なぜ2024年8月にスーパーの棚からコメが消え、価格が高騰したのか #エキスパートトピ
2024年8月、スーパーの棚からコメが消えた。当時、農林水産省は品薄の理由を次のように説明している。
*2023年産コメの作況指数は平年並みでも高温・渇水の影響で「白未熟粒」が発生し、精米後に白米として残る割合が90.6%と過去10年で最低だった
*パンや麺と比べて値上がりがゆるやかでコメの需要が10年ぶりに増えた
*新米が出回る前の端境期で在庫が少なかった
*南海トラフ地震や台風に備えたまとめ買い
*お盆休みの影響で物流が滞った
そして、ここには挙げられていないが、2024年8月からコメの先物取引が始まっている。
ココがポイント
米の先物価格の推移について 価格の推移(各限月の終値)(p4)
出典:農林水産省 新事業・食品産業部「米の先物取引の現状について」 2025/6/3(火)
販売価格の推移 令和7年5月12日~5月18日 4,285円 令和6年5月20日~5月26日 2,127円(p1)
出典:農林水産省
堂島コメ平均の値動きが注目されるにつれ、これらの参加者が投機目的で買いを入れた結果、実需を超えた過熱的な価格上昇が発生
出典:Japan Luggage Express 2025/4/20(日)
実際、先物取引開始後、5日連続でストップ高(取引停止)になるほど価格が急上昇しました。
出典:米農家いち田|子どもたちの未来を守る米づくり 2025/3/1(土)
エキスパートの補足・見解
2024年8月の「令和の米騒動」では、スーパーのコメ販売数量が8月8日前後に対前年比で38.8%増加した。南海トラフ地震に備えるよう、8月8日に呼びかけがあったためだ。
その後、8月19〜25日にかけてもコメの販売数量が48.6%増加した。台風10号上陸前に買いだめが起きたためだ。
新型コロナ感染症の第一波でパニック買いが発生し、スーパーから食品が消えた。パニック買いしたのは消費者の2割ほどだったが、たった2割の消費行動で商品棚は空になった。対前年比40〜50%も販売数量が増えればコメの棚が空になるのも無理はない。
2024年8月、大阪・堂島取引所で「堂島コメ平均(米穀指数先物取引)」が始動、コメが投機対象になり、コメとは無関係だった異業種や投資家も参入できるようになった。この時期、商売上、米飯を必要とする大手コンビニなどの食品小売業や外食産業が先物取引でコメをおさえている。
そして2024年産の新米が出てくると、「令和の米騒動」のコメ不足により例年より早く消費され「先食い」が起こり、在庫が薄くなった。
商慣習によるコメや米飯の廃棄を今すぐ止めて、貴重なコメを無駄にしないこと。
食料安全保障に向けた課題である。