「いらっしゃ......」 ガーッ と開いたコンビニのドア。 入ってきた男の手には山盛りの赤く染まったティシュ。 ( なに、血?) 店員の私は見とがめる。 スタスタと無言で入ってきて 店内ゴミ箱へ入れて行く男。 そしてそのまま スーッ と知らん顔で店の外へ 出て行こうとした。 ( ええ?捨てるだけ?) 「お客さん! ちょっと、すみません」 私はあわてて呼び止める。 「あの。それ 今捨てたものですが、 血が着いてましたよね? そういうものを

Jun 15, 2025 · 11:21 PM UTC

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捨てて行く場所じゃ ないんですが。 せめて、 お声がけをお願いします。 こちらから ビニールをお渡しします。 一般のお客さんも 利用するんです。 衛生的にも困るので どうかご理解ください」 すると 呼び止められた男は みるみる真っ赤な顔になり 「なんだと!この店員ふぜいが!文句あるってのかー! おい、責任者を出せよ!」 カウンターに来て 大きな声を出した。 大声に手がふるえたけど 脅されて負けるのは 嫌だったので 私は、アゴを引いたまま 「困るから困ると言いました」 と、足をふんばった。 相手から目をそらさず ずっと見つめていると
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男はにらみ返してきて 「こっちは子供が鼻血出したんだよ!わかんないのか、 この人でなしめっ!」 さらに大声を出してエキサイト ( 人でなしでも、 テレパスでもねーし ) 私は冷めた気持ちで そこに立っていた。 その時 再び店のドアが ガーッと開いて 「パパ!?何してるの?」と 女の人と少年が入ってきた。 男はホッとしたような顔で 「ママ、聞いてくれよ! この店員がゴミを捨てるなって 偉そうに注意するんだよ。 俺はアタマに来ちゃって。 ひどくないか?」 女の人は目を丸くして 「いやだパパったら、 怒ってるのぉ?」 そういうと 女の人は私の方を向いて 「すみません、ご迷惑を おかけしました」 と頭を下げた。 「謝ることないぞママ。 この店員、 なんか買えって感じに 言うんだ。迷惑だとか言って。 こっちは困ってたんだ。 子供の鼻血だよ。 可哀想だろうが! こいつ分からないのかなあ!」 まだ興奮したように 男が言うと 少年が 「もう鼻血止まったし。 パパ、お店に迷惑だよ」 私の顔をチラッと見ながら 男の袖を引っ張った。 私は3人に向かって
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「血液の着いたものは、 そのまま捨てられると 不衛生ですし。 感染症防止の点からも 気をつけたいですよね。 コンビニのゴミ箱は 外からのゴミを入れるところでは無いものですから。 お困りでしたら、お声がけ くださいと申し上げました。 せめて何か袋に入れて 捨てるなりできたと思います」 「本当にすみません。 あの、私...... お買い物していきますね」 女の人は、ササッとカゴに 飲み物やグミなどを入れると レジに持ってきた。 「おい、買うことないよ」 男がまだゴネると 女の人は無視して 「いいから。パパはもう 外に行ってて!」 「パパー。行こう」 少年も男の手を引っ張って 外へと連れて行った。 店の外では おじいちゃん、おばあちゃん まで待っているようだった。 女の人は会計しながら 「すみません。男の人って 子供が血を出すとあわててしまって、なんか自分の頭に 血が昇っちゃったみたいで、 ご迷惑をおかけしました」 「いいえ。お子さんの鼻血が 止まって良かったですね」 「あ、はい」 「ありがとうございました」 私が頭を下げると 何回目かの「すみません」を 言って、 女の人は店を出ていった。 その時になって、 「まいさん。もっとすぐに
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あの男の人には 『次は気をつけて』だけにして 『私が言いすぎました』って 謝れば良かったのに。 意地を張るから 長引いたでしょ?」 ものがわかったようなセリフを言うけど、 誰もいなくなってから 店長がレジに来た。 「店長ぉ~~~! さっさと出てきて 代わりに収めてくれたって バチは当たりませんよっっ!」 私がふくれっ面で言うと 「オレ、モメ事は苦手だし」 「店長は、なんでも ハイハイとすぐに謝るから あの店、言えばなんとかなるって思われてますよ!」 「うは、はいはい。 気をつけます。ヤブヘビ ダ!」 「ウフフ」 でも店長と話していたら 緊張が解けてホッとしてきた。 私も、奥に店長がいると 思うから足がふんばれた。 けっこう、ひざは ガクガク と ふるえてたのよ。 ┄┄┄┄┄ コンビニのゴミ箱は 本来、外からのゴミを 捨てる場所じゃないの。 買い食いのゴミどころか いつの間にか、家庭ゴミや 他のところのゴミが 持ち込んで捨てられるので 困ってます。 こんなコンビニの現実も 書いてます。 @maimai0049
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お陰様で投稿が100万回以上の 表示になり、1万以上の “いいね”が集まりました。 みなさん、 いつもありがとうございます。 主にコンビニで起きた出来事や たまに家族の思い出なんかを 書いてます。 また、楽しみにしてください。
コトン、「お願いします」 コンビニのレジに来た少年が 缶ビールを2本置いて 「これと、 アイコスのメンソールも 2 個ください」 ( ややや? ) その顔はどう見ても 高校生くらいに見えた。 「だけど、君は 未成年でしょ?」 私は店員として 売らずに声をかける。 未成年に売ったら 店側の責任問題となって 営業できなくなるから。 その子はバツが悪そうに うつむくと、小さな声で
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先日の父の日には、懐かしい 昭和の思い出を書きました。
「まい、ドライブ行くか」 小学校から帰ると 作業着の父が家にいた。 トラックドライバーの父。 今日は1人なので、私に話し相手をして欲しかったらしい。 「うん、行く!」 ランドセルを置くと 私は父と、近くに停めた 大型トラックへ乗り込む。 東京の外れから群馬への 短い旅が始まった。。 普段は3人兄弟の長女なので なかなか甘えられない。 こうやって 父を独り占めできるのは いい気分だった。 トラックの助手席は とても高い所にある。 よじ登って座ると 2階から眺める景色になり、 まるで偉くなった気までする。 カチッ、と父がスイッチ入れると カーラジオからは、ジョン・レノンの
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こちらは怖い創作ストーリーです。長いけどドキドキしてください。
「こんにちは、このケーキ 美味しそうですね」 ケーキとカフェの店。 若い女性がキラキラした笑顔で ケーキのケース越しに 店員に話しかけてきた。 店員のヒロシは嬉しそうに 「あ!これ人気商品なんですよ。美味しくておすすめです」 「へぇ、コレ 私におすすめですか?」 女性はジッと ヒロシの顔を見た。 「ええ、お客様に 食べて欲しいですね( ニコッ」 「うふ、じゃあ、仕方ないわ。 これをください」 「ありがとうございます」 赤いエプロンをつけたヒロシは 女性を見送り 「また、お越しください」と 頭を下げた。 ┄┄┄┄┄┄ 翌日になると また女性は来店してきて 「今日は店内で食べたいの」 と、またヒロシに 「私におすすめのケーキを お願いします」と頼んで来た。 ヒロシは考えて 女性のテーブルに 季節のフルーツタルトと 香りのいいダージリンティーを 運んだ。 「わぁ、私のためにありがとう」 女性は頬を赤くして ヒロシに礼を言った。 「いいえ、ごゆっくりどうぞ」 「ええ、そうします」 女性はテーブルからゆっくりと 赤いエプロン姿で忙しく働く ヒロシを見つめていた。 ┄┄┄┄ その翌日も、女性は来店し ヒロシにケーキを頼むと 同じ席に座り、今度は ヒロシに話しかけてきた。 「ヒロシさんて言うの? 学生さん?この近くの大学ですか?ケーキ好きなの?」 ヒロシはびっくりして、 つられて答えていた。 「ええ、この隣駅の大学です。 ケーキは好きですよ」 「そう、バイト頑張ってるのね」 カウンターに戻ったヒロシに バイト仲間のユージが 「あの人、お前のこと気に入ってるね」と冷やかした。 「よせよ」ヒロシは赤くなり 困ったような顔になった。 「オレ、ちゃんと彼女いるから」 (バイトだって、彼女の誕プレのためだし... ) ┄┄┄┄┄ 「ヒロシくん、今日は 疲れてるみたい。大丈夫?」 翌日には、女性はヒロシの名前を呼んでまるで恋人のように 話しかけてきた。 「え...? あ、ご心配なく。 試験で徹夜したんですよ」 ヒロシはクマができた顔で 女性をあしらった。 「そう?元気の出るもの 贈りましょうか?」 「いいえ、とんでもない!」 「そんな、恥ずかしがらないで 私の気持ちだから、ね」 「本当に、けっこうです」 ヒロシはあわててカウンターに 戻った。ユージが 笑っていた。 「なんか言われてたな」 「うん、ちょっと困っちゃうな」 ヒロシは少し 気まずい思いだった。 ┄┄┄┄ 物陰から飛び出した黒い影だと思った。 「うわわっ!」 ヒロシは後ずさりした。 それは、大学からの帰り道だった。あの女性が電信柱の陰から ヒョイ!とヒロシの前に現れた。 「こんにちは!ヒロシくんの 好きなバンドのライブよ。 チケットをとったわ。 これを渡しにきたのよ」 「ええっ?まさか」 「ヤダ、照れないで。 これが元気出ると思って。 私からの気持ちって、 言ったでしょ?」 女性は自信に満ちた顔で ヒロシにチケットを 渡してくる。 「あ、あの...でも」 ヒロシが モジモジしていると ┄┄┄┄┄┄┄ 「ヒロシったら、何してるの?」 後ろから声をかけられた。 「ああ、メイコ。 なんでもないよ。お店の 常連さんに会ったから 挨拶してたんだよ」 ヒロシは、自分の彼女の メイコに サッといい訳をした。 「それじゃ、先を急ぎますんで」 女性にそれだけ言うと ヒロシとメイコはさっさと 駅への道を急いだ。 「ちょっとヒロシ! あの人本当にお店の常連? あの目を見た?ものすごく怖い目でこっちを見てたわよ!」 メイコは怯えたように ヒロシに言った。 「いや、そうだった?」 ヒロシはメイコの手前、彼女の 顔のことは見ていなかった。 そして そこから、始まった。 ┄┄┄┄┄┄ 試験が明けてバイトに戻ると 再び女性は店に来ていた。 ヒロシがテーブルに、 紅茶のシフォンケーキと アップルティーを持っていくと女性は読んでいた本で 口元を隠したままギロッと ヒロシを見て、 「ヒロシくん、この間の彼女は誰なの?あんな子、ヒロシくんにふさわしくないから。 あんまり一緒にいない方がいいと思うわ」 本を持つ手を震わせながら そう言った。 (え ?オレ怒られてる の?) ヒロシにはわけが分からない。 女性は続けた。 「私とライブに行くんでしょ? あんな子と付き合っちゃダメよ、ね?」 「はあ?」 さすがにヒロシも イラッとしてきた。 「お言葉を返すようですが ┄┄┄┄┄ 僕はあなたと約束した覚えがないですから。失礼します」 ヒロシがテーブルから離れようとした時、女性は 手で顔をおおって 「ひどい。ひどいわ。ヒロシくんは私を裏切るのね。 これもみんな、 あの女のせいなのね。 ヒロシくんは あの女に騙されてるのね」 そう口走っていた。 「え、ちょっと、 何言ってるんですか?」 ヒロシが聞き捨てならないと 近寄ると 「私たちの間には、もっと深い絆があったはずなのに
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店の新人外国人のアラジンくんが、新しいことを覚えていく話です。
「まいさァん!機械が言うことをききません!タスケテ」 コンビニの新人バイトのアラジンくんが発券機のところで 悲鳴をあげていた。 「なぁに?何をやらかしたの?」 パートリーダーの私が 機械をのぞき込むと 「店員を呼んでください」と 画面に書いてある。 「故障?」「違ィマス。ワタシが レシートを交換シマシタ」 アラジンくんは なんかウヤウヤしく 胸に手を当てて自己主張。 「あらま、王女に仕える騎士みたいよ」 私は軽口をたたきながら 機械の画面にタッチする。 「交換のやり方が、何か 間違ってるってことね。これも機械だから、少し何かを抜かすとダメなんだと思うわ」 アラジンくんは 「ワタシは ちゃんとやりました!」と 眉を寄せて不満そうな顔。 「じゃあさ。確かめよ! もう1回、最初からやって
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こちらも、コンビニで カップルのお金の払い方が 気になったお話し。
断言します。 結婚を決めるその前に。 あなたのお相手の コンビニのレジでの態度を 見ておくといい。 コンビニに 料金の支払いに来た 若いカップル。 レジに来た彼女が ポイッと、お金を投げて 渡してきたので (え?)と思い ハッとした。 こういうとき、こっちの方が 見てはならないものを 見た気分になる。 でもすぐに 「ちょっと?おま、 何やってんだよ」 彼氏が怒った声を出し、 そして彼女の代わりに 「すみません」と 店員の私に謝ってきた。 彼女は真っ赤になって
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今からの季節。 夜のコンビニに1人でアイスを 1個だけ買うのが危ない、ということを伝えました。
( あの子、アイス買ってるな 。 家が近いのかな? ) コンビニで。 何か商品を探すふりをして アイスケースのあたりを見ている黒っぽい男がいた。 20歳くらいの赤いパーカーを はおった女の子が ハーゲンダッツアイスを 1個とり出して レジへ向かっていった。 女の子が店を出ると、 売り場にいた黒い服の男も スッと そのあとを追うように 外へと出ていった。 ( アイス1個だけ。 きっと1人暮らしかな? ) 男は少し離れたところから 女の子のあとをつけていく。 ほどなくして、 赤い服が近くの低層マンションに入っていくのが見えた。 ( あのマンションか… ) 男もすかさずそのあとについて入口ドアが閉まる直前に 滑りこむ。 ┄┄┄ 「 え?」 後ろの方で 見知らぬ男がマンションに 入ってきて、女の子はゾクッとした。急いでエレベーターに乗ろうとすると、その男もついて来る。 ( なんか……イヤだな ) 小走りに駆け込んで振り返ると ドアの近くまで男が来ていた。 「や、ヤダ
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風変わりな常連さんのお1人。 ミス・パジャマのお話です。
「これに お湯を入れてくださる?」 深夜のコンビニに パジャマ姿でやってきた美女。 手にもった紙袋から カップ麺を取り出して 店員の私に お湯を入れて、という。 「お湯なら ポットに入ってますが……? アノ、 そのカップ麺は 当店で買ったものじゃ ないですよね?」 私がカップ麺を指さすと 美女は ウフ!と笑って 「あらァ、昨日 ここで買ったんです」 とうそぶいた。 確かにその商品。 店で取り扱ってはいるけれど 普通、お湯入れのサービスは 買った直後に利用するもの。 「前日買ったから」と言う 持ち込みを認めていたら キリがない。 「……今回限りにお願いします。 みんながそれをしたら 混乱しちゃうから困ります。 それに ポットはそちらですよ」 私がポットを指さすと 「あ、いいえ。ウフ! 私はいつも コーヒーマシンのお湯で 入れてもらってるの」 とさらに笑う。 反対に 私の声はマジで裏返って 「はぁ?いつもォ? ちょっと……それは、 お受けできないですけど」 頭の中には (( ゴメン チョット ナニイッテルカ ワカンナイ )) ( ポットのお湯が切れてるなら ともかく、ご指定なんて はなっからそれを要求されて 聞くなんて、誰だ?! ) おそらく夜勤の外国人バイトを 言いくるめて、この美女が やらせたのだろうと 思った。 美女はさらに 「私、ポットのお湯じゃ イヤなの、ウフ」 ( 知らんがな ) もう私はシラケて ドクターXならぬ コンビニX。 「それは いたしません」 すると美女のミス・パジャマは不満そうに 口をへの字にして 「だって、いつもの
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