日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(31) 5章 絶対にあきらめない精神 4
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さらに捏造疑惑に関する調査報告書の記載にもあきれた。
「告発者、被告発者が取り上げた事例はともに繰り上げ一括請求に関する事例であったものの、調査対象は別の人物であり、それゆえ前提条件も異なることから、捏造・改ざんと判断するのは難しいと判断し、不正行為にはあたらないとみなした」
じっさいにインタビュー取材の類が行われたのか、記述にみられる矛盾がなぜ生じたのか、肝心な点に言及していない。しかも、私の記述内容を「繰り上げ一括請求に関する事例」と決めつけている。間違いだ。基本的な読解力を欠いている。「一括請求」の事案などではない。だいたい「一括請求に関する事例」という記述の内容と、O教授がじっさいに聞き取りなどの調査をしたのか否かというのは次元が異なる問題だ。
大学の公表文には「故意によらない誤り」があったとある。その意味をはかりかねていたが、報告書の最後のあたりを読んでわかった。日本学生支援機構の図表を引用表示なく流用している点を問題視し、指摘している。図表のことなど私は告発した覚えはないから調査委が独自にみつけたのだろう。いかにもとってつけたような指摘だ。さすがに完全にシロとはしにくいので、軽微な不備を指摘して調査委の面子を保とうとしたのだろうか。私はそんな推測をした。
武蔵大の報告書を読み終え、思わずため息が出た。なるほど、報告書の開示を拒み、こんごは電話をかけないでほしいといった非友好的な態度をとったのが理解できた。不正を隠蔽したうしろめたさがあったにちがいない。
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