性的同意やコンドームは「×」 性教育授業の資料に市教委から注文

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編集委員・大久保真紀 狩野浩平 山本知佳
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 「性的同意」という言葉に二重線が引かれ、その下には手書きで「自分と相手を守る距離感」と記されていた。

 予期せぬ妊娠に関する相談窓口を運営するNPO「キミノトナリ」(仙台市)代表の東田美香さん(56)は、自分のスライドを見てあぜんとした。

 社会福祉士の資格を持つ東田さんは、助産師、思春期保健相談士の男性と3人で、年に約20回、学校などで性教育の講演もしている。昨秋、仙台市立中学のPTAから、PTA行事の授業として3年生に性教育をしてほしいと依頼があった。保護者や先生と打ち合わせをし、スライドを準備した。

 ところが、講演の数日前。仙台市教育委員会が市立中学の校長を訪ね、学習指導要領に沿っていないとして、スライドに様々な注文をつけた。指導要領には、妊娠の経過は取り扱わないとする「はどめ規定」がある。

NPOが作った性教育講座のスライドの内容について細かく指摘する仙台市教育委員会の反応の背景には何があるのでしょうか。
このシリーズの次回の配信では、性教育についての全国の自治体アンケートの結果や取り組みについてお伝えします。

 「SEXのリスクとは?」な…

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この記事を書いた人
大久保真紀
編集委員
専門・関心分野
子ども虐待、性暴力、戦争と平和など
狩野浩平
東京社会部|教育担当
専門・関心分野
いじめ、不登校、子どもの権利、ニューロダイバーシティー、幼児教育、性暴力
  • commentatorHeader
    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2025年6月11日12時0分 投稿
    【視点】

    A-stories「子どもへの性暴力」連載第11部「教育編」は、子どもたちはどう感じているかという視点からも気づきを得られる内容になっている。この記事では<大切なのは目の前の子に必要な学びを考えること>と表現されている性教育を考える上で「子どもたちがいかにして性に対する考えを育ててゆくか」という観点が重要ではないだろうかという指摘は、インターネット上で性的な情報が氾濫し、それに関連する性的な人権侵害の問題が深刻化するよりはるか以前の1950年代の文献資料にも見いだせる。

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  • commentatorHeader
    パトリック・ハーラン
    (お笑い芸人・タレント)
    2025年6月11日18時29分 投稿
    【視点】

    日本に来てから不思議に思っているところだ。性的な内容の漫画やアニメ、映画も人気だし、様々な性的サービスも街で提供されている。友達の話を聞いても性行為に対する文化的なハードルも高くないようだった。なのに、学校で性教育が行われていなかった。  最近は少しずつ増えているようだが、今回の仙台市教委と同じように、抵抗がまだ強いようだ。  僕は幼いころから、何も特別な感じを出さないで、フラットに、全面的に話してほしいと思っている。部位の正式名称も何気なく、避妊具も使い方も普通に、性的同意の必要性も中絶の現実も隠さずに。先生や親が緊張感を醸すから子供も聞きたいことが聞けない、知りたいことが知らないままいることになる。もっとこわいことに、オンラインで間違った情報、不健全な考え方を先に身につくこともあるだろう。この時代だからこそ、家庭や学校で先に正しい知識と価値観を植え付けないと!

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