イスラエル、イランの国営放送を攻撃 生放送中断、スタジオに轟音
イスラエル軍は16日、イランの首都テヘランにある国営放送局を攻撃した。一方、イランメディアによると同国は同日夜、イスラエルに向けてミサイルとドローン(無人機)を発射した。両国による激しい攻撃の応酬が続いている。
午後6時半ごろ、国営放送のテレビ番組では、アナウンサーが周囲の爆発音について「侵略者による私たちの母国への音です」と叫ぶように繰り返した。その直後、攻撃の音とみられる轟音(ごうおん)が「ドカーン」とスタジオ内に響き、画面が灰色の煙で覆われた。建物内部で火災が発生し、黒煙があがる様子も報じられた。AP通信はイランメディアの報道をもとに、国営放送の生放送が一時中断したと報じた。
イラン外務省のバガイ報道官はX(旧ツイッター)で、「生放送中の放送局の攻撃は悪質な戦争犯罪だ」と反発。国連安全保障理事会に対応を求めた。国際NPO「ジャーナリスト保護委員会」(CPJ)も「イスラエルが生放送中に攻撃したことにがくぜんとしている」と非難する声明を発表した。
一方イスラエル軍は、国営放送局が「軍事利用されていた」と主張。周辺住民への避難を促した上で攻撃したとした。同国のネタニヤフ首相は16日の記者会見で、イランの国営放送局について「国民から現実を隠蔽(いんぺい)する全体主義政権の道具だ」と述べ、攻撃はイランの「プロパガンダ」を妨害するためだったと主張した。
また、ネタニヤフ氏は会見でイランの最高指導者ハメネイ師を殺害する可能性があるか問われ、「戦争計画の詳細を語るつもりはない。必要なことは何でも行う」と述べ、可能性を排除しなかった。
イスラエルはイランの「核開発計画の阻止」を軍事作戦の目標に掲げている。国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は16日、英BBCに、イスラエルの攻撃を受けたイラン中部ナタンズの核関連施設にある遠心分離機が「深刻な被害を受けた可能性が高い」と明らかにした。
遠心分離機は核兵器の原料となる高濃縮ウランの製造のために必要な装置。施設の地下に設置されていたが、攻撃で停電が発生したことを受け、装置の損傷が生じたとみられるという。
イスラエル・イラン交戦
イスラエル軍が6月13日、イランを攻撃しました。中東の2大軍事大国の対立の先鋭化は避けられず、地域全体を巻き込んで緊張が高まる可能性があります。[もっと見る]