ボクシング新統括団体“性別検査”を義務化――ハリフ選手は大会参加せず 国際オリンピック委員会の対応は
また、女子種目への参加資格が問題になっているのは、さらにごく一部である。「5α-還元酵素欠損症」の人は外性器が通常の性分化を経ていないため、出生時には性別が分かりにくい。このため出生時に女児であると判定され、女性として育てられることがある。しかし、染色体の核型は男性のXY型で精巣を持っているため、思春期になると身体を“男性化”するテストステロンが通常の男性並みに分泌され、男性の筋肉が発達することがある。
ロンドン五輪とリオ五輪の陸上女子800メートルで金メダルを獲得した南アフリカのキャスター・セメンヤ氏もこのタイプに属しており、精巣を持つことを本人がBBCのインタビューで話している。
■“ルール不在”のIOC
パリ五輪ではIOCの無責任な態度が目立ち、議論は深まらなかった。IOCは「パスポート上での性別の確認で十分」とし、性別検査については「実施は不可能」「人権侵害にあたる」などの見方を繰り返し示した。
すでにIOCは2021年発表の指針で「ルールを作る立場にない」と宣言。多様な人々が共存する“インクルージョン”を重視し、男性の染色体を持つDSDの選手や、男性から女性に性別移行をしたトランスジェンダーの選手を「有利であると推定してはならない」という方針を示していた。
■各連盟でバラバラな規則
現在、各連盟が定めている女子種目への出場資格には、かなりのばらつきがある。水泳では“男性ホルモンの分泌が活発になる第二次性徴を経験していないこと”が求められ、テニスでは“少なくとも12か月連続してテストステロンの血中濃度を抑えること”が条件とされている。他方で、国際アメフト連盟は、自認する性別での出場を認めており、性別はパスポートで確認するとしている。
テストステロンの血中濃度の上限を定める場合も、団体によって上限値が2.5nmol/Lであったり、10nmol/Lのところもあったりと、まちまちである。
これらのルールは「男性から女性に移行したトランス女性」を念頭に置いていて、それとは異なるDSDの選手について、はっきりと定める団体は、さらにまれである。