10年前のケーキが、今いくらで作れるか原価計算してみた
10年前の私は、パティスリーでシェフをしておりました。材料の価格の上昇は、その当時に比べたらもちろんなのですが、ここ数年で上昇幅がかなり大きいです。チョコレートやバターが代表的です。それ以外にも、生クリームや卵や小麦粉など、よく使う材料も上がっています。
いま、パティスリーでも閉店を選ぶお店がとても多いです。休みなく働いても利益が乏しく、なんなら赤字であることもあるでしょう。
ただ、私もパティスリーを開くという目標はずっとありまして(今、焼き菓子が面白すぎて時間はないのですが)、開くためにあれこれ考えることはよくあります。
いま、パティシエが一番頭を悩ませる問題は、『ケーキの価格をいくらにすればよいのか』。
というわけで、10年前に作っていたケーキの原価計算を、今改めて計算してみました。
※以下、期間限定で無料公開しておきます。
計算に使うのは、このチョコレートケーキ『エルキュール』です。
「キャラメルショコラ」がテーマのケーキです。
上から
・キャラメルショコラのムース
・ビスキュイショコラ
・キャラメルショコラのガナッシュ
・サブレショコラを粉状にしチョコレートとプラリネペーストを混合した底生地
・飾り:生チョコレート、薄いショコラ板
です。
サイズは80×25㎜で、どちらかというと小さめなサイズです。
10年前の原価がこちら。
10年後の材料価格に直すとこちら。
まとめると、
原価が1.8倍も上がっていました。これは厳しいですね。当時の原価率に合わせるとすると、
¥857は高いな…。消費税8%がつけば、¥925になってしまいます。
粗利だけ合わせたとしても、
厳しい…。ケーキで原価率30%は、経験上厳しいです。
ケーキがもっとシンプルで、フルーツもほぼ使わない構成で、どんどん売れていくなら30%台でもよいです。しかし、現代のパティスリーのケーキの構成では、労務費が全く合わず、大変厳しいと思います。
原価率はせめて25%までにおさめたいです。
¥650。気持ちとしては高いですが、これが目いっぱいですね。
これより安くするなら、チョコレートの量を減らすとか、安価なものにするとかです。いま、チョコレートで安価なもの自体ないですけど。
ここまで書いてきてあれなんですが、弊店では問屋さんから材料を通し、さらに相見積もりもとっているので、同じ材料であれば安く入手しています。なので、問屋さんを通さないとか、問屋さんが一社のみだとか、さらにいうと、ネットで購入しているお店であれば、同じケーキでも、原価はさらに上がるでしょう。
現代のパティスリーでは、原価の低いお菓子や、かなり高単価なお菓子をしっかりと販売し、全体として帳尻を合わせることが、経営の基本となるでしょう。
まあそれをするときに、冷蔵庫冷凍庫などを含む、諸々のスペースの問題が発生するなど、頭を悩ませることは増えるのですが。
それとは別に、『ケーキのサイズを大きくする』というのを一つの案として推したいとも思います。「サイズが大きくなれば原価が上がるのに?」です。
これは、また別の機会に。
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