朝日新聞、ファクトチェック編集部を発足 態勢を強化 SNSも検証
朝日新聞は、編集局に「ファクトチェック編集部」を発足させる。YouTubeや「X」などのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上で、偽の情報や誤った情報が拡散される現状を踏まえ、事実関係を素早くチェックできる態勢を強化する。
朝日新聞は2016年10月から、政治家の発言などの真偽を検証する「ファクトチェック」を始めた。日本のメディアとしては、早い段階での取り組みだった。
都議選、参院選を機に強化
きっかけは、16年に米国に留学していた園田耕司記者(現政治部次長)の提案がきっかけだった。当時は米大統領選が行われており、虚実ないまぜのトランプ氏の発言に対し、米メディアがテレビ討論会のたびにファクトチェックの特集を組んでいた。現地で報道に触れていた園田記者は「この手法を日本の報道でも採り入れたい」と思い立ち、「首相の答弁 正確? 臨時国会中盤/『ファクトチェック』してみました」という記事を初めて配信・掲載した。
21年9月からは、判定基準をより明確にするため、認定NPO法人ファクトチェック・イニシアティブが作った9段階の基準に基づき判定するようにした。
これまでに約60件のファクトチェックを行ってきたが、今回、6月に東京都議会議員選挙、7月に参院議員選挙が行われるのを機に、さらに態勢を強化する。
チェック対象、社会的影響の大きさなど考慮
「ファクトチェック編集部」には、編集長を置き、この編集部を中心として編集局全体で取り組む。
チェックする対象は政党や政治家の発信・発言だけではなく、SNSなどネット上で拡散している言説や画像、動画などにも広げる。国内外でファクトチェックに取り組む団体が定める原則を参考に、新しい報道の指針も作った。指針では、朝日新聞綱領に基づき、「不偏不党」の立場を堅持し、すべての言説・情報に対して同じ基準を用いて、客観的な証拠に基づき、真実性・正確性を検証する、などとした。
チェックの対象は、社会的影響の大きさなどを考慮して選び、判断の根拠としたデータなどの情報源、取材の過程をできる限り開示する。
判定基準は、これまでの9段階から、8段階とし、画像や動画、音声などの真偽についてもチェックすることにした。
また、ファクトチェックに関する他メディアとの情報・ノウハウの共有、協力も可能な限り行っていく。