東大、京大、科博が米豪の先住民遺骨20体を初返還

東京大学=東京都文京区で2021年6月15日、武市公孝撮影 拡大
東京大学=東京都文京区で2021年6月15日、武市公孝撮影

 東京大と京都大、国立科学博物館(科博)は11日、学術研究の目的で収集・保管してきたオーストラリア先住民の遺骨10体を豪側に返還した。昨年11月には東大が米ハワイの先住民遺骨10体を返還していたことも新たに判明。日本の教育研究機関から海外への初の返還例とみられる。

 19世紀以降、主に人類の進化や人種・民族による違いを探る名目で世界各地の先住民の遺骨や埋葬品が欧米の研究者を中心に収集された。だが、遺族の同意を得ない収奪や盗掘も相次ぎ、近年はその反省と和解を目指して国際的に返還が進んでいる。日本にも数多く存在しており、返還の動きが広がる可能性がある。

 11日に東京都港区の豪大使館で非公開の返還式典があり、来歴が判明している遺骨の子孫にあたる三つの先住民グループの代表らが参加。東大から7体、京大から2体、科博から1体が返された。遺骨は約1世紀ぶりに豪州へ戻った後、各民族が多く暮らす地域や国立施設などで再び弔われるという。

先住民遺骨返還先と時期 拡大
先住民遺骨返還先と時期

 取材によると、10体のうち東大の6体は旧東京帝国大医科大(現東大医学部)の元教授で日本の解剖学と人類学の礎を築いた小金井良精(よしきよ)氏(1859~1944年)が、1887~1936年に豪研究者らとの交換や寄贈で入手したものとみられる。科博の1体は40年ごろに寄贈された記録があるという。

 2016年に京都であった国際学会で、小金井氏が交換に送ったアイヌ民族の遺骨が豪州の博物館にあることが判明。豪側は17年に返す意向を表明し、23年に4体を返還した。一方、日本側の動きは鈍く、豪先住民遺骨の調査や返還交渉は進まなかった。23年に豪政府が正式に返還を要請したことを機に両政府間で交渉が本格化した。

 遺骨を受け取る豪先住民ヤウルの長老、ニール・マッケンジーさんは「祖先の遺骨に出合い、重く悲しい気持ちと、故郷に連れて帰ることができる幸せに包まれている。先住民が虐げられてきた時代が長かったが、遺骨の持ち去りから世代を重ねて、日豪が協力して返還を進めたことに感謝する」と話した。

 一方、東大は昨年11月、米ハワイの先住民グループとの直接交渉を経て、遺骨10体を返還した。返還式典は開かれず、先住民側からは、遺骨の尊厳軽視や過去の経緯への反省のなさを指摘する声が出ている。【三股智子】

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