都心のマンションの高騰の要因は、建設コストの上昇やいわゆるパワーカップルの購入意欲などさまざまあるが、投資目的の外国人の存在が指摘されている。
しかし、その統計データはなく、国土交通省が初めての実態調査を始めることになった。
もちろん、外国人による不動産購入は法的に問題はない。
ただ、短期転売など投機的な取り引きが拡大すれば相場を押し上げ、住むためのマンションが買えなくなる問題が深刻化しかねない。
必要な住宅政策を考える前提のデータを得ることが目的だ。
マンション高騰 外国人投資の実態初調査へ【経済コラム】
「都心のマンション高騰は外国人の投資が原因だ」
たびたび聞かれるこうした指摘。
しかし、都心のマンション購入に占める外国人の割合といった実態を示す統計データは実は存在していない。
価格が高すぎて住むためのマンションが買えないという声が高まるのに対して、どのような住宅政策が必要なのかを見極めようと、国土交通省が初めての実態調査に乗り出す。
(経済部記者 牧野慎太朗)
初めての実態調査
国土交通省に提供される約11万件の登記情報
もともと国土交通省は、不動産市況の動向を把握するため、法務省から膨大な登記情報の提供を受けている。
そのデータを今回の調査に活用する。
登記情報には国籍の項目はないため、購入者が外国人かどうかは明記されていない。
国土交通省は住所の項目をみることで把握するという。
調査は都内のマンションを中心に行う方針で、登記情報は年間およそ11万件にのぼるという。
数年分を調べることで外国人購入者の割合や増減の傾向などを分析する。
国土交通省は、外国人による購入を規制する意図はないとしている。
外国人の購入意欲は高まっている
2024年9月に、外国人向けにマンションを仲介する不動産会社を取材した際、この会社では毎月40件前後の契約があり、その件数は1年前と比べておよそ2倍に膨らんでいた。
現在の状況を再び聞いてみると、当時と比べて円高傾向になっているものの、引き合いが強い状態は変わっていないという。
また、三菱UFJ信託銀行が年2回、デベロッパーに行うアンケート調査では、東京・千代田区、港区、渋谷区の新築マンションの外国人購入者の割合は直近の2024年度下半期調査で「20%以上30%未満」と「30%以上40%未満」が最も多い回答だった。
不動産市況に詳しい専門家は、こうした売主側へのヒアリングをもとに推計した数字はある一方で、中古マンションも含めた全体像の実態把握はなく、国土交通省の調査に期待を寄せる。
不動産調査会社「東京カンテイ」高橋雅之 上席主任研究員
「海外からも人気が高い都心部や湾岸エリアでは、外国人の割合が高いのではないかとみているが、地域によってもグラデーションがありそうだ。膨大な登記データを個人や民間企業が調べることはコストの面から限界があり、まさに国にしかできない分析で結果に期待している」
急がれる調査結果
5月20日に調査会社「不動産経済研究所」が公表した首都圏・1都3県の新築マンションの4月の平均価格は6999万円で前の年の同じ月と比べて8.7%値下がりした。
ただ、その背景には東京23区の価格が高止まりしていることから、住むための購入を希望する世帯の需要が郊外に移っていることがあるという。
全体の平均価格は下がったものの、比較的買い求めやすい郊外エリアで今後、価格が上昇し続けることになれば、マンション価格の動きは新たな局面に入った可能性がある。
さきほどの専門家は「コメと同様に住宅の高騰も国民の生活への影響度合いは大きい。まずは実態をしっかり把握し、その根拠に基づいて適切な政策を考えてほしい」と話す。
コメ価格では政策の的確さとスピードの課題が浮き彫りになった。
「価格が高すぎて住むためのマンションが買えない」
その声がさらに高まる前に、調査結果と住宅政策の実現に期待がかかっている。
注目予定
今週は3会合連続で政策金利を据え置いた5月のFOMCの議事録が公開され、トランプ政権の関税政策や今後の利下げのペースをめぐってどのような議論が行われたか、その内容が注目されます。
また、トランプ大統領がEUに対して6月1日から50%の関税を課すべきだとSNSに投稿したことを受けて、先行きへの不透明感が市場に与える影響も焦点となります。
(5月26日「おはBiz」で放送予定)