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199:水着を着せた

「ア、アキラ? 何かあーしの下半身、変なのか?」


 滅多に下半身は晒さない島の風潮もあってか、ニチカも他人に見せるのは初めてなんだろう。不安にさせてしまったようだ。


「あ、いや。そうじゃないんだ」


 膝を着いたのは全く別の理由というか。むしろ下半身が変か普通かも判断できないくらいにモザイクなワケで。というか俺も実物を見たことないから、仮にモザイクが無くても他の人のと比べたり出来ないけどね。


「とにかく。ニチカの裸はとても魅力的だよ。凄くキレイだ」


「お、おう……そっか。へへ」


 気を取り直してくれたらしい。


「それじゃあ、着方を教えてくれ」


「あ、うん」


 図説を見ながら、俺はまず足の部分を通させる。その際にプルンプルンのお尻を持って支えたりと、美味しい場面もあったが、なんとか理性を保っていられた。その後はクルクルに巻いてあった上半身部分を少しずつ巻き戻していく作業。こちらもニチカの体中を触るのでバキバキになってしまうが、賢者の石で誤魔化しつつ完遂する。なんか図説だともっと難しそうだったけど、思った以上にスムーズだった。


「あとはお乳を入れるだけか」


 ただこれがキツキツだ。なんせデカすぎるからね。生地の中に、お乳を押し込んでいく。背後から覆い被さるようにして、ギュギュッと。多少は痛みもあるだろうが、我慢してくれているニチカ。折を見て賢者の石を交えつつ、どうにかこうにか仕舞い込めた。


「ふう」


 しかし競泳水着って、エロいんだなあ。背中がクロスで開いてるし、地肌が丸見えだ。そして体のラインがクッキリ出る仕様もヤバイ。ニチカの引き締まった太ももや健康的なお尻、そして胸部を押し上げる爆乳。

 こんなデザインで、競技用とか無理があるでしょ。この格好でエッチなことしたいなあ。まあ今はそれどころじゃないけど。

 もう一度、賢者の石を握って精神を落ち着かせたところで、


「これ……多分すげえわ」


 ニチカがボソッと呟いた。自分の身を包む水着を見下ろしながら。


「サラシより布の面積が多いのに、絶対こっちのが泳げる」


 確信に満ちた声音。

 俺は何も言わず、ポンと彼女の肩を叩いた。


「まだ夕方までは全然時間がある。雨が降る前に決めてしまおう」


 言葉でも鼓舞する。

 ニチカは白い八重歯を覗かせて快活に笑うと、「おう」と返事した。そして目を閉じる。何を求められているのかは明白で……その唇に優しくキスを落とした。





 

 家を出たところで、向こうからシェレンさんたちが歩いてくるのが見えた。時刻は7時前。いつもより早い起床だ。途中で色々あったし、熟睡は出来なかったんだろうことは想像に容易い。いやはや、申し訳ない。


「改めておはよう、2人とも。フィニスもありがとう」


 そう、フィニスも来てくれていた。彼女にもまた、夜分に無茶なお願いをして迷惑を掛けたよね。

 3人と立て続けにキスをして朝の挨拶とすると……全員が競泳水着姿のニチカを見て驚いていた。

 事情をイチから説明する。


「なるほど~~雨降るかもって思ってたけど~~」


「タイミングが悪いんだよ」


「私もしばらくは大丈夫と思っていたけど、やっぱり自然は読めないわね」


 みんな難しい顔をしている。そこでふと、フィニスが何かを持っているのに気付いた。アレは……


「あ~~これ~~? 泥棒を捕まえるのに~~役立つかなって~~」


 顔の前に掲げて見せたそれは、グルグルに巻いたゴムツタだった。広げたら1メートル以上はあるだろう。

 そしてそれを見た瞬間、背後のリビングでレシピ帳が僅かに反応したような気がした。これはもしかして……新たなレシピが?


「ちょっと待ってて」


 取ってくる。するとすぐに浮かび上がってくれた。やっぱりか。

 自動筆記、落下、キャッチ。




 ====================


 No.19

 

 <伸縮延長ヒモ>


 組成:万能合成生地×ゴムツタ×ジェルスライムの肉片


 内容:伸縮性のある生地に、ゴムの性能、ジェルスライムの柔軟性まで持ち合わせた万能ヒモ。既存のアイテムの延伸などに有用である。ハーネスなどに用いれば、性質上、ショック吸収にも大いに役立ってくれる。

 

 ====================

 


 

 実はずっと気にかかっていたハーネスの尺問題。それが土壇場で一気に解決してしまった。しかも滑落時のショックも、伸縮のおかげで分散してくれるだろう優れ物。

 これは……流れが来てる! しかも全ての素材が手元にあるから、採りに行く手間も要らない。これぞ天祐……ああ、いや。天の人は今ゴルフ観てるから関係ないか。


「フィニス。超ファインプレーだよ」


 抱き締めて、頬擦りする。相変わらず体ムチムチだ。向こうからもスリスリしてくれるので、体の前面が幸せ過ぎる。ちょっとだけお乳も揉んでから、体を離した。


「ボクたちは状況がよく分からないんだよ」


「そうよ。私にも頬擦りしてちょうだい」


 そういう話じゃない気がするけど。取り敢えず、収まらなさそうなので母娘にも頬擦りして乳揉み。

 1つ咳払いを挟んで。


「このゴムツタのおかげで、問題が1つ解決したんだ」


 軽く説明を加える。なるほど、と一同。

 だけど。あと1つ、最大の問題が残っていて……


「なら~~あとはアティから~~ハーネスを借りるだけだね~~」


 そう。ハーネスはアティに貸しっぱなしなんだよね。

 俺はチラリとニチカの顔を窺った。何かを堪えるような表情。怯え、にも近いだろうか。勇敢な海の戦士、自立した女性。そのペルソナは今は剥がれ落ち、ただの20歳の少女が1人居るだけだった。

 優しく抱き締める。みんなにしたように、頬を擦り合わせて、


「行こう。何があっても俺はキミから離れたりしないから」


 耳元で力強く囁く。それで彼女の体から少し力が抜けるのを感じた。

 俺もこんな形で2人を引き合わせるのは想定さえしてなかったし、出来れば避けたかったけど。天候が、状況が、それを許さない。

 ……腹を括るしかないな。俺も、彼女も。

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