静岡県職員採用が危機、行政職も 最終倍率初の2倍割れ「質が保てない」 給与増の民間と「競争」激化
配信
静岡県の職員採用が危機に直面している。2024年度の採用試験で、募集した29職種のうち、採用数が最も多い「行政Ⅰ」の1次試験受験者数に占める最終合格者数を示す最終倍率は1・9倍と初めて2倍を割り込み、庁内に衝撃が広がった。給与増が進む民間との人材獲得競争が激化し、人手不足が叫ばれる技術系職種だけでなく行政職でも深刻化している。県幹部の1人は「この状態が続けば、職員の質が保てず、公を維持できない」と危機感を訴える。県は本年度、秋採用に乗り出すなどして受験者確保を急ぐ。各部局も人材確保に取り組む。 県人事委員会事務局によると、県職員採用試験の倍率は民間の採用控えが広がったリーマン・ショック以降、減少傾向が続いている。行政職が2区分となった15年度以降では、従来の専門試験を行う「行政Ⅰ」の最終倍率が15年度4・3倍から24年度1・9倍に、総合能力試験を行う「行政Ⅱ」は15年度11・5倍から24年度3・5倍と、いずれも過去最低を更新した。 同事務局は、24年度の行政Ⅰの倍率低下は、退職者の補完のために採用予定数を倍増したことを主な要因に挙げる。ただ、技術系も事務系も受験申込者数の減少は深刻だ。24年度の全職種の申込者数は900人で、リーマン・ショック時の10年度の1834人から半減した。行政Ⅰに限ると、申込者数、1次試験受験者数ともに15年度からのわずか10年で半減している。 県は本年度から、行政Ⅱと土木の2職種で秋採用を導入する。新卒だけでなく、第二新卒などの社会人経験者らが受験できる機会を増やす狙いがある。平形裕子職員課長は「将来の県を担う人材確保に向け、受験者の利便性に即した試験内容の見直しや制度の改善を進めたい」と話す。 ■大学への説明会や職場見学会…保健師は申込者増 県職員採用試験の申込者数が減少する中、県の各部局も人材獲得に向けた取り組みを始めている。健康福祉部は部長代理をリーダーとするプロジェクトチーム(PT)を2024年度に本格的に始動させ、成果が表れつつある。 24年度に、大学の講義や説明会に参加したのは前年度の倍近い56校。会場に管理職だけでなく、学生に近い若手職員が同行する工夫もした。看護系の学生が使用する大手就活サイトにも登録し、職種個別の職場見学会も好評を得た。 その結果、25年度採用では保健師(採用予定数6人)の申込者数は26人、心理(4人)は23人、児童福祉(同)は26人で、いずれも前年度より10人増加した。 並行して、若手職員の離職回避の取り組みも進める。入庁6年以内の職員にアンケートを実施し、入庁後の不安や不満に寄り添うケアを強化する。同部の辰巳信明総務課長は「地域全体の医療政策に携わる県職員の魅力を伝え、公を担う使命感のある人材を獲得したい」と話す。
静岡新聞社
- 5
- 10
- 10