生成AIの無断学習、「コンテンツ保護の制度整備を」 新聞協会
日本新聞協会は4日、生成AI(人工知能)による無断学習・利用から報道コンテンツを保護するための制度整備を求める声明を発表した。報道機関がコンテンツ保護の技術的な措置をとっているにもかかわらず、それを回避してデータ学習や回答文の生成に利用している例があると指摘。政府や国会に法改正も含めたルールづくりを急ぐように要望した。
AI事業者は自動プログラムを使って報道機関の配信記事を大量に収集し、記事内容をもとに自社サービスを提供している。これに対して多くの報道機関はデータ収集を拒否する技術的な仕組みを導入している。
声明では、こうした仕組みを無視した一部AI事業者によるコンテンツデータの無断学習・利用を指摘した。報道機関側の措置を回避してAI事業者がサービス展開する場合は「著作権侵害に当たる可能性が高い」と強調する。AI事業者がデータを収集する際には利用プログラムの公表を義務付け、コンテンツ権利者側が収集を拒否できるルールづくりを求めた。
近年では、検索と生成AIを組みあわせて記事内容を自動的に要約する「検索拡張生成(RAG)」サービスが急速に広まっている。AIサービスの利用者はニュースサイトを閲覧せずに情報収集する形となり、報道機関にとっては購読者や広告収入の減少につながる。
新聞協会は2024年7月にも著作権法改正を含めた新たな法整備を求めた。今回の声明でも「報道機関の機能が低下すれば国民の知る権利を阻害しかねない」とし、政府に対して既存の枠組みにとどまらない総合的な対応を要求した。
海外でも報道機関とAI事業者がデータ学習を巡って対立する。米紙ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストが加盟する業界団体デジタル・コンテンツ・ネクスト(DCN)が24年10月にデータ収集のルールづくりを求める声明文を発表した。
AIと知的財産権の問題に詳しい福井健策弁護士は「AI検索は巨大テックによる情報元の努力へのフリーライドとの批判は世界的にある。コンテンツ保護には最新技術を踏まえた法的な整理に加え、報道機関とAI事業者がAI時代の新たな事業モデルを模索すべきだ」と話している。
(https://www.pressnet.or.jp/statement/broadcasting/250604_15900.html)