Macで120FPS動作を実現した「サイバーパンク2077」、ゲーム内にCEOがガチ出演
Metal FXフレーム補間技術でUltra設定も安定動作、開発会社CEOがポーランド語で声優まで担当する驚きの裏話も
長年「Macはゲームができない」と言われ続けてきたが、その常識が完全に覆される瞬間を目撃することになった。AppleのMetal技術とApple Siliconの進化により、MacBook Pro M4 Maxで「サイバーパンク2077」が120FPSという驚異的なパフォーマンスを実現したのだ。
ゲームをプレイしない人にとって120FPSがどれほどすごいことなのか分からないかもしれないが、これは映画の24FPSの5倍の滑らかさを意味する。つまり、画面の動きが信じられないほど滑らかで、まるで現実を見ているかのような体験ができるということだ。
「サイバーパンク2077」とは何か
「サイバーパンク2077」は、未来の巨大都市「ナイトシティ」を舞台にしたゲームで、プレイヤーは傭兵として危険な世界を生き抜いていく。このゲームが特別なのは、その圧倒的な映像美と複雑さにある。
ゲーム内には50億ものオブジェクトが存在し、ホログラムやネオンサイン、複雑なディスプレイなど、通常のコンピューターでは処理が困難な要素が無数に散りばめられている。これまでハイエンドなゲーミングPCでも安定して動作させるのが困難とされてきた作品だ。
Macゲーミングの歴史的転換点
実は、Appleとゲームの関係は決して浅くない。1977年のApple IIは当時最高のゲーム体験を提供し、1990年代には「Myst」や「Marathon」といった名作がMacで生まれた。しかし、2000年代以降はWindowsの普及により、Macからゲームが姿を消していった。
転機となったのは、MetalAPIの導入とApple Siliconの登場である。特にMetal FXアップスケーリング技術の開発により、Macでの高品質なゲーミング体験が現実のものとなった。
WWDC 2024で起きた「奇跡」
WWDC 2024で披露されたデモンストレーションは、まさに歴史的瞬間だった。MacBook Pro M4 Max上で「サイバーパンク2077」が120 FPSで動作する様子が公開され、会場にいた人々を驚かせた。
これを可能にしているのが、Apple独自のMetal FXフレーム補間技術だ。この技術は、2つの入力フレームから中間フレームを生成することで、最小限の計算負荷でフレームレートを大幅に向上させる。さらに、Ultra設定でも安定した120FPSを実現している点が驚異的だ。
没入感を高める先進機能
Mac版では、フレーム生成技術に加えて内蔵の空間オーディオ機能も搭載される。これにより、音の方向や距離感がリアルに再現され、まるでゲーム世界にいるかのような体験ができる。
Liquid Retina XDRディスプレイを搭載したMacBook Proでは、色彩がより鮮やかに表現され、細部まで美しく描写される。Apple Siliconの統合メモリアーキテクチャにより、従来のGPUでは困難だった高度な処理が可能になっている。
ゲーム内の驚きの「隠し要素」
デモンストレーションでは、ゲーム制作の裏話も明かされた。なんと、CD Projekt RedのCEOであるMichał Nowakowski氏が実際にゲーム内にカメオ出演しているのだ。彼らの顔がスキャンされ、ポーランド語で声優まで務めているという徹底ぶりには驚かされる。
さらに興味深いのは、彼らが登場するシーンのトラック(バン)が、CD Projekt Redが20年以上前にバンでゲームを販売していたという会社の歴史にちなんだものだということ。こうした細かなディテールからは、開発チームの遊び心と会社への愛着が感じられる。
また、ゲーム内で運転できる「バジリスク」という戦車や、墜落した巨大な核動力のAV(空飛ぶ車)など、SF世界ならではの要素も満載だ。
CD Projekt RedとAppleの連携
この優れたパフォーマンスは、CD Projekt RedがAppleと連携して実現した成果だ。両社のエンジニアは、ゲームの最適化において協力し、16ビット浮動小数点の活用といったスマートな最適化を実施した。
特に重要なのが、AppleのGame Porting Toolkitの活用である。このツールにより、WindowsゲームのMacへの移植プロセスが大幅に効率化され、開発期間の短縮が実現された。
2025年、ついにMacに登場
「サイバーパンク2077」とスパイスリラー拡張パック「ファントム・リバティ」は、2025年にMacに登場する予定だ。Apple Silicon搭載のMacでプレイ可能で、Mac App StoreにてUltimate Editionがリリースされる。
Ultimate Editionには、基本ゲーム、「ファントム・リバティ」拡張パック、アップデート2.0のすべてのコンテンツ、無料DLCが含まれている。既存のSteamユーザーは、追加購入なしでMac版にアクセスでき、セーブデータの引き継ぎも可能だ。
Macゲーミングの新時代
今回披露されたのは、Metal 4の新機能「Metal FXフレーム補間」を使った事前ビルド版である。この機能は、Mac版のアップデートにて提供される予定だ。
「サイバーパンク2077」の成功は、Macゲーミングの新時代の到来を象徴している[8][12]。Apple Siliconの32 TOPSのNeural Engine処理能力により、従来では困難だった高度なAI支援レンダリングが可能になった。
今後は「Assassin’s Creed Shadows」や「Resident Evil 4」の拡張版など、さらに多くのAAAタイトルがMacに登場予定だ。「Macはゲームができない」という古いイメージは、もはや完全に過去のものとなりつつある。
ゲームをプレイしない人でも、この技術的進歩の意味は理解できるはずだ。Macが単なる仕事道具から、エンターテインメントの中心へと進化を遂げているのである。