市販薬と似た「OTC類似薬」が保険適用外に? 患者の間で不安の声

富永鈴香 奈良美里

 普段使っている薬が高くなるかもしれない――。13日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)に盛り込まれたある方針を巡り、日常的に必要な薬が保険適用外になるのではないかと患者の間で懸念の声が広がっている。

 懸念が集まっているのは、「OTC類似薬」の扱いだ。

 厚生労働省によると、OTC類似薬とは、市販薬と似ていながら、購入時には医師の処方箋(せん)が必要となる薬のこと。

 保険が適用され、購入時の自己負担は薬価の1~3割に抑えられるため、市販薬よりも安く手に入る。

「OTC類似薬」、普段の薬は?

 13日に決定された骨太の方針では「OTC類似薬の保険給付のあり方の見直しについて十分な検討を行う」などと盛り込まれた。現役世代の社会保険料の負担軽減をはかるためなどとして、日本維新の会が公的医療保険の対象外とするよう求めてきた。

 厚労省によると、現時点ではOTC類似薬の厳密な定義は決まっていないという。見直しの具体的な内容については年内の予算編成までに検討するという。

 しかし、維新が自民党・公明党との協議で示したとされる資料の中には、市販薬と成分や一日最大服用量が同じOTC類似薬が具体的にリストアップされ、原則保険適用外にすることが提案されていた。中にはアレルギー性鼻炎や皮膚炎、花粉症、ぜんそくの患者に処方されるものもあった。

 これを見た患者やその家族から、普段服用している薬が「保険外し」の対象になるのではと心配する声が上がっている。オンライン署名サイトでは、保険適用除外に反対する署名が、今年3月から6月13日までに8万筆以上集まった。

肌かきむしった、わが子は

 福岡県に住む50代女性は、信じられない思いで今回の件を聞いた。

 自身の子どもが小さい頃、10年以上アトピーに苦しんだ。生まれてすぐに発症し、おでこやほっぺた、首や腕などにひどい炎症が起こった。

 治りかけるとかゆがり、かきむしっては傷になってしまう。常に体液が皮膚から染み出ている状態だった。1日に3回の塗り薬は欠かせなかった。

 薬のおかげで症状は徐々によくなっていった。処方されていたのは、保険適用から外されるのではないかと懸念される塗り薬などだ。処方は少量ずつで、症状がひどい時は週に3回ほど通院した。ただ、保険適用に加え、自治体の乳幼児医療費助成制度があり、自己負担はなかったという。

 もし薬が保険適用から外されたら――。当時の子どものつらそうな姿を思い返す。「無駄な医療費を減らす努力は必要。でも、子どもにそれを強いることにならない政策が求められるのではないでしょうか」

 日本医師会は、2月の記者会見で、社会保険料の削減を目的にOTC類似薬の保険適用除外を進めることに対し「重大な危険性が伴う」との見解を述べていた。

子どもや慢性疾患、低所得の患者に配慮

 具体的な懸念点としては、①医療機関の受診控えによる健康被害②患者の経済的負担の増加③薬の適正使用が難しくなることを挙げた。患者が自己判断で市販薬を使用し、適切な治療を受けられずに重篤化する可能性が高まるなどのリスクがあるとも説明した。

 今回の骨太の方針では、「医療機関における必要な受診を確保し、子どもや慢性疾患を抱えている方、低所得の方の患者負担などに配慮しつつ」、見直しを検討するとしている。具体的な内容については年内の予算編成までに検討される見通しだ。

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この記事を書いた人
富永鈴香
ネットワーク報道本部
専門・関心分野
人権問題、政治参加、表現の自由
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    上西充子
    (法政大学教授)
    2025年6月14日16時41分 投稿
    【視点】

     SNSで話題になっており、気になっていました。まだ具体的な内容は決まっていないのですね。とはいえ「骨太の方針」に盛り込まれたということは、見直しの方向で検討が進んでいくのでしょう。その際、どういう検討プロセスになるのか、その検討プロセスの中でどういう方向性が打ち出されていくのかも、タイミングを逃さずに随時、報じていただきたいです。  高額療養費の上限引き上げについては、通常国会のテレビ入りの予算委員会の中で野党が当時者の声を伝え、検討プロセスの不適切さも指摘して今年8月からの引き上げの「凍結」を求め、予算案の採決を前に大きく注目されたことから政府は「見送り」を決めました。しかし、上限引き上げは法改正を必要とするものではなかったことから、野党が予算委員会の場で強く凍結を求めなければ、事態は動かずに引き上げが強行された可能性もあったと考えられます。  そう考えると、通常国会も終わりに近づいている現在からこの先、「OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し」について、長期間にわたる薬の使用が必要な人たちや日本医師会が懸念している点が適切に検討されていくのか、注視が必要でしょう。

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    福原麻希
    (医療ジャーナリスト・介護福祉士)
    2025年6月15日8時31分 投稿
    【解説】

    OTC類似薬を保険適用外にする話は、かつてから俎上に上がっては消えていたが、今回、高額療養費制度の患者自己負担上限額の引き上げ案見直しで再浮上した。これは、1992年から導入している「セルフメディケーション(体調不良を自分自身でメンテナンスする)」をさらに普及させるための方向性で、なんでもかんでも保険適用外にするということにはならないと考える。国会議員が、まずどんな薬がOTC類似薬かをリストアップしたに過ぎず、ここから医師や薬剤師等を交えて慎重に検討を重ねていくはずだ。 「セルフメディケーション」の取り組みが始まったのは、いつまでも風邪をひいただけでクリニックを受診し、本当は必要がないにもかかわらず、医師に薬がほしいと求める人が後をたたないため、医療におけるリテラシー(情報を正しく理解し、適切に活用する力)を高めようという背景から始まった。読者の中には、医師は必要ない薬まで処方しないとお考えになるかもしれないが、薬を飲めば熱はすぐ下がり、1日2日鼻水や咳を多少緩和することで患者に安心感を持ってもらえる。それでクリニックの収益が上がるのだからいいではないか、と処方している実態がある。 しかし、風邪のウイルスはいつでも鼻腔等に付着しているにもかかわらず、発熱や咳、鼻水等の症状が出始めるのは、体の免疫が下がっているから。十分な睡眠と栄養、水分補給によって、体の免疫システムがウイルスと闘い、およそ5日後にはウイルスが死滅する。体がそれだけ休養を求めていると理解し、慢性疾患を持っている人以外は、クリニックを受診せず静養してほしい。 問題は、いつどんなときにクリニックを受診すればいいかだが、いまは薬局に薬剤師がいるので相談できる。薬局薬剤師は、かねてから「かかりつけ薬剤師」の役割を模索してきたため、いまこそ、社会にその専門性を知ってもらうチャンスがきたと思ってほしい。私たちも自分の体のしくみをよく知り、どのように対応すればいいかに関心を持とう。

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