謎と矛盾だらけの中居さん
こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。みなさんは、たとえば目がかすんで見えづらいなあと感じたら眼科に行きますよね。腰が痛けりゃ形成外科で診てもらう。日本では医師免許を持っていれば、どの病気を診察・治療してもかまわないのですよ。それなのになぜみなさんは、病気になったら症状に応じて専門の診療科を受診するのですか?
それは、病気の種類があまりにも多いため、すべての病気を適切に治療できる医師がいないからです。だからそれぞれの医師は、特定の部位や症状の治療に専念して専門医としての実績を上げていくわけです。そういう医師に診てもらったほうが病気が治る確率が高くなるとわかってるから、みなさんも専門の診療科にかかるのです。
そんなこと説明されなくてもわかってる? そう、これはあたりまえのことなんです。では、中居正広さんはなぜ、企業法務が専門の弁護士を自分の代理人にしたのでしょう?
中居さんは第三者委員会の報告書の内容に不満があって、場合によっては訴訟を起こすことも視野に入れている――と「関係者」が漏らした、と女性週刊誌やネットメディアが報じました。
先に、メディアリテラシーの観点から重大な警告をしておきます。そういった記事を読めばわかるのですが、中居さんが第三者委員会報告書の内容に不満がある、反論したがっている、といったことをいってるのはすべて「関係者」であって、中居さん本人ではありません。
もっとも悪質なのは橋下徹さんです。テレビなどでいかにも中居さんが反論したがっているのが事実であるかのように断定的な発言を繰り返してますが、そこに根拠や具体性はまったくありません。すべては関係者とやらに聞いた話でしかなく、橋下さんは中居さんからじかに話を聞いたとはひとこともいってないのです。橋下さん、こういうブラフを意図的に仕掛けて世論を誘導するのはいいかげんやめてもらえませんかね。
そんなに肩入れしてるのなら、なぜご自分が中居さんの代理人をやらないのですか? 今後もしフジが中居さんに損害賠償を請求するとなるとフジテレビとずぶずぶの関係である橋下さんと利益相反になるからですか? だったらフジテレビ系列への番組出演をすべて断った上で中居さんの代理人になればいいのですが、そこまでする覚悟はないんですね。
ともあれ、中居さんが新たに弁護士を依頼したのは事実ですが、その人選が謎なんです。
弁護士も医師と同じです。弁護士資格があればどんな法律案件でも担当することができます。しかし法律問題も多岐にわたるので、各弁護士は得意分野に特化してキャリアを積んでいくのが普通です。だから何か法的な問題に直面したら、その問題の解決で実績のある弁護士に依頼するのが常識です。
ではなぜ中居さんは、性加害事件の弁護、もしくは名誉毀損訴訟で実績のある弁護士に依頼しなかったのか。
性加害の弁護が得意な弁護士がどれだけいるかは不明ですが、名誉毀損訴訟で実績のある有名な弁護士なら何人もいます。中居さんは腐るほどお金をお持ちなのだから、金に糸目をつけず、そういった超一流の弁護士を雇うべきです。
なのに、性加害や名誉毀損とは畑近いの企業法務が専門の弁護士に依頼したのです。中居さんは以前、内臓系の大病を患ったそうですが、その際に眼科医を主治医にしましたか。違いますよね。その病気の治療で実績のある医師に担当してもらったはずです。なのに自分の今後の人生を左右するような重大な局面で、畑違いの弁護士に頼ったのはなんとも不可解です。
その理由として現時点で推測できるなかでもっとも可能性が高いのは、名誉毀損が専門の弁護士に依頼したけど、勝ち目がないと判断されて断られたから、じゃないですか。
中居さんの代理人になった弁護団の代表者のかたにも疑問があります。なぜあなたは中居さんの代理人を引き受けたのですか? 企業法務のプロとして実績のあるかたなら、何社もの企業と顧問契約を結び、毎日忙しいはずです。中居さん個人の名誉毀損訴訟のような畑違いの案件を担当できるほどヒマではないでしょう。
失礼ながら、冤罪を訴える死刑囚の弁護を買って出るような人権派の弁護士でもなさそうなのに、公表した声明文では中居さんの人権救済を掲げてるのも不自然でしかありません。
百歩譲って、企業法務の専門家がフジテレビ側の代理人になるのならわかります。でもなぜ中居さん個人の代理なのか。これは邪推と承知の上でいわせてもらいますが、おおかた、担当してる大手企業の社長さんもしくはその友人のおエラいさんあたりから、中居さんを弁護してくれと強い要請があって、義理で引き受けざるをえなかった……そんなところではありませんかねぇ。まあもちろんこれは、半世紀生きてきてイヤな人間をたくさん見てきた私の邪推なので、お気になさらず。
ただし、弁護団が公表した声明文の内容に関しては、問題点が多いのできっちり指摘させてもらいます。
まず、最大の謎は、なぜ第三者委員会を相手にすぐに名誉毀損の訴訟を起こさないのかという点。いきなり訴訟を起こさず、第三者委員会に対してヒアリングの資料と証拠を開示しろと要求してるんです。
だったら第三者委員会の代表を務めた人にその旨を書いた文書を内容証明などで郵送すればいいだけのことです。それで断られたらただちに訴訟に移行して、その段階でマスコミに公表すればいい。
なのに、相手方に情報を出せと要求する声明文を、わざわざマスコミ各社宛てに送るという奇妙なことをしています。
これはつまり、この声明文がいわゆる「公開質問状」だからです。公開質問状というのは、政府や自治体、大企業など権力側の不正を糾弾するために、力のない市民団体などが使う戦法です。公開質問状に回答する義務などないのでほぼ無視されますが、最初から回答など期待してません。不正や社会問題を世間に広く訴えて、世論を喚起することがその目的だからです。
まさにそれを中居さんの弁護士はやったんです。第三者委員会はおそらく、情報開示の要請を無視するでしょう。弁護士も期待してないはずです。第三者委員会報告の内容には問題があるらしいぞと疑惑を匂わせて、疑惑を信じる愚かな世間の人たちを増やし、報告書の信憑性を落とせれば、とりあえず依頼された仕事はしましたよ、といえるわけです。
だいたい、相手に証拠を出させようと必死になってる時点で、手持ちの札がなにもないことをバラしてしまったも同然です。もしも中居さんをシロにする決定的な情報があるのなら、とっくに訴訟を起こしているのではありませんか?
今回の声明文でもっとも驚いたのは、中居さん側が第三者委員会とのヒアリングで6時間も話したのにその内容が報告書には全然盛り込まれてなかったという主張と、中居さんは守秘義務解除に応じていたという主張、この2点でした。
それが事実だとしたら非常に重要な点なのに、中居さんはこれまでそんなこと、ひとこともいってなかったじゃないですか。それをいまになって急に主張し始めたのも、これまたとっても不自然です。
なんかアヤシいんですよね。中居さんの弁護士は、中居さんが6時間も重要な話をしたのに、さも、第三者委員会がそれをすべて握りつぶした悪者であるかのように印象づけようとしています。
でも違う解釈も可能です。第三者委員は中居さんから6時間かけて事実関係を引き出そうとヒアリングをしたけど、中居さんは誠実さを見せず、根拠も具体性もない話でのらりくらりと言い逃れするばかりだった。だから報告書に記載できるような内容が何もなかったのだ、と。
そんなのはお前の勝手な想像にすぎないじゃないか? でも中居さんがシロであるとする解釈にも、いまのところなんの根拠もありません。だからこそ、まずは中居さん側から、6時間のヒアリングでどんな主張をしたのか、具体的に何をしゃべったのかをすべて公表すべきです。世間もマスコミも中居さんのファンも、それを何より望んでます。しかも中居さんは守秘義務解除に応じていたんでしょ? だったらヒアリングで話した内容を公表することに問題はないはずです。
声明文では、委員会報告書が使った性暴力の定義についても疑問を呈してますが、これは私が以前ブログ記事「フジテレビの第三者委員会報告書にケチをつける人たち」で言及したように、テレビ番組で橋下徹さんと古市憲寿さんが使ったしょうもない論点ずらしの詭弁にすぎません。
WHOの性暴力の定義は日本人の感覚とは異なるなどと、言葉尻をとらえるような主張をしてますが、じゃあ逆にうかがいます。日本人が考える性暴力の定義をあなたがたはきちんと説明できるのですか。
私は長年にわたって言葉と歴史にこだわって日本の文化と社会の姿をあきらかにしてきましたし、その成果は本として出版されてます。そういう作業を続けてきた私からすると、性暴力の定義について言葉の歴史を調べてもいないくせに適当なことをいってる人たちにはムカつきます。
そもそも日本の報道などで性暴力という言葉を使うのが一般的になったのは、わりと最近のことです。古来から日本には強姦という日本語が存在するのだから、性暴力でなく強姦といえばいえばいいのに、なぜか日本のマスコミは強姦、レイプという言葉をタブーにしてきました。
明治時代から新聞・雑誌は強姦という言葉で普通に事件を報じてきました。私がざっと調べたところでは、どうやら1960年代あたりから、「強姦」から「婦女暴行」というあいまいな言葉への置きかえが進んだようです。
その理由は不明ですが、1950年代から60年代前半は戦後もっとも犯罪が多かった時期にあたります。強姦の件数もそのころが戦後最高で、毎日のように強姦報道が繰り返されることを日本の恥と考えた人たちが、隠蔽したくなったのかもしれません。
法律上では強姦罪は不同意性交罪に改正されまして、これは強姦の適用範囲を現実的なものにした点では適切な改正ではありますが、「強姦」が持つ凶悪な言葉のイメージが薄れてしまったデメリットもあります。法律上の凶悪犯罪とは殺人・強盗・放火・強姦の4つとされてきました。強姦が不同意性交と名前を変えても凶悪犯罪であることに変わりはないのに、言葉のイメージはソフトになってしまいました。
余談ですが、政治家の汚職事件のことは1980年代ごろまでは「疑獄」と呼ばれてました。これも言葉がソフトになることで、悪いイメージが薄れてしまった例のひとつです。
さらに声明文では「調査報告書では証明力に疑問がある伝間証拠に基づき中居氏が「性暴力を行った」と断定しました」との主張もありますが、これは完全に間違いです。だって当事者中の当事者である被害者女性と中居さん、両者がヒアリングに応じたのですよ。その二人の証言内容と多くの証拠を突き合わせた上で、中居さんの行為は性暴力だったと判断したのです。当事者の証言をもとにしてるのに、伝聞証拠で断定したなどと批判するのは、事実をねじ曲げたいいがかりです。
中居さんはこれまで、事実無根だとも冤罪だともいってません。性交はなかったともいってません。つまり性行為があったことは認めてるわけで、今回の弁護側の声明文は、結局毎度おなじみ「性交はあったが合意があったから罪にはならない」という加害者側の一方的な主張を蒸し返してるだけなんです。
加害者側の主張をなんの根拠もなく正しいものとして、被害者側は事細かに話をしてるにもかかわらず、その主張を全否定する。これではまともな議論にはなりません。
加害者を擁護するということは、必然的に、被害を訴えている女性たちをウソつきだと決めつけることになるのです。それがどれほど非情な仕打ちであるか、わからないのでしょうか。
さまざまな方向から検討していくと、最終的には最初の疑問に戻ってくるんです。中居さんが裁判に訴えてでも本気で自分の名誉を回復したいと考えているのなら、その実績のある弁護士に依頼せず、なぜ畑違いの企業法務の弁護士に依頼したのですか。
第三者委員会のメンバーだって一流の弁護士です。声明文を読めば、中居弁護団が強気に出てるのはブラフにすぎず、委員会報告書の内容をひっくり返すほどの具体的な材料を持ってないのだな、くらいのことは容易に推察できるはずです。中居弁護団が訴訟に勝つ見込みはかなり薄いのではありませんか。
やはり考えれば考えるほど、中居さんの本気度が疑わしくなってきます。
中居さんが反論したがっているというのは、本当に中居さん本人の意志なのですか? なんだか私には、周囲の人間が反論しろとけしかけて無責任にお膳立てをしているだけのようにしか思えないのです。そこだけは確認したいので、ぜひとも中居さん本人の言葉による具体的な説明を望みます。
それは、病気の種類があまりにも多いため、すべての病気を適切に治療できる医師がいないからです。だからそれぞれの医師は、特定の部位や症状の治療に専念して専門医としての実績を上げていくわけです。そういう医師に診てもらったほうが病気が治る確率が高くなるとわかってるから、みなさんも専門の診療科にかかるのです。
そんなこと説明されなくてもわかってる? そう、これはあたりまえのことなんです。では、中居正広さんはなぜ、企業法務が専門の弁護士を自分の代理人にしたのでしょう?
中居さんは第三者委員会の報告書の内容に不満があって、場合によっては訴訟を起こすことも視野に入れている――と「関係者」が漏らした、と女性週刊誌やネットメディアが報じました。
先に、メディアリテラシーの観点から重大な警告をしておきます。そういった記事を読めばわかるのですが、中居さんが第三者委員会報告書の内容に不満がある、反論したがっている、といったことをいってるのはすべて「関係者」であって、中居さん本人ではありません。
もっとも悪質なのは橋下徹さんです。テレビなどでいかにも中居さんが反論したがっているのが事実であるかのように断定的な発言を繰り返してますが、そこに根拠や具体性はまったくありません。すべては関係者とやらに聞いた話でしかなく、橋下さんは中居さんからじかに話を聞いたとはひとこともいってないのです。橋下さん、こういうブラフを意図的に仕掛けて世論を誘導するのはいいかげんやめてもらえませんかね。
そんなに肩入れしてるのなら、なぜご自分が中居さんの代理人をやらないのですか? 今後もしフジが中居さんに損害賠償を請求するとなるとフジテレビとずぶずぶの関係である橋下さんと利益相反になるからですか? だったらフジテレビ系列への番組出演をすべて断った上で中居さんの代理人になればいいのですが、そこまでする覚悟はないんですね。
ともあれ、中居さんが新たに弁護士を依頼したのは事実ですが、その人選が謎なんです。
弁護士も医師と同じです。弁護士資格があればどんな法律案件でも担当することができます。しかし法律問題も多岐にわたるので、各弁護士は得意分野に特化してキャリアを積んでいくのが普通です。だから何か法的な問題に直面したら、その問題の解決で実績のある弁護士に依頼するのが常識です。
ではなぜ中居さんは、性加害事件の弁護、もしくは名誉毀損訴訟で実績のある弁護士に依頼しなかったのか。
性加害の弁護が得意な弁護士がどれだけいるかは不明ですが、名誉毀損訴訟で実績のある有名な弁護士なら何人もいます。中居さんは腐るほどお金をお持ちなのだから、金に糸目をつけず、そういった超一流の弁護士を雇うべきです。
なのに、性加害や名誉毀損とは畑近いの企業法務が専門の弁護士に依頼したのです。中居さんは以前、内臓系の大病を患ったそうですが、その際に眼科医を主治医にしましたか。違いますよね。その病気の治療で実績のある医師に担当してもらったはずです。なのに自分の今後の人生を左右するような重大な局面で、畑違いの弁護士に頼ったのはなんとも不可解です。
その理由として現時点で推測できるなかでもっとも可能性が高いのは、名誉毀損が専門の弁護士に依頼したけど、勝ち目がないと判断されて断られたから、じゃないですか。
中居さんの代理人になった弁護団の代表者のかたにも疑問があります。なぜあなたは中居さんの代理人を引き受けたのですか? 企業法務のプロとして実績のあるかたなら、何社もの企業と顧問契約を結び、毎日忙しいはずです。中居さん個人の名誉毀損訴訟のような畑違いの案件を担当できるほどヒマではないでしょう。
失礼ながら、冤罪を訴える死刑囚の弁護を買って出るような人権派の弁護士でもなさそうなのに、公表した声明文では中居さんの人権救済を掲げてるのも不自然でしかありません。
百歩譲って、企業法務の専門家がフジテレビ側の代理人になるのならわかります。でもなぜ中居さん個人の代理なのか。これは邪推と承知の上でいわせてもらいますが、おおかた、担当してる大手企業の社長さんもしくはその友人のおエラいさんあたりから、中居さんを弁護してくれと強い要請があって、義理で引き受けざるをえなかった……そんなところではありませんかねぇ。まあもちろんこれは、半世紀生きてきてイヤな人間をたくさん見てきた私の邪推なので、お気になさらず。
ただし、弁護団が公表した声明文の内容に関しては、問題点が多いのできっちり指摘させてもらいます。
まず、最大の謎は、なぜ第三者委員会を相手にすぐに名誉毀損の訴訟を起こさないのかという点。いきなり訴訟を起こさず、第三者委員会に対してヒアリングの資料と証拠を開示しろと要求してるんです。
だったら第三者委員会の代表を務めた人にその旨を書いた文書を内容証明などで郵送すればいいだけのことです。それで断られたらただちに訴訟に移行して、その段階でマスコミに公表すればいい。
なのに、相手方に情報を出せと要求する声明文を、わざわざマスコミ各社宛てに送るという奇妙なことをしています。
これはつまり、この声明文がいわゆる「公開質問状」だからです。公開質問状というのは、政府や自治体、大企業など権力側の不正を糾弾するために、力のない市民団体などが使う戦法です。公開質問状に回答する義務などないのでほぼ無視されますが、最初から回答など期待してません。不正や社会問題を世間に広く訴えて、世論を喚起することがその目的だからです。
まさにそれを中居さんの弁護士はやったんです。第三者委員会はおそらく、情報開示の要請を無視するでしょう。弁護士も期待してないはずです。第三者委員会報告の内容には問題があるらしいぞと疑惑を匂わせて、疑惑を信じる愚かな世間の人たちを増やし、報告書の信憑性を落とせれば、とりあえず依頼された仕事はしましたよ、といえるわけです。
だいたい、相手に証拠を出させようと必死になってる時点で、手持ちの札がなにもないことをバラしてしまったも同然です。もしも中居さんをシロにする決定的な情報があるのなら、とっくに訴訟を起こしているのではありませんか?
今回の声明文でもっとも驚いたのは、中居さん側が第三者委員会とのヒアリングで6時間も話したのにその内容が報告書には全然盛り込まれてなかったという主張と、中居さんは守秘義務解除に応じていたという主張、この2点でした。
それが事実だとしたら非常に重要な点なのに、中居さんはこれまでそんなこと、ひとこともいってなかったじゃないですか。それをいまになって急に主張し始めたのも、これまたとっても不自然です。
なんかアヤシいんですよね。中居さんの弁護士は、中居さんが6時間も重要な話をしたのに、さも、第三者委員会がそれをすべて握りつぶした悪者であるかのように印象づけようとしています。
でも違う解釈も可能です。第三者委員は中居さんから6時間かけて事実関係を引き出そうとヒアリングをしたけど、中居さんは誠実さを見せず、根拠も具体性もない話でのらりくらりと言い逃れするばかりだった。だから報告書に記載できるような内容が何もなかったのだ、と。
そんなのはお前の勝手な想像にすぎないじゃないか? でも中居さんがシロであるとする解釈にも、いまのところなんの根拠もありません。だからこそ、まずは中居さん側から、6時間のヒアリングでどんな主張をしたのか、具体的に何をしゃべったのかをすべて公表すべきです。世間もマスコミも中居さんのファンも、それを何より望んでます。しかも中居さんは守秘義務解除に応じていたんでしょ? だったらヒアリングで話した内容を公表することに問題はないはずです。
声明文では、委員会報告書が使った性暴力の定義についても疑問を呈してますが、これは私が以前ブログ記事「フジテレビの第三者委員会報告書にケチをつける人たち」で言及したように、テレビ番組で橋下徹さんと古市憲寿さんが使ったしょうもない論点ずらしの詭弁にすぎません。
WHOの性暴力の定義は日本人の感覚とは異なるなどと、言葉尻をとらえるような主張をしてますが、じゃあ逆にうかがいます。日本人が考える性暴力の定義をあなたがたはきちんと説明できるのですか。
私は長年にわたって言葉と歴史にこだわって日本の文化と社会の姿をあきらかにしてきましたし、その成果は本として出版されてます。そういう作業を続けてきた私からすると、性暴力の定義について言葉の歴史を調べてもいないくせに適当なことをいってる人たちにはムカつきます。
そもそも日本の報道などで性暴力という言葉を使うのが一般的になったのは、わりと最近のことです。古来から日本には強姦という日本語が存在するのだから、性暴力でなく強姦といえばいえばいいのに、なぜか日本のマスコミは強姦、レイプという言葉をタブーにしてきました。
明治時代から新聞・雑誌は強姦という言葉で普通に事件を報じてきました。私がざっと調べたところでは、どうやら1960年代あたりから、「強姦」から「婦女暴行」というあいまいな言葉への置きかえが進んだようです。
その理由は不明ですが、1950年代から60年代前半は戦後もっとも犯罪が多かった時期にあたります。強姦の件数もそのころが戦後最高で、毎日のように強姦報道が繰り返されることを日本の恥と考えた人たちが、隠蔽したくなったのかもしれません。
法律上では強姦罪は不同意性交罪に改正されまして、これは強姦の適用範囲を現実的なものにした点では適切な改正ではありますが、「強姦」が持つ凶悪な言葉のイメージが薄れてしまったデメリットもあります。法律上の凶悪犯罪とは殺人・強盗・放火・強姦の4つとされてきました。強姦が不同意性交と名前を変えても凶悪犯罪であることに変わりはないのに、言葉のイメージはソフトになってしまいました。
余談ですが、政治家の汚職事件のことは1980年代ごろまでは「疑獄」と呼ばれてました。これも言葉がソフトになることで、悪いイメージが薄れてしまった例のひとつです。
さらに声明文では「調査報告書では証明力に疑問がある伝間証拠に基づき中居氏が「性暴力を行った」と断定しました」との主張もありますが、これは完全に間違いです。だって当事者中の当事者である被害者女性と中居さん、両者がヒアリングに応じたのですよ。その二人の証言内容と多くの証拠を突き合わせた上で、中居さんの行為は性暴力だったと判断したのです。当事者の証言をもとにしてるのに、伝聞証拠で断定したなどと批判するのは、事実をねじ曲げたいいがかりです。
中居さんはこれまで、事実無根だとも冤罪だともいってません。性交はなかったともいってません。つまり性行為があったことは認めてるわけで、今回の弁護側の声明文は、結局毎度おなじみ「性交はあったが合意があったから罪にはならない」という加害者側の一方的な主張を蒸し返してるだけなんです。
加害者側の主張をなんの根拠もなく正しいものとして、被害者側は事細かに話をしてるにもかかわらず、その主張を全否定する。これではまともな議論にはなりません。
加害者を擁護するということは、必然的に、被害を訴えている女性たちをウソつきだと決めつけることになるのです。それがどれほど非情な仕打ちであるか、わからないのでしょうか。
さまざまな方向から検討していくと、最終的には最初の疑問に戻ってくるんです。中居さんが裁判に訴えてでも本気で自分の名誉を回復したいと考えているのなら、その実績のある弁護士に依頼せず、なぜ畑違いの企業法務の弁護士に依頼したのですか。
第三者委員会のメンバーだって一流の弁護士です。声明文を読めば、中居弁護団が強気に出てるのはブラフにすぎず、委員会報告書の内容をひっくり返すほどの具体的な材料を持ってないのだな、くらいのことは容易に推察できるはずです。中居弁護団が訴訟に勝つ見込みはかなり薄いのではありませんか。
やはり考えれば考えるほど、中居さんの本気度が疑わしくなってきます。
中居さんが反論したがっているというのは、本当に中居さん本人の意志なのですか? なんだか私には、周囲の人間が反論しろとけしかけて無責任にお膳立てをしているだけのようにしか思えないのです。そこだけは確認したいので、ぜひとも中居さん本人の言葉による具体的な説明を望みます。