第26話 蛮族王子、魔王に会う





 魔法銃で武装したホムンクルスの軍勢により、大国であるはずのネドラ帝国はたった一日で滅亡した。


 それから数日後。


 俺はネドラ城の一室で寛ぎながら、報告にやってきたアンリの話を聞く。



「早期に投降した男たちは奴隷にしましたが、抵抗してきた男たちは全員処刑しました」


「そ、そうか」


「それと反抗した女たちですが、現在はホムンクルスたちによる『教育』が行われています」


「……ホムンクルスは便利だな」



 俺はホムンクルスの凄さを再認識する。


 その創造主たるユラ曰く、ホムンクルスたちは知能の高さは無論、政治能力の高さまで自由に設定できるそうだ。


 国を運営する上で効率的な政策や必要な機関の設置を躊躇なく行う。


 しかもホムンクルスたちは俺への忠誠心から対立することがないため、政策はその日のうちに実行できる始末。


 本当にホムンクルスは凄い。



「それとアカネ様がエルト殿下に面会を求めてきました」


「アカネが?」



 アカネは狐の獣人で、帝都の地下にあるカジノのオーナーだ。

 俺の女であり、堕ちた証拠に地下カジノの経営権まで差し出そうとしてきたが……。


 経営のノウハウがない俺が持っていても仕方ないので、地下カジノはそのままアカネに運営させている。


 まあ、毎月多額のお小遣いが入ってくるようなものだと思っておけばいい。


 そのアカネが会いたいと言ってきた。



「分かった。会おう」



 アンリがアカネを呼びに行く。


 久しぶりに会うアカネは、誰が見ても分かるくらい疲れているようだった。



「大丈夫か?」


「ご心配、ありがとうございますわ。少々困ったことになりまして……」


「何かあったのか?」


「……実は、魔王軍から接触がありましたの」


「む」



 アカネは地下カジノのオーナーだが、帝都で情報収集に務める魔王軍の幹部でもある。


 帝国が滅びた今、その詳しい話を知りたくて魔王軍がアカネに接触してきたとしてもおかしい話ではない。


 驚いたのは、次にアカネが語った内容だ。



「その、大変申し上げにくいのですが。魔王様が直々に貴方様とお会いしたい、と」


「魔王が?」



 魔王。


 【ファイナルブレイブ】のラスボスであり、作中で一番厄介な敵。

 まだ復活していないはずだが、俺が知らないだけで蘇っているのだろうか。


 いやまあ、何もおかしくはない。


 俺が好き放題やってきたせいでシナリオが変わった可能性もあるからな。


 もうゲームの知識は当てにならない。


 帝国が滅び、バンデッド大帝国が誕生した影響は少なくないだろう。


 気になるのは魔王の目的だ。


 帝国が滅びた状況で、魔王が何を目的として俺と会いたがっているのか。



「いいだろう。魔王に会おうじゃないか」


「……承知しましたわ。場所は――」



 不意にアカネの言葉が止まる。


 否、止まったのはアカネだけではない。俺以外の時間が全て止まったのだ。


 俺はこの魔法を知っている。



「ほう、驚いた。余の止めた時間の中を動くか」



 空間が歪み、穴が空く。


 そこから身の丈が三メートルはあろうかという身長の美女が出てきた。


 おっぱいが大玉スイカよりも三回りはデカイ。


 それでいて腰はキュッと細く絞まっており、太ももはムチムチで肉感的なお尻をしている。


 身にまとう衣装は色白な肌晒した黒を基調色のドレスで、特に激しく露出した胸元や深いスリットから覗く太ももがエッチだった。


 禍々しい角とコウモリのような翼、鱗に覆われている尻尾。

 特徴的なのは白金色の髪と白黒が反転した目だろうか。


 人を超越した美貌に思わず見惚れてしまう。



「余の名は――がっ!?」



 空間に空いた穴から出てきたその美女は、角が天井に引っかかって痛そうにしていた。


 ……ちょっと可愛いな。



「ええい、もっと余に合わせた高い天井にしておけ!!」


「……お前が魔王か」


「ふっ、如何にも。余の名はシスティア。魔族を率いる魔王である」



 無論、彼女のことは知っている。


 【ファイナルブレイブ】のラスボスであり、攻略難易度が最も高いヒロインだ。


 彼女を攻略する条件はたった一つ。


 一定時間内で倒すことなのだが、その制限時間が僅か一分なのだ。


 あまりにもシンプルで、あまりにも高い難易度に多くの紳士なプレイヤーたちが匙を投げてしまった。


 ……正直、蛮族魂が疼く。


 この圧倒的な存在感を誇る女を跪かせて、俺の方が上だと分からせてやりたい。


 しかし、その本能を理性で抑える。



「……俺よりも強いな」


「ふっ、当たり前であろう? 余は最強無敵の魔王。貴様も中々強いが、余の方がもっと強い」



 それは事実だった。


 メルトレインでバフを盛り、魔力で身体を強化してようやく勝負になるくらいには俺とシスティアには差がある。


 自惚れていたつもりはないが、やはりラスボスとなると格が違うな。



「で、俺に何か用か?」


「ふむ、余の強さを理解してなおその態度か。悪い気はしないな。まあいい、余も面倒な前置きは嫌いだからな。――勇者を余に引き渡せ」



 ……勇者を、か。



「理由を教えてくれるか?」


「決まっているだろう。かつて余を滅ぼした女神への当てつけだ。勇者を渡さねば今すぐ魔王軍を率いて貴様の国を滅ぼす」


「それは困ったな。……いいだろう、連れて行くといい」


「くっくっくっ、物分かりがよくて助かったぞ。ではな」



 そう言って再び空間に穴を空け、角を引っかけつつも帰っていくシスティア。


 同時に止まっていた時間が動き始める。



「――あら? 私は、一体何を……?」


「ああ、アカネ。もう魔王とは会ったから、気にしなくていいぞ」


「え? は、はあ、左様でございますか」



 アカネがポカンと口を開いている。


 後にアンリから聞いた報告によると、リオンとその監視に付けていたアオイが忽然と消えていたらしい。


 魔王システィア、か。


 俺の倍以上もあるあのエロい身体を好き放題できるとしたら、どれくらい楽しいだろうか。



「次のターゲットは決まりだな」



 しかし、彼我の実力差は明白。その差を埋める方法は一つしかない。


 俺はメルトレインに問う。



「メルトレイン」


『む、どうしたのじゃ?』


「他の神器がある場所を知っているか?」



 対魔王のために、俺は準備を始めるのであった。







―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「魔王に拐われてしまった勇者はどうなるのか!?」


エ「お前次第」



「三メートル越え、だと!?」「デカスギィ!!」「本当に作者次第で草」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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