京都の御三家まで「罪深い」選択、岐路に立つ女子大 募集停止に共学化…四半世紀で4分の1消滅

存続の危機に直面する女子大が全国で後を絶たない。18歳人口の減少や共学志向の高まりから、この四半世紀で4分の1が姿を消した。今年4月には、「京都の女子大御三家」の一つとも称された京都ノートルダム女子大が募集停止を発表。男女共学化の道を選ぶ女子大も相次ぐ。女性の働き方が変化した今、岐路に立つ女子大の存在意義が問われている。

「苦渋の決断。持ちこたえることができず、残念で悔しい」。来年度以降の募集停止を決めた京都ノートルダム女子大の中村久美学長は、産経新聞の取材に唇をかんだ。今春の新入生が卒業する令和11(2029)年3月に閉校する見通しだ。

就職は、資格は―。募集停止の発表以降、学長室に直接、不安や悩みをぶつけに来る学生は少なくない。そうした学生を見るたび、中村学長は「罪深いことをしてしまったと感じる」という。

昭和36年創立の名門女子大も、少子化の波にはあらがえなかった。学部や学科の再編などを進め、学生確保を目指してきたが、大学によると、近年は定員割れが継続。今春の新入生は定員330人に対し、編入を含めても6割に満たない約180人だった。

相次ぐ共学化

武庫川女子大(兵庫県西宮市)の教育総合研究所・安東研究室の調査によると、全国の女子大数は令和6年度で71校。ピークだった27年前の平成10年度(98校)から実に4分の1が消滅した。

定員割れが続き、系列校との統合に踏み切るケースもあるが、共学化に活路を見いだす女子大も少なくない。「園女(えんじょ)」として親しまれた園田学園女子大(兵庫県尼崎市)は今年度から園田学園大へと改称し、共学校として再スタートを切った。

「少子化が進み、学生の確保が難しくなった。時代のニーズに合わせ、性別や国籍の枠を超えた大学の多様性を図ろうと共学化を決意した」。園田学園大の大江篤学長は力を込める。

今春から3学部のうち2学部を共学化。大学によると、男子学生26人が入学した。大江学長は更衣室の整備などハード面の課題はあるとし、「男性にも選んでもらえるように、オープンキャンパスなどを活用して周知を進めたい」と語った。

敢えて閉校選択

関西では、かつて「お嬢様大学」として人気の高かった名門女子大でも、偏差値低下や定員割れが指摘されている。生き残りに向けた対策は多くの女子大で必至の状況だ。

これに対し、京都ノートルダム女子大が選んだのは閉校だった。同大文学部(現・国際言語文化学部)出身で、滋賀県内の美術館職員、山田由希代さん(51)は「寂しい気持ちでいっぱい。建物だけでも残してもらえないか」と話すなど、卒業生にも衝撃が広がる。

中村学長によると、一部の教員から共学化の議論を求める声があったとするが、重視したのは「女子教育の重要性」を説いた創立時の理念。中村学長は女子教育に徹することが使命だとし、「女子大として終わる」として敢えて閉校を選択したと明かした。

「学びたい女子高生まだ一定数いる」 

河合塾教育研究開発本部の近藤治主席研究員

河合塾・主席研究員の近藤治さん
河合塾・主席研究員の近藤治さん

女子大の募集停止や共学化が相次ぐ背景には、18歳以下の人口が急激に減少していることや女性の進路の多様化、また女子大の学部構成がニーズに追いついていないことが考えられる。

これまで女子大の学部は人文系や家政系が中心だった。しかし、近年は理系への進出をはじめ、文系でも法学部や経済学部で女性の受験が増えている。従来の学部構成の転換や多様化が求められているのではないか。

名門と呼ばれる女子大が偏差値を落としているとの声もある。偏差値は志願者の増減と密接にリンクするので、当然志願者が減少すれば入試の難易度も下がる。倍率が下がれば、偏差値も下がるということになる。

ただ、男女共学の大学ではなく、女子大で勉強したいという女子高校生は一定数いると感じている。今後、女子大でも学部の多様化が進めば、学びたいという女子高校生の思いとマッチすることもあるだろう。まだまだ女子大の存在意義はあるはずだ。

私立大全体に及ぶ「サバイバル」

急速な少子化で18歳人口の減少が進む中、昨春の入学者が定員割れした私立大は全体の6割にのぼる。今後も18歳人口の減少は進む見通しで、生き残りに向けた危機感は、女子大だけではなく私立大全体に広がる。

日本私立学校振興・共済事業団のまとめでは、令和6年春の入学者が定員割れした私立大は354校で、前年より5・9ポイント上昇の59・2%。ここ数年は過去最高を更新し続けている。一方、定員全体に占める入学者の割合を示す定員充足率は98・19%で過去最低。特に地方での減少が目立ち、大規模大学への学生集中などが定員割れにつながっているとみられる。

文科省などによると、18歳人口は平成4年には約205万人いたが、以降は毎年のように減少。令和6年には約106万人とほぼ半減し、17(2035)年までには100万人を割る見通しだ。大学進学者も6年の約63万人から22(2040)年には44万人まで落ち込み、現在の定員の7割程度しか埋まらなくなる。

中教審は今年2月、急速な少子化を踏まえた大学など高等教育機関の在り方について、文科相に「定員未充足や募集停止、経営破綻に追い込まれる高等教育機関がさらに生じるのは避けられない」と答申。経営状況が厳しい大学の撤退・縮小を促進するため、国の指導や支援の強化を提言するなどした。文科省は今夏をめどに今後10年程度の政策工程を示す予定で、大学の再編が今後加速する可能性がある。(塚脇亮太)

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