」で治部れんげ先生も2018年の時点で指摘しています。

大切なのは、制作過程でどれだけ多角的な視点から検討されたかです。

多角視点で考える

私を含めた発信者、広告を担当する企業人は、広告の善し悪しを決める立場にはありません。決めるのは市民である消費者です。そして、同時に、日本では市民の声を受け止め広告審査する仕組みはまだ十分に整っていません。だからこそ、炎上が起きてから慌てて対応するのではなく、制作段階から多様な視点を取り入れる予防的なアプローチが求められています。

本記事のような過去の炎上事例からの学びを通じて、異なる価値観の存在を認識し、建設的な議論につなげていくしかリスク管理はありえないのです。

広告に携わる皆さんは、「この表現を使用する覚悟と説明責任を持てるか?」という問いかけを社内できるようにすることが、リスク管理に直結するはずです。

私が目指しているのは、炎上を一括りにせず、声の背景にある社会的な課題を可視化し、議論を深めていくことです。 「少数派が騒いでるだけ」と切り捨てたり、「パターン分けして無視していいレベル」と分類したりしても、本質的な学びにはつながりません。権威をもつ立場で炎上の声を抑えることでは、マーケターが願う『炎上をからインサイトを発掘』には繋げられないのです。

海外受賞歴ある代案づくりWS

日本とイギリスの炎上広告を、市民の声を聴いてつくりなおす活動で、イギリスのCampaignが主催する広告界女性賞の激励賞を受賞しました。

炎上広告を題材に、市民との炎上広告の代案づくりワークショップ(参加無料)で、広告主も消費者も納得できる代案を作成します。Peatixをフォローしてお待ちください。炎上した広告への批判ではなく、具体的な代案をつくることで、一緒にやさしい形で、広告業界に市民の声を届けましょう。

今後もこの意義ある活動を続けていくため、皆様のご参加をお待ちしております!

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何がエロかわからないなら、海外事例でチェック!|中村ホールデン梨華@ADLAMP
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