●「新しいタイプの横綱」
北國新聞社は大相撲・大の里(本名・中村泰輝(だいき)、津幡町出身、二所ノ関部屋)の横綱昇進を受けて、解説者で元小結の舞の海秀平さんと、漫画家で好角家のやくみつるさんの対談を企画した。無類の強さを見せる若武者を、舞の海さんはハワイ出身の元横綱を引き合いに「スピードのある武蔵丸」と評し、やくさんは「北の湖と貴乃花を足したようだ」と2人の大横綱を挙げてたたえた。
対談は5月29日に北國新聞社東京支社で行われた。
2人は大の里について、過去の横綱と取り口や特徴が似ていない「新しいタイプ」と指摘。舞の海さんは「本当に似ている横綱はいない。そういう意味では、すでに『唯一無二』だ」とした。
その上で「あえて言うならスピードのある武蔵丸」と表現。身長が大の里と同じ192センチだった武蔵丸は、体重が200キロを超す巨体だったが、バランスのとれた動きで相手を圧倒した姿が重なるという。
やくさんも大の里のスピードを評価した上で、決して崩れない足腰の強さも魅力だと指摘。「憎らしいほど強い」と言われた昭和の大横綱・北の湖と、勝ち星の半数以上が寄り切りだった平成の大横綱・貴乃花を引き合いに「北の湖プラス貴乃花というと分かりやすい。北の湖の勢いと速さ、貴乃花の足腰」と見立てた。
●「1強時代」を予見
もう一人の横綱の豊昇龍が好敵手となり、2人を中心に優勝争いが繰り広げられる「大豊時代」の到来を予想する向きが一部にあることについて、やくさんは「豊昇龍は対立軸になるかもしれないけど、両雄相並ぶという状況にはならないだろう」と否定した。それほど大の里の強さは際立っているとし、「大鵬に対する佐田の山(横綱)みたいになるかもしれないけど、このままだと大の里の時代になる」と述べ、1強時代を予見した。
横綱昇進を決定づけた夏場所について舞の海さんは、千秋楽以外は立ち合いで腰を落として当たり、強さが規格外だったとし、「190センチ以上あってあんな低い相撲取られたら、たまったもんじゃない」と脱帽した様子。やくさんは伯桜鵬戦などで見せたはたき込みについても言及し、「全然、危ないはたきじゃない」とした。
「大の里がどんな横綱になってほしいか」との問いに対しては、舞の海さんは「真面目な北の富士」、やくさんは「誰からも尊敬される横綱」と述べ、さらなる高みを求めた。
●アクタス7月号連載拡大版で詳報
6月20日発売のアクタス7月号では、舞の海さんの隔月連載「うっちゃり御免」の拡大版として、2人の対談内容を詳しく伝える。
北國新聞社は6月下旬、報道写真集「第75代横綱大の里」を発売する。書店やインターネット、北國新聞販売所で予約を受け付けている。