NHK技研R&D 2020年 3月号 研究所の動き

AIによるアナウンス

ラジオ気象情報番組の自動作成

当所では,地域放送局の番組制作を支援するために,人手を介さないラジオ気象情報番組の自動制作技術の研究開発を進めている。この技術では,コンピューターが,気象台などから配信される気象データから自動で番組の時間内に収まる読み原稿を生成し,音声合成技術を用いて,NHKのアナウンサーのように伝わりやすい音声で読み上げる。

NHKのアナウンサーは,伝える情報に優先順位を付けて,番組の時間内に情報が収まるように,話す内容を考える。このノウハウを,アナウンス室と連携してルール化することで,放送時間内に情報が収まるような原稿をコンピューターが自動的に生成する技術を開発した。

また,生成された原稿を視聴者に分かりやすく読み上げる技術にも,NHKのアナウンサーのノウハウを生かした。アナウンサーが原稿を読み上げる際には,どの部分を強調し,どこに間を置いて,どのようなイントネーションで伝えるべきか,についてルールが決められている。このノウハウを生かすために,実際にアナウンサーが原稿を読んだ音声を収録し,これをDNN(Deep Neural Network)*1 技術を用いてコンピューターに学習させることで,伝わりやすい音声の合成を実現した。

2019年3月に,甲府放送局のラジオ第1放送の気象情報番組で,このAIによるアナウンス技術を用いたトライアル放送を開始した。その後も,原稿生成技術や音声合成技術の改良を続け,11月からは新潟放送局でもトライアル放送を開始している。

今後は,AIによるアナウンス技術をより多くの地域や番組時間帯に適応させるために,システムの汎用性を向上させていく。

1図 AIによるアナウンスを活用した気象情報番組制作
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