エア・インディア機のブラックボックス回収 家族は答え待ちわびる
インド西部アーメダバード発イギリス・ロンドン行きのエア・インディア機が墜落した事故で、アーメダバードの墜落現場で飛行データなどを記録したブラックボックスが回収された。インドの民間航空相が13日、明らかにした。 ラーム・モハン・ナイドゥ・キンジャラプ民間航空相によると、12日午後の事故発生から28時間のうちに航空事故調査局(AAIB)がブラックボックスを回収した。 事故機は離陸から60秒以内に、医大キャンパスなどのある住宅地に墜落。搭乗者242人のうち241人が死亡し、1人の生存が確認された。事故機はボーイング787-8型機ドリームライナー。 当局消息筋はBBCに、地上では少なくとも8人が死亡したと明らかにしている。 キンジャラプ民間航空相は「(ブラックボックスの回収は)事故原因調査にとって重要な前進」で、「調査に大きく役立つ」と述べた。 旅客機は通常、小型で頑丈な電子データレコーダーのブラックボックスを 2 つ搭載している。 1つは高度や速度などの飛行データを記録し、もう1つはコックピットからの音声を記録する。事故原因調査当局はこれをもとに、パイロットのやりとりや、異常音の有無などを調べる。 事故原因調査はAAIBが主導し、米英の調査チームの支援を受けて行っている。ボーイング社のケリー・オートバーグ最高経営責任者(CEO)は、同社が調査を支援していると述べている。 エア・インディアによると、事故機は現地時間午後1時39分(日本時間同5時9分)、アーメダバードの国際空港を離陸した直後に墜落。国籍別では、インド人169人、イギリス人53人、ポルトガル人7人、カナダ人1人が搭乗していた。 ロンドン・ガトウィック空港にはイギリス時間午後6時25分(日本時間13日午前2時25分)に到着予定だった。 13日の時点では、墜落現場には黒く変色した主翼など機体の残骸がまだ散乱し、機体の大きな破片が建物に挟まっていた。調査官らが現場に到着すると、群衆は残骸からさらに離れた場所に移動させられた。 医師の一人はBBCに対し、犠牲者の身元確認には親族のDNA鑑定が頼りになっていると語った。検視室にいた警察官はBBCに対し、遺体の顔の特徴から親族が身元を確認できた6人の遺体が、遺族に引き渡されたと述べた。 事故機に乗っていてただ一人助かったイギリス人のヴィシュワシュクマル・ラメシュ氏(40)は、同機の11A席に座っていた。左手に火傷を負い、病院で手当てを受けているラメシュ氏はインドの国営放送局DDニュースに、自分の座席は宿舎に激突したのと反対側で、地面に近かったのだと話し、「扉が壊れて、小さい空間が開いたのが見えた」と説明。「自分でベルトを外し、(機体にあいた)穴を自分の脚でさらにこじ開けて、そこからはい出た」のだと話した。 「目の前で人が死んでいるのを見た。客室乗務員たちや、近くにいた2人も。少しの間、自分も死ぬんだろうと感じていたけれども、目を開けて周りを見回すと、自分が生きているのに気付いた」、「自分がどうやって生き延びたのか、まだ信じられない。がれきの中から、自分で歩いて出た」とも、ラメシュ氏は述べた。 搬送先の病院の病床で取材に応じたラメシュ氏は、離陸から間もなく客室内の明かりが「ちらつき始めた」のだと言い、5〜10秒もすると飛行機が「空中で動けなくなって」いるように思えたと話した。 他方、他の搭乗者についてはまだ多くの家族が、必死の思いで消息を待っている。 きょうだいのジャヴェド氏とその家族が同乗していたというイムティアズ・アリ氏は、遺体を見るまではジャヴェド氏が死んだとは信じられないとBBCに話した。 「悲しくなって泣き出したら、もうこらえようがなくなってしまう」、「誰にも止められなくなってしまう。私の心は破裂してしまうかもしれない」とアリ氏は述べた。 飛行機はメガニ・ナガルと呼ばれる住宅街に墜落した。救助隊員によると、残骸は200メートルの範囲に散らばっていた。地上で何人が死亡したかはまだ正確には不明だが、搭乗者でなかった人が少なくとも8人死亡したとBBCは消息筋から聞いている。 機体が激突したバイラムジー・ジージーボイ医科大学および市民病院の学部長ミナクシ・パリク医師は、飛行機がキャンパス内の建物に墜落し、学生4人が死亡したと話した。 「飛行機が墜落した時、キャンパスには私たちの医師の親族4人もおり、彼らも亡くなった」とパリク医師は話した。 「身元確認にはDNA照合のみを頼りにしており、急いだりミスをしたりすることは絶対に許されない」、「私たちは誠実に取り組んでいる。遺族の方々には理解と辛抱をお願いしたい。できるだけ早くご遺体を引き渡したいと思っている」と、パリク医師は述べた。 13日には、インドのナレンドラ・モディ首相が墜落現場で約20分間を過ごした。記者団へのコメントはなかったものの、自分のユーチューブチャンネルに投稿した動画には、現場を歩き、がれきを点検する姿が映っていた。首相はまた、墜落した飛行機の尾翼が建物に刺さっている現場も視察した。 同日にはエア・インディアのキャンベル・ウィルソンCEOも墜落現場を訪れ、「心がとても動かされた」と後で話した。 飛行機を追跡するウェブサイト「フライトレーダー24」によると、事故機は12日に墜落するまでの1年間で700回以上のフライトを完遂していた。製造から11年で、最も頻繁に飛んでいた路線はムンバイ―ドバイ間のほか、首都ニューデリーやミラノ、パリ、アムステルダムなどのヨーロッパ各地へのルートだった。 事故機は過去2年間にアーメダバードからロンドン・ガトウィック空港まで25回、運航していた。インドの航空規制当局、民間航空総局(DGCA)は、エア・インディアのボーイング787-8型機と787-9型機の追加安全点検を命令。これを「予防措置」と呼んでいる。 (英語記事 Black box found at Air India crash site as families wait for answers)
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