寮生活の強豪天理大ラグビー部、大麻事件で広がる「疑心」 活動自粛もイメージダウン必至

天理大ラグビー部の寮(奈良県天理市)で大麻を所持したなどとして、麻薬取締法違反容疑で部員2人が逮捕され、波紋が広がっている。同部は全国大会で優勝経験のある強豪だが、当面の間は活動を自粛。大学は対策本部を立ち上げ、内部調査に乗り出した。ただ、逮捕された2人を含む部員は寮で共同生活を送っており、奈良県警は他の部員が事件に関与していないか慎重に捜査している。

「部員が逮捕された。活動は自粛しなければいけない」

11日夕、同大職員が寮の広間に部員約140人を集め、事件の経緯や今後の方針などを説明した。県警がこの日、大麻を譲り受けたとして部員の弘田士道容疑者(20)を、寮の自室で大麻を所持していたとして部員の島田郁容疑者(20)を、それぞれ逮捕したためだ。

端緒は、県警が別事件で捜査していた密売人の供述だった。県警によると、弘田容疑者は密売人と秘匿性が高い通信アプリ「テレグラム」でやりとりした上で、市内のドラッグストア駐車場で昨年12月、大麻約1グラムを4千円で譲り受けた疑いがある。

県警は弘田容疑者の部屋を捜索するとともに、寮で部員らに聞き取りを実施。島田容疑者が所持を認め、大麻も見つかった。島田容疑者の入手先は捜査中だが、2人とも「自分で吸うためだった」と容疑を認めているという。大学によると、寮では寮長を務める教職員の管理のもと、一室に部員2~3人が生活しており、両容疑者は別々の部屋だった。

大学は逮捕当日の11日、対策本部を発足。大学側の聞き取り調査でも他に関与を申告する部員はいなかった。今後、部員から個別に聞き取りを進めるとともに、相談窓口を設け薬物の危険性に関する啓発を強化。さらに、他の運動部なども調査をするか検討する。

強豪部での不祥事発覚により、部員だけではなく学生全体に動揺が広がる。ラグビー部は令和3年に決勝が行われた全国大学選手権で優勝経験もあるほどだが、活動自粛で現在開催されている関西春季トーナメントへの出場辞退も余儀なくされた。

3年の男子学生(21)は「大学のイメージダウンは大きくなりそうで、今後就職活動に影響が出ないか不安。内定が取り消されたりしないか心配している先輩もいる」とこぼした。

大学運動部、相次ぐ薬物問題

天理大ラグビー部のように、大学運動部で大麻を中心に薬物問題が後を絶たない。近年も、日本大のアメリカンフットボール部などで薬物事件が相次ぎ発覚。多くの舞台が寮や合宿所となっており、運動部特有の閉鎖的な集団生活が問題を助長するとの指摘もある。

日本大では令和2年1月にラグビー部員が大麻を所持していたとして逮捕。多くのJリーガーを輩出してきた近畿大サッカー部や、強豪の東海大硬式野球部でも同年、相次いで大麻使用問題が発覚した。さらに、日大アメフト部で5年夏に寮が家宅捜索されて以降、部員ら11人が大麻のような薬物を所持した疑いなどで逮捕、書類送検。同年には朝日大ラグビー部の合宿所も捜索され、大麻取締法違反容疑(当時)で部員3人が逮捕された。

特に大麻に絡み摘発される若者は増加傾向だ。警察庁によると、6年に大麻関連事件で摘発された約6千人のうち約55%が20代で、20歳未満と合わせると73・7%を占めた。大学生は229人、高校生も206人で、いずれも平成27年の20人台から大幅に増加。入手先は多くが交流サイト(SNS)経由だった。

事件の舞台は、寮や合宿所など複数人が生活をともにし、外部の目が届きにくいケースが多い。専門家からは「寮など身近な人がいる環境は(薬物が)広まりやすい」との指摘も出ている。

「捜査当局に全面協力」と天理大 大麻所持・譲り受け容疑でラグビー部員2人逮捕

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