第19話 蛮族王子、仕方なく荒っぽいやり方をする
「お客様、ああいう荒らされ方をすると困りますわ」
バックヤードまでやってきた俺を迎えたのは、絶世の美女だった。
九つの尾を持つキツネ耳の女。
赤みがかった長い黒髪とスカーレットの瞳が印象的だろう。
帝国では珍しい着物を着崩しており、胸元や肩が惜し気もなく晒している。
どうしてあの着方をしてポロリしないのか、本当に不思議だ。
「困ると言われても、あらかじめダブルアップチャンスはないと聞いていなかったものでな。魔王軍幹部、アカネ殿」
「!?」
俺はこの美女のことを知っている。
彼女こそ帝都の地下カジノのオーナーであり、帝国で諜報活動をしている魔王軍の幹部。
その名はアカネ。
獣人たちをまとめ上げ、人類と敵対する中盤のボスキャラだ。
特定の条件を満たすことでヒロインとして攻略できるキャラでもある。
「……何の話をなさっているのか、分かりかねますわね」
「あれだけ抱いたからな。カジノの女スタッフが獣人であることくらいすぐに気付く」
本当はゲーム知識であらかじめ知っていたが、適当にそれっぽい理由を述べておく。
そう、実は地下カジノの会場にいたスタッフたちは全て獣人だ。
うさみみ少女もネコミミ少女もコスプレではなく、本物のケモ耳だったのだ。
俺の言葉を聞くや否や、アカネが目を鋭く細めて敵意を見せる。
「本来なら、少し『注意』するだけで解放して差し上げるつもりでしたが……残念ですわ。我々の正体を知っている貴方は始末しなくては」
アカネが目配せした瞬間だった。
バックヤードに完全武装した獣人たちが押し入ってきた。
「この子たちは幼い頃から殺人術を学ばせてきた殺しのプロですわ。大人しくするなら、苦しまずに殺して――」
「ああ、そういう手段を取るのか。なら話が早くて助かる」
「え?」
俺は押し入ってきた獣人たちの首を掴み、そのまま握り潰した。
大金を揺すろうと敢えて捕まり、バックヤードまでやってきたが、そういう態度で来るならこちらも暴力で応じるしかない。
いや、本当に心苦しい。
可能ならば話し合いで終わらせたかったが、先に仕掛けてきたのはあちらだからな。
これは身を守るための戦い。本当に心苦しい。
「このガキ!! よくも仲間を!!」
仲間を殺されて激昂した獣人が俺の死角から飛びかかってきた。
俺は難なく回避し、その首をへし折る。
「殺人術を学ばせてきたにしては、随分と感情的だな。バンデッド人の方がもっと冷淡だぞ」
バンデッド人なら仲間が殺されても怒らない。
何故なら殺されたのは本人が弱いからであって、弱者は見下すべき存在だから。
仲間の死を悲しまないバーサーカーたち。
そういうやべー奴らの中で今まで生きてきた俺にとって、目の前の武装した獣人たちは脅威ですらない。
しかし、俺はバンデッド人の中では優しい方だ。
ある程度獣人たちを始末したところで、俺は温情を見せることにした。
「女は降伏するなら殺さずに可愛がってやるぞ。男は降伏しても殺すが」
俺の言葉が本気だと理解したのだろう。
男の獣人たちは腰を抜かし、明らかにぶるぶる怯え始める。
逆に女の獣人たちはその場でペタンと尻餅をついて、一切の抵抗をやめた。
獣人は本能に忠実な種族だ。
敵わないと認めた相手には従順になり、逆らわなくなる。
「素直な奴が多いな。そういう奴は好きだぞ」
「「「「――ッ♡♡♡♡」」」」
俺がそう言うと、女の獣人たちが発情し始めた。
自分よりも格上の相手に『好き』と言われて興奮したのかもしれない。
せっかくなので利用してやろう。
「おい、お前たちはアカネを押さえておけ」
「「「「は、はいっ♡」」」」
男の獣人を殺しながら命令すると、女の獣人たちは嬉々として従う。
「!? な、何をしますの、貴方たち!!」
「も、申し訳ありません、アカネ様っ♡ 何故かこの御方には逆らえずっ♡」
「お許しくださいっ♡ お許しくださいっ♡」
謝罪しながら女の獣人たちはアカネの手足を強く押さえた。
と、ちょうどそのタイミングで男の獣人たちの殲滅が完了する。
俺は生き残った女の獣人たちの頭を撫でた。
「ご苦労だったな。あとで可愛がってやるぞ」
「「「「――ッ♡♡♡♡」」」」
「さて、形勢逆転だな。まあ、最初から俺が有利だったが」
「くっ!! 貴方たち、放しなさい!!」
どうにか女の獣人たちの拘束を解こうと身をよじるアカネだったが、獣人の膂力は最低でも人間の十数倍。
物理攻撃よりも魔法攻撃を得意とするアカネでは振り払えない。
俺なら仲間だろうと裏切り者は殺すだろう。
しかし、同族思いであるアカネがその選択肢を選ぶことは絶対にない。
アカネが俺をキッと睨む。
「くっ、何が目的ですの? 私を帝国に引き渡すつもりかしら? だったら無駄ですわね。帝国の中枢には私たちの言いなりになっている者たちが大勢おりますわ。逆に貴方を嵌めて差し上げます」
「……そういうことはあまりペラペラ話さない方がいいぞ」
まあ、【ファイナルブレイブ】でもアカネを仲間にしたらポンコツ属性が判明するしな。
その片鱗が見えた気がする。
しかし、それはそれとして俺にはアカネをどうこうするつもりはない。
「俺はただ金がほしくてな。お前を帝国に突き出そうとは思っていない。だからこれは取り引きだ」
「取り引き、ですの?」
「ああ、俺はお前を殺さない。だから金を寄越せ。お前たちの有する全ての金を」
「そ、そのようなこと、できるわけありませんわ!!」
「……そうか。じゃあ交渉決裂だな」
俺はアカネの首に手を伸ばす。
しかし、アカネは死を覚悟しながらも俺を睨むのをやめなかった。
アカネが獣人でありながら魔王に味方したのは、貧困に喘いでいる同族たちを保護してもらうため。
アカネが自分の命よりも金を優先するのは、同族たちを守るため。
そのために最後まで自分の命を惜しまない。
そういう高尚な精神を持っている相手を屈服させるのは、どれくらい楽しいだろうか。
「気が変わった。お前は俺の女にする」
「はぇ? な、何を――ひゃんっ♡」
俺はアカネの首に伸ばそうとしていた手でそのおっぱいを鷲掴みにした。
それから七日七晩。
アカネが心の底から俺に屈するまで、彼女を抱き続けるのであった。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「ケモミミは何が好き? 作者はネコミミ」
エ「……俺はキツネ耳」
「魔王軍幹部が秒でやられてる笑」「モブ女獣人も即堕ちしてて草」「わいは犬耳派やで!!」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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