2024年、日本の出生数が68万6061人となり、初めて70万人を割り込んだ。合計特殊出生率は1.15と過去最低を更新。政府の想定より14年も早いペースで、少子化は加速している。
少子化の原因は、非正規雇用や物価高騰による経済的な不安、育児と仕事の両立困難などが挙げられてきた。だが、いま起きているのはもっと日常的で、もっと感情に近い問題かもしれない。

恋人同士の「関係のズレ」が、かつてないほど可視化されているのだ。
今回お話を聞いた男性は、性行為を拒否されたことをきっかけに恋人と別れたと話す。
「付き合っているなら、行為も込みで愛情表現と思っていました。だからこそ毎回求めていたんですけど、そうしたら元カノからタダでできる風俗と変わらないと告げられて。モヤモヤしましたね。デートの日に行為がないなんて付き合ってる意味あります?マジ勘弁…」
こうした「すれ違い」は、昔から存在していたはずだ。ただ、それが“別れ”に直結するほど深刻化しているのは、今の時代特有の背景がある。
スマートフォンが普及し、SNSやマッチングアプリで「他人の恋愛」が可視化された現在。カップルの記念日投稿、日常のラブラブ動画、理想の恋人像を語るコラム。恋愛の“正解”のような情報が、無数に流れてくる。
一昔前までは、多少ズレがあっても「うちも色々あるけど、みんなそんなもんでしょ」と、グレーなまま続いていた関係も多かった。しかし今は、自分たちの関係を否応なく、相対化させられる時代なのだ。
「友達の彼氏は〇〇してくれた」
「ネットでは“それは大事にされてない証拠”って書いてある」
そんなふうに、他人の関係やネットの声と比べることで、自分が抱えていたモヤモヤに名前がつく。違和感が正当化され、気のせいでは済まなくなるのだ。
婚活カウンセラーの富永れん氏はこう指摘する。
「性的な価値観や日常の向き合い方がズレているカップルは以前から存在していました。ただ、今はそのズレがすぐに別れるべきサインとして消費されてしまう。たとえどちらも悪気がなかったとしても、歩み寄る前に関係が終わってしまうケースが多いのです」
今の若い世代にとって、結婚や出産は必須事項ではない。
「だからこそ心地よさが前提としてないと選ばれにくい。にもかかわらず、愛情や性、日常のすり合わせをどうすればいいかは誰も教えてくれない。その上、正解っぽい情報だけが拡散されてしまう。成熟しない大人が増えていることこそ、少子化の本質的な問題なのかもしれません」
男性が元カノと別れた顛末は【関連記事「こんなの無料風俗じゃん」男性が求めた行為の全容!これを「愛」と呼ぶのか大問題】でもお読みいただける。
【取材協力】婚活カウンセラー|富永れん氏
【聞き手・文・編集】常田真悠 PHOTO:Getty Images 【出典】厚生労働省|人口動態統計(速報)