第15話 その勇者変態につき…
…………………………………へっ?
まさに今、目の前で包丁を床に置いて土下座をしているその女性。
あまりの展開に状況がまったく飲み込めず、俺は素っ頓狂な声を漏らし思考がフリーズした。
そんな俺に向かって彼女はさらに言葉を紡ぐ。
「さあ!この包丁でザクッとひとおもいにやってください!覚悟は出来ております!」
マジでなに言ってるのこの人?えっ?正気?ヤバい薬でもやってる?
そんな俺の混乱をよそに、彼女はふいに片手で髪をかき上げ白いうなじをさらけ出す。
そして、まるで覚悟を見せるようにもう一度深々と頭を地に伏せた。
「これでいかがですか!?狙いやすいでしょう!」
「ちょちょちょ!!何してるんですか!?やめてください!そんな事したら俺捕まっちゃいますし、そんな事望んでません!顔上げて!!ね?一旦話し合いましょ?ねっ?お願いですから!!」
何がどうなってるのか、もう訳がわからない。
しかし、今のこの状況じゃ冷静に話すことなんて無理だろう。
俺は混乱を振り払うように彼女に手を伸ばし、半ば強引にその体を引き起こす。
すると、涙に濡れた目であの凜とした美貌が俺をまっすぐに見つめていた。
「うっ……ううっ……なぜですか!?なぜ私を殺してくれないのですか!?私は前世で抵抗すらしないあなたを無残に殺しました……なのになぜっ!?なぜ私に償わせてくれないんですかっ!?私はそのためにここへ来たのです!!」
「いやっ……だからそれは前世の話であって、俺も恨んでませんし……そもそもこの世界では人殺しは犯罪でしょ!俺を犯罪者にするつもりですか!?」
その一言に彼女の瞳がかすかに揺れ、そして力が抜けたようにその場に崩れ落ちた。
「ああ……私はなんて事を……よかれと思ってやっていたことがまさか……またあなたを陥れるようなことだなんて……くっ……無念っ……」
いや、無念!じゃないのよ……どうやったらよかれと思って首差し出しにくるのよ?マジで大丈夫この人?
緊張感なんてどこへやら。完全に呆れてしまった俺を前に女性はしばらく黙ったまま固まり、そして意を決したように口を開いた。
「ならば……せめて……せめてもの償いとして……」
突然、彼女の頬が紅潮する。
次の瞬間、彼女は静かにスーツを脱ぎその手は迷いなくブラウスのボタンへと伸びていた。
「ちょちょ!?なになに!?今度はなんですか!?なに急に脱いでっ!?やめてください!」
制止の声などまるで聞こえていないかのように、彼女は次の瞬間にはブラウスを脱ぎ捨てていた。
そしてその白いレースの繊細なブラジャーさえもまるで魔法のような早業でホックを外し宙に投げ捨てた。
「うわっ!?マジでちょっと待って!!いけません!!うわっ!?おおおっ、おっぱい見えてますって!!」
急に俺の視界に姿を現した形の良いほどよい大きさのおっぱいが目に焼きついたその瞬間、鋭く真剣な視線が俺に突き刺さり彼女は強い意志を宿した声で言い放つ。
「せめて私の
再びその場に土下座する彼女の姿に、場の空気は一気に凍りついた。
眼前で圧倒的透明感を誇る銀髪美女が急に脱ぎだして、ブラジャー1枚どころかおっぱいまでさらしたあげくに俺の性奴隷にしてくれと土下座をされる。
なんなのこれ?俺の人生どうなってるの?えっ?これ夢?こういうプレイ?俺そういう趣味ないよ?………でも凄い美人だなぁこの人……優カワ系?おっぱいもきれぇ〜…真皇とは違ったエロさがあるなぁ……はははっ……
思考が追いつかず勝手に現実逃避さえ始めた俺のもとへ、今度は彼女は四つん這いで近づいてくる。
そしておもむろに両手が伸びてきて、俺のパンツにまかれたベルトに触れた瞬間、ようやく現実を認識した。
はっ!?何してんだ俺!?ヤバい、これは本当にまずい……別の意味でヤられる!?
「まずは手始めに私がお口でお清めさせていただきます!初めてで拙いかもしれませんが、精一杯ご奉仕いたします!どうかパンツをお脱ぎ下さい!ハァハァ♡」
「ちょ、ちょい!!やめて下さい!脱がさないで!いやっ!エッチ!!」
必死に抵抗を試みるが彼女もまるで譲る気がない。勢いがパない。マジで。
その時、不意に違和感が走る。
目の前の彼女の顔は苦悶どころか嬉々とした笑みに染まっていた。
美しい顔は淫らに歪み、肩は上下し、息遣いは明らかに荒い……
先ほどまでの聖母のような雰囲気は完全に消え去り、ただのエロカワ美人なお姉さんに成り下がっている。
まてまて……これ、完全にノリノリじゃねえか!?この人もしかして!?変★態!?
「ハァハァ♡そんな恥ずかしがらないで下さいご主人様♡どうか私の誠意を受け入れてください♡」
「ちょっ馬鹿!!そんなとこ触らないで!!ダメダメ!!」
「ああっ♡もっと罵って下さい!この卑しい奴隷を!♡」
「ご主人様じゃないから!!ちょっと!!お願い!!やめてぇぇぇぇ!!いやぁぁぁぁぁ!!」
店内に響き渡る俺の絶叫。
その一声と共に、幸せでいて悪夢のような日々が始まりを告げた——
次回:始まる面接、勇者は腹をくくってきたらしい。
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奥付
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