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学術会議任命拒否

日本学術会議が推薦した新会員候補6人を菅首相(当時)が任命しませんでした。異例の事態の背景や問題点を追います。

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学術会議法案が成立へ 26年「特殊法人」に 参院内閣委で可決

日本学術会議法案が賛成多数で可決した参院内閣委員会=国会内で2025年6月10日午後0時47分、平田明浩撮影 拡大
日本学術会議法案が賛成多数で可決した参院内閣委員会=国会内で2025年6月10日午後0時47分、平田明浩撮影

 参院内閣委員会は10日、日本学術会議を現行の「国の特別機関」から特殊法人に移行させる法案を賛成多数で可決した。11日に開かれる参院本会議で可決・成立する見通し。学術会議は「政府からの独立性の確保が懸念される」などとして法案の修正を求め、立憲民主党が修正案を提出したが、否決された。新組織は2026年10月に発足する。

 学術会議の組織見直しは、20年に菅義偉首相(当時)が会員候補者6人の任命を拒否したことをきっかけに、自民党が議論を本格化させていた。科学者が戦争に動員された反省から1949年に発足し、政府から独立した立場で政策提言してきた学術会議が、大きな転換点を迎えることになる。

学術会議「法人化」のポイント 拡大
学術会議「法人化」のポイント

 採決では自民、公明党、日本維新の会が賛成し、立憲、国民民主、れいわ新選組、共産の各党が反対した。

 学術会議の会員はこれまで、現会員が選んだ次期候補を首相が任命してきたが、法人化によって学術会議の選任に変わる。一方で新体制発足時は、首相が決めた有識者2人と現会長が協議して選んだ委員10~20人が会員候補者を選ぶ。以降も継続的に、会員選考に外部有識者が意見を述べる。

 活動については監事を新設して監査するほか、会議に自己点検評価書を作らせ、内閣府に置く評価委員会が審議し、意見を述べる。監事や評価委員は首相が任命する。

日本学術会議=東京都港区で、中村好見撮影 拡大
日本学術会議=東京都港区で、中村好見撮影

 学術会議は、こうした首相の間接的な関与が法案に見られることなどから、将来的な政府介入を懸念してきた。法人化自体には明確に反対しなかったが、4月には法案の修正を求めることを決議した。

 立憲はこれを受け6月3日、首相が関与する規定を削除するなどし、独立性を明記した修正法案を提出していた。修正法案には立憲と国民民主だけが賛成した。

 年間約10億円が国費から措置されてきた財源は、引き続き「必要と認める金額を補助する」としている。政府は国費に加え、寄付などの外部資金も得られるようになると強調するが、安定的な財源が得られるかは不透明だ。

 坂井学・内閣府特命担当相はこの日の審議で「法案は学術会議の独立性を高めるもので、外部からの介入を強めるものではない。政府の気に入らない学者を排除しようと思ってもできない法案だ」と改めて強調した。自民や立憲など与野党5党は、政府に学術会議の独立性や自律性を尊重することなどを求める付帯決議を内閣委に共同提出し、採択した。

 ただ、政府は今も任命拒否の「根拠」となった法解釈を整理した文書の根幹部分を開示していない。東京地裁は5月16日、この文書の全面開示を命じる判決を出した。立憲や共産は「文書の開示なくして法案の採決はあり得ない」と反発していたが、与党側は採決に踏み切った。

 また学術会議の現会員45人が10日、会員との早急な意見交換を求める要望書を坂井特命担当相に提出したが、学術会議として取りまとめたものでなかったため「正式な意向はいただいていない」として取り合わなかった。【信田真由美】

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