『モンスターハンターワイルズ』プロデューサー・辻本良三×アートディレクター兼エグゼクティブ・ディレクター・藤岡 要インタビュー
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――プレイの難易度についてはどう設計されていますか。 藤岡 初めて遊ぶ方も少しずつアクションを覚えていけるような〝階段〟の設計は意識しています。 辻本 階段を上がった先にある達成感や気持ち良さを味わってほしいですね。 過去の作品を手に取っていただいたのに離れてしまった人たちのことは私たちもかなり分析しましたが、迷子になってしまったり、ふと手に取った武器が合わなかったりと「ゲームの面白さまでたどり着けない」ことが問題になっていました。 ですので、今回はゲーム序盤でプレイヤーにアンケートを取って、オススメの武器をサジェストする機能も取り入れています。 ――MHWsでは過去のシリーズに登場したモンスターの復活も話題になっていますね。 藤岡 登場モンスターは毎タイトルさまざまな目線で判断しています。人気があってもキャラクター性を崩してまでは出せないですし、新鮮さも気にしています。 今作は調査の手が及んでいない「禁足地」と呼ばれるエリアが舞台なので、序盤は初登場のモンスターとの出会いを楽しんでいただいて、合間合間で懐かしいモンスターが登場することで安心感や進化を感じてもらえるかな?と、ユーザーさんの新鮮さや体験の流れも考えて選んでいます。 ――復活モンスターにも背景があるのですね。 藤岡 はい。例えばシリーズの名物モンスター「イャンクック」が復活するのですが、このモンスターは元から群れで行動するという設定があり、群れが描けるようになった本作と相性が良いと考えての起用となりました。 最新機種ならではの制御ができることもあり、僕たちも「このモンスターを今の技術で作り直すとどうなるんだろう」と、ワクワクしながら作りましたね。
■こだわりは食事シーンにも ――開発中、大変だったことは? 辻本 始動から6年くらい開発を続けていますが、もう大変なことだらけですよ(笑)。そういえば、藤岡はずっと「ナン」を作っていたよね。 ――「ナン」? カレーとかと一緒に食べる、あのパンのことですか? 辻本 それです。「ナン」とそれを食べるシーンのグラフィックにめちゃくちゃこだわっていたんです(笑)。 藤岡 「シンプルな食材をおいしく見せたい」と考え、平焼きのパンに溶かしたチーズをのせて食べるシーンを、それこそ2、3年ぐらいずっと試行錯誤しながら作っていました。 CGで料理をおいしそうに見せるのって実はかなり難しいんです。しかもキャラクターが食べるシーン込みで、動いている形でそう見せるのは相当にハードルが高い。 でも、デザイナーはものすごく努力してくれて、僕も〝食べる演技〟をたくさん研究しました。そのかいあって、納得できる出来になったと思います。 辻本 チーズの垂れ方から、ちぎったパンの外はパリッと、中はモチッとした感じまで、本当に細かいところにこだわっていたよね。開発初期の試作版から、めっちゃ長い食事シーンが入っていたし(笑)。 ――モンハンは「こんがり肉」に代表されるように、プレイヤーの食欲を誘うような食の描写が秀逸でしたが、MHWsでその進化系が見られるわけですね。では、最後に、MHWsを「こう遊んでほしい」というのがあれば教えてください。 藤岡 今回はアクションやグラフィックだけでなく、これまでのシリーズ以上に「ストーリー」に力を入れています。エンディングまで遊んでほしいですね。 その後は皆でワイワイ遊ぶのもよし、ひとりでじっくりと高難易度のモンスターを攻略するのもよし、ずっと釣りをするのでもよし、自由に遊んでいただけたらと思います。 辻本 自分でテストプレイしていても、やめ時がわからない仕上がりになりました。久々にシリーズをプレイするという方にも「今のモンハンってこんなに変わったんだ!」と、ゲームの進化を味わっていただければうれしいです。 ●『モンスターハンターワイルズ』 《開発・販売》カプコン 《対応プラットフォーム》○PlayStation 5 ○Xbox Series X/S ○Steam(PC) INTRODUCTION 2024年に20周年を迎えた『モンスターハンター』シリーズの最新作。ハンターたちの支援組織であるギルドは未踏の領域「禁足地」との境界でひとりの少年「ナタ」を保護した。謎のモンスターの襲撃から単身生き延びた彼の言葉を手がかりにギルドは調査隊を結成。「白の孤影」と呼ばれるモンスターの調査と、襲撃された守人一族の救助を任命されたハンターたち「調査隊」の旅が始まる。 ●辻本良三(つじもと・りょうぞう) 1996年、カプコン入社。2004年、『モンスターハンター』1作目ではネットワークのプランニングや運営などを担当し、2007年の『モンスターハンターポータブル 2nd』以降は一貫して同シリーズのプロデューサーを務める。 ●藤岡 要(ふじおか・かなめ) 1993年、カプコン入社。アーケード格闘ゲームのグラフィックデザイナーを経て、『モンスターハンター』シリーズのディレクターに。最新作ではアートディレクター兼エグゼクティブ・ディレクターを担当。 取材・文/ハル飯田 撮影/榊 智朗 ©CAPCOM