今週土曜日からセイジ・オザワ・松本フェスティバル(OMF)のチケットが発売されますが、当ブログでは昨年からOMFの諸問題について言及してきましたが、今回はその総まとめ的な投稿になります。
✳︎今回の投稿がお好みでない方はスルーでお願いします。
【問題背景】
今年の9月1日(小澤征爾さんの90歳にあたる誕生日)にサイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)の東京公演の開催が2月に発表されていましたが、5/14の当ブログに書いたように「協賛金が集まらなかったため、東京公演を中止する」と松本市が発表しました↓。
これはあり得ない理由なので、この投稿は14万のアクセスがあり、かなりの関心と反響がありました。一方で、私とはレイヤーの異なる読者からは「ゴシップ記事に成り下がった」とのコメントを頂き、このコメントには遺憾に思いまして、かつての仕事魂が蘇ってきました。この問題について、この2週間、東京と長野の3人のジャーナリストに取材・リサーチをしてもらい、東京公演中止の真相に迫ることにしました。今回はゴシップではないので、論証的・論考的に書きたいと思います。また、この文章はロンドンで書いていますが、その理由は分かる方には分かると思います。
【松本市長会見】
SKOの東京公演中止を受けて、5/21の松本市長定例会見では、2名の記者からの質問がありました↓。
この記者会見では市政記者クラブの信濃毎日と市民タイムスの記者がSKO東京公演中止について質問をしています。松本市長の回答は「SKO代表の小澤征良さんからの東京公演の提案はあったが、実行委員会(市長が委員長)としてはフェスティバルは松本開催が基本で、東京公演には松本のOMFの資金を充てない」と発言しており、「協賛金目標2000万円に達しなかったので、東京公演を中止」することになったとしています。OMFの協賛企業は長野の企業だけでなく、東京などの企業から構成されており、この回答では「主催者が2月に東京公演開催発表をしていながら、協賛金が集まらないので、5月に東京公演中止」となる本質的な回答にはなっていないですし、「OMFの協賛金は松本公演のみに充てる」と言う市長の論理性は弱いです(例えば、札幌のPMFは東京公演を毎年実施しています)。SKOの東京公演はOMFの一貫として発表されており、ネットなどで9/1のSKO東京公演が開催発表されていました。この定例会見の記者も市長に質問していた際に、通常は協賛金を集めてから開催発表、あるいは協賛金が集まらない場合でも開催発表したら公演は実施するものと言うのは正しいです。これに対して市長は会見で「協賛金額の目標は2000万円でそれに達しなかった」とありますが、関係者によると1公演で2000万円の協賛金はベルリンやウィーンに並みに高いですし、松本から東京の旅費(東京に住んでいる団員が多いです)や楽器運搬費などをざっくり計算すると2000万円も必要はありません。また、チケット代金は松本のS席25000円で東京のS席は5000円ほど高く30000円の予定だったようで、この差額も追加費用に充てることができました。この松本市長の回答に何かを隠している怪しさを感じます。ここで、臥雲松本市長について深掘りしたいと思います。
【松本市長について】
臥雲市長は松本市生まれで、二浪して東大法学部に入学し、卒業後はNHKに入局し、政治畑のキャリアを積んで、2016年に松本市長選に立候補しますが、現職候補に大敗します↓。
高齢だった現職市長が出馬しないことになり、2020年の松本市長選は新人候補だけで、得票数にバラツキがありますが臥雲市長は当選します↓。
市長に就任してからは、様々な問題や不祥事を起きています。例えば、コロナ禍で飲酒店の営業時間短縮をお願いいる中で市幹部と長時間の忘年会を行い、市民からヤジが飛んだことがありました。松本のアルプス公園の耐震不足の隠蔽、新松本市立博物館をめぐる背任で刑事告訴を受けており、臥雲市長は被疑者として捜査を受けますが、その後、理由不明で不起訴になってます。2024年の市長選では「松本パルコ」の再開発に松本市が60億円の税金投入が争点となり、前の選挙より得票数を減らし、僅か400票差で再選しました↓。
松本パルコの再開発は民間に全面的に任せておけば良いと言うのがビジネスとしては筋の良い発想です。今では佐賀、宮崎、島根でも億ションが売れており、松本でも例えば、タワーマンションと一体化した再開発を民間に任せれば、税金投入の必要はありません。例えば、1.5億円のマンションを40戸売れば、市が投入しようとした60億円が入ってきます。この60億円を単体ビジネスとしては成立しない文化事業や教育・福祉事業に充てるべきでしょう。地方の自治体選挙で、スキャンダルなどが無ければ、通常は現職有利ですが、他の新人候補が相当の票を獲得した為に、ギリギリ当選したと言えるでしょう。このように現市長は市民から圧倒的な市民権を得ていないことは、前回の得票数から読み取れます。この背景としては4年間の市長の言動・行動が問題視されているからです。市職員の話によると、現市長はワンマン・パワハラ市長で、自分の気に食わない市職員には怒鳴ったり、威嚇したりするそうです。これは複数の市職員らの証言で、兵庫県知事を連想させる話ですが、このような風評はいろんなルートで広がるわけで、前回の選挙では投票率が低い中で(投票率44%)、総投票数の40%以下の得票数しか獲得できませんでした。つまり、選挙権のある人の17%しか信任を得ていないですし、松本市の人口23万人のうちの3.4万人(13%)からの得票だけで、自治体の組長になれるのは驚きます。パワハラを受けたことのある市の職員の家族や親戚は、現市長以外に投票したそうです。このような市長のもとで、職員がモチベーションを保ち、良い仕事ができるのでしょうか。例えば、最近発覚した松本マラソンの不正会計問題(赤字事業を黒字として不正報告した問題)は、松本市の上層部を含む腐敗が進んでいてこのような事案が発生することは想像に難くないです(この件は第三者調査委員会による2ヶ月後の結果待ちになっています)↓。
他にも同じ5月にカネ回りの問題が続出している松本市は、かなり腐った組織と思えます↓。
【松本市のガバナンス問題】
小澤征爾総監督が存命中は総監督の意向で全て決まっていましたが、小澤総監督が亡くなり、実行委員会の委員長である市長が独裁的に決めるようになってしまい、OMFの組織能力の劣化を当ブログでは昨年から指摘していましたが、市職員らのインタビューでこれが明らかになりました。また、市長への牽制機能としての松本市議会も無力に近いです。この議会はまともな国政政党議員(自民・立憲・国民がゼロ)がいないので、オワコン化していると思います↓。
つまり中央政府との強力なネットワークのない自治体で、市議会とメディアの機能不在だと、自治体としての行く末を危惧します。
【東京公演中止の本当の理由】
9月1日のSKOの東京公演は小澤征良さんら側からの提案で、財団も承認して、開催することが2月に発表されました。東京公演はマーラー「復活」ですので、松本市民合唱団らの移動費や宿泊費などでコストが高くなりますが、財団としてはこれまで蓄えた資金を充当してでも東京公演を実施しようと言う意向があり、2月に開催発表に至ったそうです。なぜなら、9/1が小澤征爾生誕90年の誕生日の特別な日で、フェスティバルとして初主催の東京公演をやりたかったわけです。財団としては赤字幅を減らすために、協賛企業を募集していましたが、東京公演中止のトリガーは国会で予算委員会が通過してから、4月中旬に文化庁からの助成金(約5000万円)が不採択の通達が松本側に入ってから状況が変わります。当ブログでは既に指摘していますが、文化庁の助成金で地方の芸術祭活性化関連の予算は無く、昨年も松本市は助成金が採択されていません。今のような従来型の音楽祭ですと、霞ヶ関の論理では今後、文化庁の助成金を松本市が受けるのは難しいです。この点、5/29の松本市長定例会見で、再度、SKOの東京公演中止について、記者から質問が出ていました↓。
この会見では文化庁の助成金について追及されていますが、松本市長が「文化庁の全体予算削減が理由」と回答していますがこれは詭弁で、文化庁の全体予算は昨年度から増えています。また、市長は松本のフェスティバルと東京公演は別物と考えて、SKOの東京公演は財団側が言い出したもので、実行委員会のトップとして市長は(東京は関係なく)OMFを守ることに専念しているように捉えることができ、財団と実行委員会の距離感と分断が明白になりました。この定例会見の回答で助成金について問われる市長はイライラしていることが映像で見て分かり、市長は水を飲んで、市の広報担当に次の質問にいくように合図を送っていることを把握できますので、都合の悪い質問だったのでしょう。本質的には松本市側が文化庁の予算の使い方を把握していないだけの話で、当初、財団側は赤字覚悟で東京公演を実施しようとしていましたが、文化庁の助成金が不採択による採算悪化と協賛金不足もあり、最終的には実行委員会のトップである松本市長の独断で東京公演が中止になったようです。つまり、元々、市長はSKOの東京公演には積極的ではなかったと、定例会見や関係者からの取材で把握することができます。ポイントとしては、協賛金などを集めて資金管理をしているOMFの「財団」と実行部隊の「実行委員会」の関係性のあり方は、5/21の市長定例会見で問題になっていて新聞記事になっていました。本来は「財団」は親会社のような存在で、その下で「実行委員会」が実行部隊として運営する組織体制であるのですが、今は、実行部隊の委員長である市長が全権に握っていると、ある関係者からの話がありました。以上の話から、この市長が実行委員会のトップである限り、OMFは良い方向にならないでしょう。9/1に出演予定のアーティスト側からすると、このような理由で公演4ヶ月前に開催中止になるのは驚くべきことであったと思います。
この市長は「松本ファーストと言うよりは、自分ファースト」な人だと我々の考察としては見受けられます。松本市長はこの7月26日にザルツブルク音楽祭を訪問しますが、その旅費は公費として約570万円に及びます。23万人の地方都市でこの予算が急に捻出できるところが不思議でありますが、この予算は6月の市の急な補正予算で計上されております。この予算があるなら、SKO東京公演実施のために使うべきではないでしょうか。ザルツブルク音楽祭総裁らはこの市長の音楽への不理解を見抜くでしょうし、意味のあるザルツブルク訪問となるのでしょうか。筆者は少なくともこの市長在任中にザルツブルクとの姉妹関係などを阻止することに全力を尽くしたいと思います。そもそも、川崎とザルツブルクの関係も合ってないですし、松本との連携も意味がないと考えております。
SKOの東京公演を実施することは、東京の財界・政界・大使館関係者や、SKOの良さを知らないクラシックファンに体感してもらうために良い機会なわけで、例えば札幌のPMFや別府アルゲリッチなどは東京公演を実施してますが、これは地方の音楽祭のPRの意義もあります。SKOを松本だけに閉じられたものにする発想は視野の狭いの政治家だと思います。記者会見での回答は結論ありきの論理で、吟味すると納得性の欠けるものであります。「必要のない人は、自然と消えていく」と言う名言がありますが、筆者としてはOMFの行末は、今のところ、どうでも良くなりましたので、そろそろこの辺で文章を終えたいと思います。NHKは昨年も今年もSKOのコンサートの収録をしないと聞いており、このフェスティバルの魅力が下がっていることも意味しております。音楽に理解の少ない現市長のままでは、OMFは衰退が進むことを昨年から指摘していましたが、今回のリサーチで来年以降もさらに酷い内容になると思います(まだ、来年の指揮者が正式に決まっていない点で終わってます)。出演するアーティストがこのような不穏な状況を既に気付いてますし、毎年、東京圏からの観客が半分を占めるOMFですが、内容面だけでなく、気候変動で台風が増えてますので、東京から松本に行くのはリスキーだと思います。OMFは昨年夏の台風が直撃してもチケットを返金してくれませんでしたが、東京の松竹や宝塚などの主催者は観客の安全第一で返金に応じていました。「台風来ても、松本に来てくれ」と言う発想の筋の悪さは実行委員会のていをなしていません。
今回の投稿内容は精査すると松本市政記者クラブの記者が知っているレベルの話が95%以上であり(=松本市政記者が記事にするかは別の話)、クローズドな情報は5%以下のものであるとインテリジェンスの世界では判断され、本稿ではそれを情報整理しただけであります。調べれば調べるほど松本市には不祥事などがあり、様々な証言やメールなどのエビデンスを基に、本来はA4にすると100ページほどの報告書を作成できるボリュームになり、市長のNHK時代の写真など他にも素材はありますので、この問題はいくらでも深掘りできますが、某週刊誌ではないので、顧問弁護士の監修を受けて、今回は事の本質を端的に文章化してみました。本日もお読み頂きありがとうございました。
4
冒頭には論考的とも書いてあるので、一部帰納法ではあるが、論理は通している。批難は簡単ではありますが、反証するならそれなりのエビデンスが必要です。
クラシック・ジャーニー
2025-06-13 10:34:05
返信する