実は財源だらけの日本の財政
減税は、民間企業でいえば値下げに相当する。値下げは減収効果がある反面、売り上が増えるので増収効果も得られる。日々、モノを売っている人にしてみれば、当たり前の話だろう。同じように減税すれば景気はよくなり、増収につながる。ところが、予算案ではこうした増収は一切考慮されない。仮に今7兆円の減税を実施すれば、7兆円超の増収が見込まれる。だが、政府の試算では、そもそもこの減税効果をはなから度外視しているので、議論が成り立たないのだ。
財源については、名目成長4~5%が達成できれば自然増収で賄える。減税による効果がすぐに出なかったとしても、外国為替資金特別会計(外為特会)や国債費などでも捻出できるので、財源を心配する必要はない。
円安によって外為特会は「含み益(まだ確定していない利益)」が数十兆円にも上る。日本政府は中期のドル債を資産にしているので、たとえ売却しなくても、ドル債の償還ロールオーバー(乗り換え)時に、債券価格の上昇などにより含み益は出る。そこから毎年2兆円程度は財源を絞り出せるはずだ。
自然増収についても、今の経済状況を考えると、かなり期待できると言っていい。2025年4~6月期でGDPギャップ(潜在的な供給力と実際の需要の差)は、私の試算では1.7%程度、およそ10兆円ある。したがって、7兆~8兆円程度の減税策を実施すれば、ほぼGDPギャップはゼロになるので、インフレ率は2~3%程度、5%程度の名目経済成長が安定的に見込まれる。これは理想的な経済状況だ。
しかも「103万円の壁」撤廃で、労働時間と労働供給を増加させることができる。
財務省が、国債による過去の借金の返済(債務償還費)と利息(利払費)と定義しているのが「国債費」だ。国債費は2024年度予算のうち、債務償還費が16.9兆円あるとするが、既存の国債の元本を返済するために発行される新たな国債である「借換債」の発行でしのげるから問題ない。かつて、債務償還費なしで予算を組んだことも数多くある。
そもそも先進国は債務償還費を予算に計上していない。例外は日本だけだ。
また、国債費のうち9.7兆円ある利払費は、国債費を計算する際に仮置きする「予算積算金利」を1%程度高めに見積もっており、実際は1兆円程度は不要になる。これらは、補正予算を組めば、本来すべて財源化できるのだ。
このように、「財源がない」のではない。「探さない、作らない」だけなのである。(以下、第3回へ続く)












