第21話 蛮族王子、ホムンクルスたちに歓迎される




「なっ、勇者が牢屋を破壊して脱獄した!?」


「申し訳ありません。いつの間にか鉄格子の一部が腐っていたようでして」



 俺はアンリからの報告に驚愕する。


 アンリに世話を任せていたリオンが地下牢から脱獄したらしい。


 これで俺の正体がバレるのも時間の問題だろう。



「……要塞の完成が間に合ってよかったな」



 そう、万が一に備えてネドラ帝国とバンデッド王国の間に作っていた要塞が完成した。


 バンデッドへ本格的な攻撃を行うには、この要塞を正面から突破するか、大きく迂回して森を進む必要がある。


 迂回路は険しく、軍隊のような大所帯が通れば無事では済まないだろう。


 仮に迂回を成功させたとしても、疲弊した軍隊などバンデッドの人間たちが好むゲリラ戦で一網打尽だ。



「しかし、勇者の動向は気になるな……」


「ご心配なく。すでに監視を付けておりますし、あちらにはフェリシア様やネルカもいます。勇者とて下手には動けないかと」


「む。言われてみればそうだな。というか、監視を付けたのか?」


「はい。ちょうどアカネ様の妹御が暇そうにしていたのでお願いしました」


「お願いしましたって……」



 しかし、アカネの妹というとアオイか。


 【ファイナルブレイブ】ではアカネを攻略した後に攻略できるヒロインだった。


 クールで無表情だが、エッチの時だけはめちゃくちゃ情熱的で夜も寝かせてくれない三尾の狐獣人ヒロインである。


 そのアオイが今は主人公と一緒にいる、と。


 散々勇者から女を奪ってきたが、アオイと一緒というのは羨ましいな。



「アカネにアオイを抱かせろと命令すればよかったな」


「……問題ないでしょう。アオイ様はすでにエルト殿下をお慕いしていたようですし」


「む。まだ直接会ったこともないぞ?」


「女というのは、本能で自らの運命の相手を悟るものです。伝え聞く話だけで、エルト殿下がオスとして優秀な方であると優秀なメスは分かるのですよ」



 何故かアンリが得意気に言う。



「ま、まあいい。要塞の様子を見に行くか」


「お供します」



 それから俺たちは完成した要塞へと向かった。



「お待ちしておりました、マスター様」


「お、おお、クルスか。なんというか、壮大な出迎えだな」


「我々ホムンクルス一同、マスター様にお会いでにて歓喜に打ち震えております」



 俺を出迎えたのは数百、あるいは数千人のホムンクルスたちだった。


 ギリギリのラインを攻めた露出度の高い衣装をまとい、道の両脇に整然と並びながら俺に熱い視線を送ってくるホムンクルスたち。


 ホムンクルスと言っても十人十色だ。


 それぞれ顔や体型、性格に違いがあるものだが、見かけるホムンクルスたちは全員俺好みの美少女や美女ばかり。


 ホムンクルスたちをエロい目で見ていると、クルスが俺に進言してきた。



「マスター様。お気に召した娘がいましたか?」


「あ、ああ。随分といい女が揃っているな」


「当然です。我々の創造主、ユラ様がマスター様の好む美少女や美女を生み出していますので。ちなみにマスター様へのホムンクルスたちの好感度は100を越えるよう設定しています」


「……好感度?」



 ゲームでしか聞かないような言葉に、俺は思わず小首を傾げる。


 【ファイナルブレイブ】にもその概念はあったが、まさかその言葉をクルスの口から聞くとは思わなかった。



「はい。この場にいるホムンクルスたちは『待機命令がなければ土下座で抱いてと懇願する程度』の好感度です」


「……そう、なのか?」


「ホムンクルスたちは全員、マスター様に抱いてほしい目をしていますよ」



 言われてからホムンクルスたちを見ると、たしかに呼吸が荒く、頬を赤らめている。


 

「最初から設定されている好感度か。何というか、感想に困るな」


「……では、試しに待機命令を解除してみましょう」



 クルスが静かに目を閉じる。


 すると、何か魔力の波のようなものがクルスから生じて要塞全体に広がった。

 今のはホムンクルスが使える、魔力を使った連絡手段だろう。


 その次の瞬間。


 道の両脇に控えていたホムンクルスたちが嬉々として俺のところまで駆け寄ってきて、その場で懇願してきた。



「偉大なるマスター様っ♡ どうかお情けをっ♡」


「マスター様マスター様マスター様マスター様マスター様っ♡」


「あぁ♡ マスター様♡ 素敵っ♡」


「マスター様が目の前にっ♡ ああ、駄目っ♡ もう本能が抑えられないっ♡」


「マスター様ぁ♡」



 まるで二次元にいた推しが画面の向こう側から飛び出してきたかのような反応を見せるホムンクルスたち。


 ふむ。これは何というか、悪くないな!!



「全員そこに並べ。抱いてやる」



 俺はホムンクルスたちの熱烈な歓迎に応えることにした。


 帝国との全面戦争はまだ十分起こり得る。


 まだ油断してはならない状況だが、これくらいの息抜きはいいだろう。


 俺は要塞見学を満喫するのであった。
















 一方その頃。


 要塞を迂回して森を抜け、険しい道を超えて帝都まで戻ってきたリオン。


 彼はすぐ皇帝への謁見を求めた。


 皇帝は勇者の生還にたいそう驚愕したが、どうしても外せない政務があり、謁見室で先に待っておくよう命令があった。


 そこで、思わぬ妨害を受けることに。



「ちょっとリオン。アタシたちの話、聞いてるわけ?」


「あ、ネ、ネルカ……」


「ふふ、緊張してるんだね。仕方ないよ、エルト君に取られちゃったはずの私たちがこうやって密着してるんだから」



 リオンの両脇を固めるように、ネルカとフェリシアが座っていた。


 それも吐息がかかるような密着具合だ。



「ふ、二人とも……」


「どうせアンタのことだから、ご主人様のことお父様にチクろうとしてんでしょ?」


「あ、い、いや、それは……」


「リオン君、私たちからのお願いです。エルト君のこと、皇帝陛下には黙っていてもらえませんか?」



 両耳から囁いてくるネルカとフェリシア。


 二人から漂ってくる女の子特有の甘い匂いがリオンの鼻孔をくすぐった。


 リオンの心臓の鼓動が早くなる。

 


「アタシたちがご主人様としたエッチなこと♡ 特別に話してあげるわ♡」


「浮気になっちゃうからリオン君とエッチなことはできないけど♡ リオン君がオカズに困らないようにしてあげるから♡ ね♡」



 リオンは改めて理解する。


 ネルカとフェリシアが自分を負かした男に完全に染められてしまっていることを。


 同時に、バンデッドの存在を伝えねばならないと分かっていても、二人がどうやって染められてしまったのか知りたいとも思ってしまう。


 その日、リオンは皇帝に真実を話せなかった。









―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「囁き報告が一番心に効く」



「ホムンクルスちゃんたち最高」「リオンがまた歪む……」「作者に全力で同意する」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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