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ボクシング新統括団体“性別検査”を義務化――ハリフ選手は大会参加せず 国際オリンピック委員会の対応は

2025年6月14日 11:20

■ボクシング新団体は「性別検査」導入 DSD選手についても方針

こうした中、五輪ボクシングを統括することになった新団体「ワールドボクシング」は5月30日、「すべてのボクサー」の安全を考慮して、全選手に性別検査を義務付ける方針を発表。PCR検査によって出生時の性別を確認する。検査は綿棒などで口の中や鼻腔をぬぐうだけで侵襲性は低く、服を脱ぐ必要もない。

性別は、「SRY遺伝子」の有無によって判断する。SRY遺伝子とは、身体が男性化するかどうかを決定する遺伝子で、通常、Y染色体上に存在する。“生まれながらの男性と確認された選手”と“身体を男性化するホルモンに反応するDSDの選手”は、男子種目への参加が求められる。

ハリフ選手は6月にオランダで行われる大会に出場する可能性があったが、「性別検査を受けない限り出場できない」ことが同選手にも通知された。主催者によると、ハリフ選手は出場を断念したという。アルジェリアボクシング連盟とハリフ選手にコメントを求めたが、回答はない。

女性スポーツへの参加ルールの厳格化を求める声は、元トップ選手らからもあがっていた。マラソンの元イギリス代表で北京五輪6位のマーラ・ヤマウチさんは、XYの核型を持つ DSDの選手をスポーツで“女性”として扱うことに強く反対してきた。

ヤマウチさんは「生まれつき血中濃度が高い“高アンドロゲン症”の女性でも、平均的な男性のテストステロン値をはるかに下回る。セメンヤ選手のテストステロン値が高いのは“特殊な女性”だからではなく、男性の身体を持っているため」と主張する。

五輪の陸上競技を統括する世界陸上連盟も今年2月、女子種目を“生物的女性”に限定する方針を発表した。簡単な性別スクリーニング検査を全選手に義務付け、やはりSRY遺伝子を持っていないことを確認し、補完的にテストステロン値の検査を行うという。また、すでに女性として競技しているDSDの選手に対しては、その信頼利益を守る措置も提案する。

■問われるIOCの対応

IOCはNNNの取材に対し、検査の導入について、出場資格は各国際連盟の責任であることを強調。「どのような方法であれば、性別検査が安全で公正、合法的に実施できるのか、詳しい内容を待っている」と回答した。

他方で、今年6月下旬に、初のIOC女性会長に就任するカースティー・コベントリー氏は「IOCは、女子スポーツを守る役割をより果たすべき」と主張。今後、ワーキンググループを設置して議論を深める方針を発表した。女性スポーツの保護と少数者の権利をどのように調和させるか――ボクシングでの動きは、今後の試金石となるかもしれない。

最終更新日:2025年6月14日 11:20
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