広島文化学園大学元教授の著作に盗用認定/「一般公表、文科省への報告しない方針」に疑問(一部訂正)
広島文化学園大学元教授で広島大学名誉教授の小笠原道雄氏による著作に研究不正(盗用)があるとの調査結果が出されていたことがわかった。筆者の取材に対して同文化学園大が認めた。
問題になっている研究は、小笠原名誉教授が出版した3冊の単行本――『テオドール・リット研究』(東信堂・2024年)、『ウィルヘルム・ディルタイの教育学』(勁草書房・2022年)、『原典資料の解読によるフリードリヒ・フレーベルの研究』(福村出版・2021年)。これらの著作のうち『原典資料の・・・』について、広島文化学園大学は昨年(2024年)10月25日に「広島文化学園大学元教員に対する研究不正の告発に関する調査会」を設置、研究不正調査を実施した。そして今年3月7日付で、著作権侵害や「出典・引用に不適切・不十分な箇所」があり同大研究倫理規程が定める「盗用」に該当するとの内容からなる報告書をまとめ、学長に提出した。
小笠原氏は、広島大学教授を経て広島文化学園大学教授となり、2019年に退職した。2008年4月から2010年3月まで広島文化学園短期大学の学長を務めたこともある。
問題の著作はいずれも文化学園大を退職した後に刊行された。現在は、調査対象とならなかった他の2冊とともにすべて絶版・回収等の措置がとられている。
大学に見解をただすと「退職教員の退職後の著作物とはいえ、不正行為が認定されたことは誠に残念で、大学・短期大学における研究活動への信頼性を損なうものと考えます。再発防止を徹底します」との回答が返ってきた。しかし同時に、公表や文科省への報告は予定していないとも回答した。
文科省研究不正ガイドラインは、大学等の調査によって特定不正行為(盗用・捏造・改ざん)が認められた場合は、その結果を公表し、また文科省に報告するよう定めている。なぜ結果公表も文科省への報告もしないのか。ガイドライン違反ではないのか。
筆者のこの疑問について大学は次のように説明する。
「調査は文部科学省ガイドラインを踏まえて実施しておりましたが、文部科学省研究公正推進室、日本学術振興会研究公正室と確認や助言を参考にする過程で、文部科学省ガイドラインの対象とせず大学独自の研究活動不正行為調査とし、その旨、文部科学省及び日本学術振興会にも連絡いたしました。したがって、文部科学省ガイドラインの「特定は不正行為」の対応とは異なっています」
「文科省ガイドラインの対象」とせず大学独自の研究活動不正行為調査だから公表も報告もしなくてよいのだという。意味がよくわからない。
こんな勝手な解釈が通用するならガイドラインなどなきに等しい。取材を続け、あらたな事実がわかれば報告したい。
なお、文科省ガイドラインは特定不正行為を認定した場合の公表と報告について次のとおり定めている。
〈調査結果の公表〉
① 調査機関は、特定不正行為が行われたとの認定があった場合は、速やかに調査結果を公表する。
〈調査結果の通知及び報告〉
① 調査機関は、 調査結果(認定を含む。以下同じ。)を速やかに告発者及び被告発者(被告 発者以外で特定不正行為に関与したと認定された者を含む。以下同じ。)に通知する。被告発者が調査機関以外の機関に所属している場合は、その所属機関にも当該調査結果を通知する。
② 上記①に加えて、調査機関は、その事案に係る配分機関等及び文部科学省に当該調査結果を報告する ※ 7 。
(おわびと訂正)
広島文化学園大学によれば、調査対象としたのは3冊のうち1冊であるとのご指摘を受けました。おわびのうえ訂正いたしました。
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