ボクシング新統括団体“性別検査”を義務化――ハリフ選手は大会参加せず 国際オリンピック委員会の対応は
性別問題に揺れたパリ五輪のボクシング女子。過去の大会で失格となっていたエイマヌン・ハリフ選手(アルジェリア)とリン・イクテイ選手(台湾)が、ボクシング女子でそれぞれの階級を制覇した。オリンピックでボクシングを統括することになった新団体「ワールドボクシング」は5月末、全選手に性別検査を義務付ける方針を決定。6月の大会に参加する可能性のあったハリフ選手側にも、これを通知した。同選手は、この大会に出場しなかった。
■トランプ大統領の標的に…ロス五輪は
パリ五輪でのハリフ選手・リン選手の勝利は世界的な論争となった。アメリカの大統領に再選される前のドナルド・トランプ氏は、ハリフ選手を「男性ボクサー」と呼び、2028年に開催されるロサンゼルス五輪では「やらせない」と発言。そして再選後の今年2月にも「女性アスリートと偽って不正にアメリカに入国しようとする男性のビザ申請を、すべて拒否する」と強調。この発言について、ハリフ選手は、「自分には関係ない」「戦い続ける」と宣言し、ロスでも金メダルを目指す考えを示していた。
■女子種目の参加が問題に…「性分化疾患(DSD)」の選手とは
IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長は、この2選手について男性から女性へと性別を移行した「トランスジェンダーのケースではない」と説明。ハリフ選手も同様の発言をしている。
さらにフランスメディアの報道によると、ハリフ選手は過去に「5α-還元酵素欠損症」であると診断されていたという。染色体の核型は男性でも、外性器を作る男性ホルモンへの変換がうまくいかず、男性器の通常の発達が起きないという、まれな性分化疾患(DSD)の一つである。
DSDとは、性分化の過程で染色体、性腺、内性器や外性器が多くの人とは異なる型を取る疾患群である。「体の性の多様な発達」とも呼ばれる。その種類は停留精巣、尿道下裂、第二次性徴の欠如、性染色体の異常など、きわめて多様である。