「悟りたいなら股を開け」OM教祖が仕掛けた“性奴隷ビジネス”の全貌

OneTasteの元CEOニコール・デイドーン（Photo by JEENAH MOON/AP）

女性の性的エンパワーメントをうたい、「オーガズミック・メディテーション（OM）」を広めていたウェルネス系スタートアップの幹部2名が、従業員に対する心理的虐待、監視、洗脳、脅迫を通じて強制労働をさせていたとして、6月10日（月）、有罪判決を受けた。 【写真】「性奴隷」にされた自己啓発団体の女性メンバーたち サンフランシスコ発の企業OneTasteの元CEOニコール・デイドーンと、元営業責任者レイチェル・チャーウィッツは、ニューヨーク・ブルックリンの連邦裁判所で行われた5週間にわたる裁判の末、陪審員によって有罪と判断された。 検察側によれば、被害者たちは長時間労働に従事し、極めて屈辱的な性的行為や手作業を無報酬、もしくはほとんど無報酬で強いられていたという。被害者らは「そうしなければ、自分の生活やコミュニティ、精神的支柱、そしてアイデンティティをすべて失う」と信じ込まされていた。証人3名は、デイドーンの交際相手でOneTasteの投資家リース・ジョーンズの“ハンドラー（管理役）”になるよう強要されたと証言。彼の家で生活し、彼の指示に従って屈辱的な性行為を行い、食事の準備などの家事もさせられていたという。 弁護側の反論と声明 弁護側は「身体的な暴力や拘束はなかった」とし、OneTasteの“スピリチュアルな教え”は合衆国憲法修正第一条（信教の自由）により保護されるべきだと主張。また、デイドーンとチャーウィッツが従業員を「洗脳した」とする見方は、彼女たちの宗教的自由を侵害するものだと反論した。 弁護人のジェニファー・ボンジーン、セリア・コーエン、マイケル・ロボッティはRolling Stoneに対し声明を出し、「今日の評決には深く失望しており、依然として無罪を主張します。控訴審で闘いを続けていきます」と述べたうえで、「この訴訟には数多くの新たで複雑な法的論点が含まれており、第2巡回控訴裁判所での見直しが必要です」とコメント。「私たちは依頼人であるニコールとレイチェルの強さに勇気をもらっています」とも述べた。 今後の見通しと検察のコメント デイドーンとチャーウィッツはそれぞれ最長20年の懲役刑に直面しており、量刑言い渡しは9月下旬に予定されている。 東ニューヨーク地区連邦検事代理のジョセフ・ノセラ・ジュニアは、「陪審員の評決により、デイドーンとチャーウィッツの本性――性的エンパワーメントとウェルネスの名の下に、脆弱な人々を操り、労働と奉仕をさせていた詐欺師であること――が明らかになった」と声明を発表。「トラウマを抱えながらも証言に立ってくれた被害者たちに感謝します。この判決が被害者にとっての一つの区切りとなること、そして今後同様の手口を企てる者への警鐘となることを願っています」と語った。 FBIニューヨーク支局の副局長クリストファー・G・ライアも声明を発表し、「虚偽、操作、虐待によって労働を強いることは犯罪であるという明確なメッセージを、この判決が発してくれることを願います」と述べた。 OneTasteの活動と告発の経緯 デイドーンは2004年にOneTasteを設立し、当初はヨガや仏教の教えに影響を受けたと語っていた。月曜日、裁判所前で支援者に対し「私が掲げたのはすべてスピリチュアルな目的――すべての人々、そして女性の解放です。それはどこにいても実践していく」と語ったという（『ニューヨーク・タイムズ』報道）。 OneTasteは2010年代半ばにはある程度の注目を集め、ニューヨーク、ロサンゼルス、デンバー、オースティン、ロンドンなどで活動を展開。「オーガズミック・メディテーション（OM）」と呼ばれるワークショップを開講しており、女性器への長時間の愛撫を通じて新たな親密さや悟りを得るという実践だった。同社は講座、コーチング、OMイベント、さらには他の性的実践を含むコースなどを有料で提供して収益を得ていたと、検察は述べている。 デイドーンはウェルネス分野で一時期カリスマ的存在となり、TEDトークで注目を浴び、グウィネス・パルトローやクロエ・カーダシアンらの支持も集めていた。しかしその後、OneTasteは複数の暴露報道やドキュメンタリーで従業員や参加者を搾取していたと告発される。 2018年に『ブルームバーグ・ビジネスウィーク』が発表した調査報道では、OneTasteはシリコンバレーの資本を背景にした華やかなスタートアップから、「営利目的のセックスカルト」に変貌したと指摘。社内では「奉仕心」を示すために無償労働や性行為が推奨され、上司が従業員に顧客や互いに対する性行為やOMを命じることもあったという。 裁判中、その他の証人たちも、OneTasteの潜在的な顧客や投資家との性的行為をデイドーンとチャーウィッツによって強要されたと証言。その強要には「解雇」「降格」「孤立」「経済的・精神的破滅」などの脅しが含まれていた。 2017年、デイドーンはOneTasteを1,200万ドルで売却。現在、かつての公式サイト「OneTaste.us」は「The Eros Platform」へとリダイレクトされており、現在もデイドーンやチャーウィッツ、OMの実践と関係があるとする内容が掲載されている。同プラットフォームの「Eros Coaching Collective」は、3回のOMトレーニングパッケージを525ドルで提供している。