埼玉大学で「100円朝食」 企業が協賛金 そのねらいは
物価高が続くなか、さいたま市にある埼玉大学では、企業からの協賛金をもとに100円で朝食を提供するユニークな取り組みが行われています。
さいたま市桜区にある埼玉大学では、学生たちを支援しようと去年から100円で朝食を提供する取り組みを始めました。
ボリュームがあり栄養バランスがとれた朝食は学生たちに人気で、食堂には午前7時半ごろから行列ができオープンしてすぐに限定100食ほどが売り切れるほどでした。
大学によりますと、安く食事を提供するこの取り組みは企業からの運営費で賄っているのが特徴で、食堂のモニターに企業を紹介する動画を流したり朝食の時間帯に食堂で学生向けに企業PRを行ったりできるということです。
「100円朝食」は企業にとってもメリットがあり、「売り手市場」が続く大学生の就職事情を背景に学生と接点を持つ貴重な機会となっているということです。
企業が初めて協賛した場合は1口15万円で、現在13社が協賛しています。
今月10日、食堂で企業PRを行ったのは名古屋市に本社がある自動車開発に特化したエンジニアリング会社で、採用担当者は「北関東の採用を強化したいという思いで協賛しました。1口15万円で多くの学生にアプローチでき有益だと感じている」と話していました。
「100円朝食」を利用した理工学研究科の1年生の男子学生は「朝食も食べられて、自分の知らない企業の知識を得られてとてもいい機会だった」と話していました。
埼玉大学の石阪督規キャリアセンター長は「企業の協賛金で100円朝食を行う取り組みは珍しいのではないかと思う。今後も学生にとっても企業にとってもメリットがある取り組みにしていきたい」と話していました。
【去年から協賛するさいたま市に本社がある企業 “地元・埼玉の学生に直接アプローチできることが魅力”】
さいたま市浦和区に本社がある自動車やカメラの部品に使われる潤滑剤などを製造する企業は、埼玉大学の「100円朝食」の取り組みに昨年度から協賛しています。
この企業では転勤がなく働き続けられることが強みだと考えていますが、内定を辞退する学生もいて人材確保に課題を感じていました。
オンラインでの企業説明会が主流となる中、地元・埼玉の学生に直接アプローチできることが魅力だと感じています。
採用を担当する関香菜子さんは「埼玉で働きたいという学生に出会えることを期待しています。対面で100人を超える学生にアプローチできるのはとても貴重です。まずは社名を知ってもらって、就活の時に思い出してほしいと思います。そうすればエントリーしようかというアクションを起こす学生も増えるのではないかと考えています」と話していました。
【各地で広がる「100円朝食」】
大学の食堂で格安で朝食を提供する「100円朝食」の取り組みは各地で広がっています。
このうち、東京・世田谷区にある駒澤大学では、授業がある平日に400食限定で提供しているほか、東京・新宿区にある早稲田大学では、期間を限定して、カレーライスセットなどを1日350食提供しています。
また、横浜市にある神奈川大学では今年度は運営費を負担する後援会が支援して、50円で朝食が提供されています。
こうした大学では、運営費を後援会や父母会などから資金を集めて実施していますが、その確保が難しい大学もありどのように継続的して学生を支援できるかが課題となっています。