世界自然保護基金(WWF)ジャパンは、2025年大阪・関西万博の会場工事で野鳥の生態系に影響が出たとして、大阪府と市に対応を求める書簡を発表した。書簡は9日付で、英国最大の自然保護団体である英国王立鳥類保護協会(RSPB)や日本野鳥の会をはじめ、国内外の主要な自然保護団体などと共同で提出。会場となっている人工島・夢洲(大阪市此花区)の湿地が失われ、絶滅危惧種のヘラシギが飛来しなくなったと指摘している。
ヘラシギはロシア北東部で繁殖し、東アジアなどで越冬する。日本には渡りの途中で飛来するが、ルート沿いの沿岸湿地が失われたことが原因で絶滅の危機に瀕している。生息数はわずか800羽以下で、同様のルートで渡りをする数百万羽の水鳥の象徴的な種として保護活動が行われている。
大阪湾は、渡りの際に立ち寄る場所となっており、夢洲は日本屈指の観測地点として知られている。WWFは万博の会場開発で沿岸湿地の大部分が失われて以降は、ヘラシギの飛来が確認されなくなったと指摘している。
WWFなどは万博が目標として「持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献する」と掲げていることを挙げ、「(環境を破壊する)ネイチャーネガティブである万博開発を、(環境保護につながる)ネイチャーポジティブな取り組みへと転換する機会となり得る」と主張。過去数十年間にわたる大阪湾の開発で沿岸湿地が甚大に失われてきたことに対し、夢洲に残された水辺の管理や大阪湾全体での湿地の保護、再生を求めた。
WWFは23年6月にも大阪湾に残された湿地環境の保全と回復を求める書簡を日本国際博覧会協会や市、環境省に提出している。