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【解説】トランプ大統領 州兵を派遣 ロサンゼルスで何が

アメリカ西部ロサンゼルスで移民の摘発をめぐる抗議デモの一部が暴徒化したことを受け、トランプ大統領が派遣を指示した州兵が現地に配置されました。

ロサンゼルスでいったい何が起きているのでしょうか。望月麻美キャスターの解説です。

(「キャッチ!世界のトップニュース」で2025年6月9日に放送した内容です)

 

・なぜ州兵を派遣する事態に

発端は、6月6日の金曜日。ロサンゼルスのダウンタウンにある「ファッション・ディストリクト」と呼ばれる地区で起きました。日本人観光客にもなじみの深いドジャースタジアムやリトル・トーキョーは車で10分ほどの距離です。

ここで、政府の移民税関捜査局の捜査官たちが、衣類品の倉庫などに捜索に入り、滞在資格のない移民を摘発しました。

 

これに抗議した住民たちの一部が物を投げるなどし、移民当局は催涙弾などで威嚇します。

 

翌日の6月7日土曜日には、ダウンタウンから南におよそ30キロ離れた地域でも、移民当局と住民の間で衝突が起き、緊迫した状況が続きます。

 

そして6月7日夜、トランプ大統領は2,000人の州兵を派遣する文書に署名。8日の日曜日、州兵の一部がダウンタウンに配置されました。その後も新たな抗議デモが起き、衝突が続いています。

 

・州兵派遣の対応に民主党から批判の声

市民による抗議デモへの対応にトランプ大統領が州兵の派遣を指示したことに、民主党からは批判の声が上がっています。

 

アメリカの州兵は、通常は州知事の権限で動員します。一方、緊急時には大統領の指示のもとで動員することができるとする連邦法の規定があり、その条件を

・アメリカが外国から侵略されたか、侵略されるおそれがある場合

・連邦政府に対する反乱や、反乱のおそれがある場合

・通常の軍の要員では法の執行が困難な場合

と定めています。

トランプ大統領の指示は「反乱」あるいは「反乱のおそれ」を法的な根拠にした可能性があります。

 

一方、カリフォルニア州のニューサム知事は州兵の動員を要請していないばかりか、反対しています。

知事はXに、「意図的にあおり、緊張をエスカレートさせる。間違っており、市民の信頼を損なう」と投稿して批判しました。

 

また、サンダース上院議員も「トランプ大統領は急速にアメリカを権威主義に向かわせている」と強い口調で非難しました。

 

・大統領の州兵派遣 前例は

「ニューヨーク・タイムズ」などは、大統領が知事の要請なしに州兵を動員するのは、1965年以来だと伝えています。

 

当時のジョンソン大統領は、南部アラバマ州で行われた人種差別の撤廃を求める市民のデモを、警察による弾圧から守るために州兵を派遣しました。民主党の一部からは州兵の動員とともに、トランプ政権が推し進める不法移民対策にも批判の声が高まっています。

 

ニュースサイトの「アクシオス」は5月、トランプ政権の幹部が1日に3,000人を拘束するよう目標を掲げて不法移民対策を加速させていると報じていました。

 

しかしアメリカ社会では、滞在資格を持たない移民がサービス業や農業などを中心に雇われ、アメリカ経済を支えてきたのが現実です。こうした仕事は“人々がつきたがらない仕事”とも言われ、滞在資格を持たない移民の存在の恩恵に社会があずかってきたという側面もあるのです。

 

抗議デモの発端とトランプ政権の対応は、アメリカで失われていく寛容さと分断の深さをあらわにしています。

 

■関連記事(2025年6月6日)

 

■NHKプラスでは、放送後から1週間ご視聴いただけます。

 

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■キャッチ!世界のトップニュース

放送[総合]毎週月曜~金曜 午前10時5分

※時間は変更の可能性があります。