国民民主、露呈した統治不全 党内からも「SNSに翻弄された結果」
国民民主党の党内統治(ガバナンス)不全が、党内外から指摘されている。過去の言動への批判が出ていた山尾(本名菅野)志桜里元衆院議員の参院選比例区への擁立を決めながら、11日になって突如、公認を見送ったためだ。「擁立を押し切った玉木雄一郎代表の責任が問われる」などと、執行部の意思決定を疑問視する声が出ている。
突然の公認見送りを受け、山尾氏は12日、「大変残念です」とのコメントを発表。党について「その統治能力には深刻な疑問を抱いておりますので、今後は一線を画させて頂ければと思っております」とし、離党届を提出したことも明かした。
一方、玉木氏は同日、記者団に「こちらから能力を買って誘ったにもかかわらず、公認に至らなかったことについては率直におわびを申し上げたい」と謝罪。離党届を受理する考えを示した。
山尾氏「辞退会見であれば同席するとのお答えは大変残念」
山尾氏をめぐっては4月、一部で参院選への擁立方針が報道されると、過去の不倫疑惑などがSNS上で「炎上」。5月14日に須藤元気前参院議員らとともに山尾氏の公認内定が発表されると、両氏らの過去の言動に対する批判が、再びわき起こる事態となった。
同党は昨秋の衆院選で躍進して以降、好調な政党支持率を維持していたが、公認内定発表後の朝日新聞社の世論調査(5月17、18日)では、政党支持率が4月の12%から8%に減少。党内からは「風向きが変わった」との懸念も出ていた。
党には山尾氏らの擁立に対する疑問が多数寄せられ、山尾氏の記者会見を求める声もあった。山尾氏によれば、会見の早期開催の意向を伝えていたが、党の判断を待った結果、6月10日まで先延ばしになったという。
山尾氏はコメントで、この会見について「代表・幹事長の同席を希望しましたが、(立候補の)辞退会見であれば同席するとのお答えは大変残念でした」としている。
そして執行部は、会見翌日の11日に公認見送りを決定。山尾氏はこの件についても「24時間も経たないうちに『公認取消(とりけし)』という性急な結論を頂戴(ちょうだい)したことには正直驚きました」と記した。
立憲民主党のある幹部は「調子が良いときは声をかけ、批判を浴びれば会見しろと突き放し、その会見で『炎上』が収まらないと見るや、翌日に切るなんて」とあきれた。
国民民主は、玉木氏と榛葉賀津也幹事長のツートップがSNSを中心に発信力を高め、党勢拡大につなげてきた。だが、5月には失言した農林水産相に対し、玉木氏が会見で「辞めろとは言わない」と擁護した直後に、「即刻辞めるべきだ」と榛葉氏が批判。また、備蓄米を「エサ米」と発言したことに問題がないとの認識を示す玉木氏に対し、榛葉氏が不適切な発言だったとして先に謝罪するなど、最近はちぐはぐな対応が目立つ。
露呈しているガバナンス不全の象徴が、山尾氏への対応だとして、党関係者は嘆息する。「参院選前にこれほど迷走させた執行部の責任は大きい。党の運営そのものが問われる事態になっている。SNSの声に翻弄(ほんろう)された結果でしょう」
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