第4話 蛮族王子、成人する





 聖剣改めメルトレインを手に入れ、二年の月日が経った。



「お見事です、殿下。まさか成人となる前の日にこの私を倒すとは」


「はあ、はあ、ああ、ようやく倒せた」



 ある日の出来事。


 俺は一対一の決闘で、遂にアンリを負かすことができた。


 アンリは強い。


 メルトレインを手に入れて、俺はもっと強くなったはずだった。

 魔力を使った身体強化をも実戦に織り混ぜ、バンデッド王国内でも有数の強さを得た。


 それでもアンリだけは何度挑もうと中々倒せなかった。


 理由は単純。


 アンリが俺の魔力による身体強化を用いた戦い方を模倣してきたのだ。


 ゲームのエルトは早々にアンリを越えて、女王と同等以上の実力を持っていた。

 それがこの五年、ずっと苦戦を強いられていたのはアンリが思わぬ成長をしたせいだろう。


 強さそのものはゲーム本編のエルト以上になったと思うが、バンデッド国内での立場は少し低めというおかしなことになってしまった。


 いやまあ、強くなったから文句はないけどさ。



「さあ、エルト殿下♡ 貴方様に敗北した哀れな女に何なりとご命令ください♡」



 アンリがその場で土下座しながら言う。


 バンデッド王国では、決闘で勝利した者が敗北した者を好きにすることができる。


 生かすも殺すも勝者の自由なのだ。


 相手が女ならその場で抱くことができるし、男なら身内の女を差し出させ、無理やり犯しても咎める者はいない。


 全ては弱い者が悪だからだ。


 本当にバンデッド王国は蛮族精神が根付いていると思う。

 いやまあ、そのお陰でアンリのような極上の美少女を抱けると思うと興奮するわけだが……。



「あ、ああ、そうだな。考えておく」



 俺はアンリにエロい命令をするのを思わず躊躇ってしまった。


 アンリは俺にとって、姉のような存在だ。


 平和な日本で育った俺は、蛮族社会を生き抜く方法を欠片も知らなかった。

 それを一から教えてくれたのは、他ならぬアンリだからだ。


 決闘で勝利したからと言って、いきなり抱かせろと言う勇気はない――というわけでもないが。


 いや、自分でも分かっているのだ。


 メルトレインが屈服し、俺に懇願してきた時に感じた衝動。

 俺は今もアンリに対してそれを感じていて、彼女をめちゃくちゃにしてやりたいとも思っている。


 思っているが、俺の中にある微かな良心が、理性が俺を引き止めてくる。


 しかし、当のアンリは――



「殿下はもっと、己の欲望に従うべきです」


「え? わぷっ!?」



 妖しく微笑みながら、大きなおっぱいを俺の顔に押し付けてくる。

 甘ったるい匂いが鼻の奥まで届き、脳に直接伝わってきた。



「殿下、私は魅力に乏しいでしょうか?」


「い、いや!! そんなことない!! めちゃくちゃ綺麗だし、可愛いぞ!!」


「であれば、どうかエルト殿下の思うがまま、わたしをめちゃくちゃにしてくださいませ♡ それが勝者に許された資格なのです♡」



 アンリが優しく俺の相棒に触れる。


 メルトレインと夜の鍛錬を重ねてきた俺の相棒は大人顔負けの子供とは思えないくらい立派なものへ成長していた。



「ふふふ♡ これほど逞しくなった殿下に抱かれると想像するだけで、わたしは――んっ♡」



 ビクンと身体を震わせるアンリ。


 女にここまで誘われて抱かないのは、もういっそ失礼なのではないか。


 そうだ、そうに決まっている。


 そもそもここは日本ではないのだ。強いなら何をしても許される、バンデッド王国という蛮族の国だ。


 俺は覚悟を決めて、アンリの大きなおっぱいに手を伸ばした。



「アンリ、今からお前を抱く。寝室に行くぞ」


「んっ♡ あぁ、それでこそバンデッドの未来の王でございます♡ 殿下はもっともっと強くなり、世界を支配する器♡ どうかその心意気を忘れないでくださいませ♡」



 アンリを寝室に連れ込み、俺は翌日の朝まで彼女を抱いた。



「あんっ♡ 流石はエルト殿下ですっ♡ お上手ですよっ♡」


「のぅ、主殿♡ 妾も抱いてほしいのじゃ♡ 寂しいのは嫌なのじゃ♡」


「順番だ、メルトレイン。待ってろ」



 途中で人化したメルトレインが乱入してきたが、まとめて朝まで抱いた。


 この日が俺にとってのターニングポイント。


 メルトレインの時にうっすら自覚していた蛮族魂が明確な形を持ち、敗者を虐げることに躊躇がなくなった日だった。


 それを受け入れた途端、すっと肩が軽くなったような気がする。


 知らず知らずのうちに抱いていたバンデッド王国の蛮族らしさに対する拒否感が消えてしまったのだろう。


 蛮族王子に転生した時はどうなることかと思ったが、意外と悪くないように思える。


 勝ち続けてさえいれば、何も問題はないのだ。


 相手が【ファイナルブレイブ】の主人公だろうと今なら負ける気がしない。


 ……いや、慢心はよくないな。


 これからも魔力の鍛錬とメルトレインを使った戦術等々、もっともっと突き詰めていかないと。



「エルト」


「え? あ、は、母上!?」



 アンリとメルトレインを抱いた後。


 部屋で二人と寛いでいると、いきなりバンデッド王国の女王改めクインディアが入ってきた。


 クインディア若々しく、美しい。


 普段からそう思っていたが、昨夜のアンリの誘惑でタガが外れてしまったのだろうか。

 俺はクインディアを母としてではなく、どこか女として見ていた。


 いや、もう正直に言おう。


 俺は「クインディアという女を抱きたい」と思ってしまった。


 しかし、親子は流石にアウト。


 俺が辛うじて理性を取り戻したところで、クインディアはご機嫌そうに話しかけてきた。



「お前は今日で十二歳、成人となります。そろそろ略奪に出てもいい頃合いでしょう」


「はっ、ありがとうございます」



 バンデッド王国では十二歳で成人。


 十二歳を迎えたならば大人として扱われ、他の大人から決闘を挑まれることも増える。

 俺からアンリやメルトレインを奪おうとする男たちも出てくるだろう。


 だからこそ、もっと強くならなくては。


 俺の女を守るためには誰よりも強く、誰よりも上に立たねばならない。


 俄然、やる気が湧いてきた。



「エルト、お前にはアンリを含め十人の戦士を与えます。よく奪い、よく殺し、よく犯すのですよ」


「はい!!」



 その日、俺は略奪に出掛けた。


 転生して初めての略奪、俺はそこで思わぬ出会いを果たす。


 【ファイナルブレイブ】のメインヒロインと言われるほど大人気だったヒロイン、聖女と遭遇したのである







―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「作者も蛮族の国に生まれたい……と思ったけど、多分秒で死ぬからやだ」


エ「誰だって嫌だと思う」



「アンリが理性のタガを外しちゃったのか」「メルトレインかわいい」「わいは蛮族の国に行きたいで!!」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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