第13話 蛮族王子、主人公の母を攻略する




 【ファイナルブレイブ】の主人公、リオンの出生について語ろう。


 リオンは身寄りのない子供だった。


 寒い冬空の下で女神を崇める教会の前に赤子のリオンが捨てられており、そのまま教会のシスターたちに育てられる。


 リオンという名前はシスターが付けたものだ。


 そしてリオンが五才となる頃、男児に恵まれなかった帝国の公爵家の当主が彼を引き取った。


 その後、リオンは勇者の力が覚醒。


 ネドラ帝国の監視下に入り、勇者としての訓練を受けることになる。


 で、最初にリオンを引き取った公爵家の当主こそ夜中に俺の部屋を訪ねてきた長身の美女、ノレアである。



「このような夜更けにお訪ねしたこと、まずは謝罪させてください」


「いえ、お気になさらず」



 俺はノレアを部屋に入れた。


 メルトレインとのエッチでは物足りなかったのでベッドに押し倒そうかとも思ったが、やめておく。


 あ、ちなみにメルトレインは人化を解いて聖剣の姿に戻っている。


 じゃなきゃノレアを部屋に入れられないからな。



「それで、勇者殿の母君が何用でしょうか?」


「リオンが、リオンが行方知れずと聞いて、その話を聞きたくて参りました」


「……ふむ」



 ノレアの質問を、俺は予想していた。


 リオンは表向きには賊から聖女と皇女を救出する際に行方不明となり、まだ見つかっていないことになっている。


 それを知ったノレアは不安になったのだろう。


 たった数年ではあるが、実の息子同然に可愛がっていたリオンが失踪してしまったのだ。


 その安否を偶然現場に居合わせたとはいえ、何か知っているかもしれない俺に訊ねてくるのはおかしいことではない。


 さて、どうしようか。


 ここでリオンが死んでいることにしてもいいし、命惜しさに尻尾を巻いて逃げ出したと話して評判を下げるのもいい。


 ……いや、後者はやめておこう。


 ノレアはリオンのことを大切にしていたし、息子の悪口を言われて喜ぶ親はいないだろうからな。



「帝国は秘密にしたがっているようですが、真実をお話します。現場には勇者殿と思わしき少年の亡骸がありました」


「そ、そんな……うぅ……リオン……」



 まあ、その死体は俺が用意したダミーで、本物は地下牢に囚われているがな。


 それを知らないノレアが静かに嗚咽を漏らす。


 ノレアが少し落ち着いたタイミングで俺は仕掛けることにした。



「ノレア殿、こちらのポーションをどうぞ。心を落ち着かせる効果があります」



 俺は青い液体が入った小瓶をノレアに渡す。


 リオンの死を知り、動揺していたノレアは疑いもせずポーションを飲み干した。



「落ち着きましたか?」


「え、ええ、お見苦しいところをお見せしました」


「大切なご子息の死を知って涙を流さない親はいません。どうかお気になさらないでください」


「……お気遣い、ありがとうございます」



 無理やり笑顔を作るノレア。


 俺はそんなノレアを上目遣いで見つめ、その手を優しく握った。


 ノレアがビクッと身体を震わせる。



「ノレア殿、俺にできることがあれば何でもします。どうか一人で抱え込まないでください」


「何でも……」


「はい、何でもです。俺は勇者殿の代わりにはなれませんが、ノレア殿の心の傷を癒やすことはできるかもしれませんので」


「あ、ぇ……?」



 ノレアの目の焦点が合わなくなってきた。


 次第に頬を赤らめて、呼吸も少しずつ乱れてきた様子。


 俺はニヤリと笑った。



「やっと効果が出てきたな。さすがは好感度アップアイテムだ」



 ノレアは今『魅了』と『発情』の状態異常にかかっている。


 原因は俺が彼女に飲ませたポーションだ。


 あのポーションは帝都の路地裏で特定の手順を踏まないと辿り着けない、知る人ぞ知る隠しショップに売っている。


 その効果は相手に飲ませた後、側にいる人物への好感度が上がるというもの。


 帝城に行く前に立ち寄って買っておいたのだ。


 かなり値は張ったが、バンデッドには商人や旅人から奪った金目のものが沢山あるからな。


 それを売って得たお金で買った。



「はあ♡ はあ♡ 身体が、熱く……♡」


「おい、ノレア。俺の方を見ろ」


「はぇ? ――んむっ♡」



 俺はノレアにキスをした。


 自慢じゃないが、俺は時間のある時は女とエロいことをしまくっているのでそこそこ上手い。


 少なくとも貴族の令嬢として蝶よ花よと育ち、何年も前に亡くなっている旦那以外とはロクに経験のない女よりは。


 舌を絡ませ合うキスを終え、唇を離すとノレアは瞳を潤ませていた。



「あ、あぁ♡ わ、私は、出会ったばかりの子とキスを……♡」


「キスだけで終わるわけないだろう?」



 俺はノレアのおっぱいを揉みしだいた。


 メルトレインに匹敵する圧倒的な大きさと柔らかさ、そして弾力。


 最高だった。



「今日はお前が俺のものになるまで抱いてやるからな」


「あっ♡ や、やめ――っ♡♡♡♡」



 それから気が付くと、朝日が昇っていた。



「ふぅー、スッキリした。これでお前も俺の女だからな」


「は、はひっ♡」


「よし、承諾したな。じゃあ今日からお前の屋敷に住まわせてもらうぞ。ああ、男の使用人は全員クビにしろ。顔と身体のいい女は残せ」


「あ、そ、そんな♡ そんなことをしたら使用人たちが路頭に迷ってしまいますっ♡」


「知らん。強ければどこでも生きていける。路頭に迷うのは弱いからだ。弱い奴が悪い」



 ノレアはネドラ帝国でも有数の公爵家の当主。


 皇帝から貰った報償金と合わせれば、俺が帝国で金に困ることはない。

 しかし、真の狙いは公爵家の乗っ取りではないのだ。


 俺がネドラ帝国から最も引き抜きたい人材、それがリオンの家族……。


 リオンの妹と姉なのだ。


 その二人さえ堕とせばバンデッドは帝国と正面から戦える。


 まさか帝都へやってきた初日にノレアが部屋を訪ねてくるとは思わなかったが、幸先のいいスタートだ。








―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「リオン君から家族まで奪うとは。彼に何の恨みがあるんだ……」


エ「書いてるのはお前だぞ!?」



「ポーション飲ませた時点で何かあると思った」「リオンの脳がまた破壊される……」「大体作者のせい」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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