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「研究力低下の要因」 無期転換ルール巡り、半数の国立大が回答

東京工業大学本館=東京都目黒区で2023年2月10日午後2時32分、尾籠章裕撮影
東京工業大学本館=東京都目黒区で2023年2月10日午後2時32分、尾籠章裕撮影

 研究者の有期労働契約が10年を超えれば無期雇用に転換できるルールについて、毎日新聞が全国の国立大にアンケートしたところ、日本の研究力低下の要因になっていると半数近くの大学が答えた。このルールが結果的に無期雇用への転換を阻む雇い止めにつながり、キャリアを積めない研究者を多く生み出したとされるためだ。大学の運営費削減方針も影響して大学は有期雇用を続ける体質を変えられず、研究力を支えるアカデミアの構造的な問題が浮き彫りになった。

 関連記事は3本です。
<前編>「研究力低下の要因」 無期転換ルール巡り、半数の国立大が回答
<中編>20年で1600億円超減 日本の研究力低下を招いた財政規律
<後編>「職場を去った研究者はごまんといる」 研究力低下に現場から訴え

 このルールは2013年施行の改正労働契約法で導入された。一般の労働者は無期転換権を得るまでの期間は5年だが、研究プロジェクトが長期に及ぶ研究職は特例法で10年に延長されている。

 文部科学省の調査によると、大学や研究機関で有期契約で働く10年特例対象の研究者らは10万1602人(23年4月時点)。有期契約が10年を超え、これまでに無期転換権を得たのは少なくとも1万5838人で、権利を行使したのは982人。待遇悪化など雇用条件の変更を提示され、権限を行使できなかった人がいるとみられる。

 毎日新聞は今年1~2月に、86の国立大学(東京科学大に統合した旧東京工業大と旧東京医科歯科大を含む)を対象に、改正労契法が与えた影響などについてアンケート調査を実施。86%に当たる74大学から回答を得た。東京大や北海道大、大阪大など12大学は回答しなかった。

 「改正労契法が研究力低下の要因になっているか」と尋ねたところ、5大学が「大いに影響した」と回答。「多少影響した」と答えた31大学と合わせ、おおよそ半数(49%)に上った。

 「大いに影響した」と回答した旧東京工業大は「キャリアパス上の障害になっており、日本全体としてみたときの研究力の低下が懸念される」と指摘。「多少影響した」と記した和歌山大は「研究者の育成が難しくなる他、モチベーションの低下、研究分野を狭めるといった問題につながる可能性がある」…

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