王子が悪役令嬢を魔術の使用記録で追い詰める話
「メイリーン。貴様がメルナをいじめているのは分かっている。大人しく白状しろ」
王子が険しい顔つきでメイリーンを見る。
「あたくしはいじめなんて野蛮な事いたしませんわ。王子の勘違いではなくて?」
「しらばっくれるな。……ガルド、例の物を」
「はい」
王子の後ろから、王子の友人であるガルドと呼ばれた青年が何かをもってやってきた。
「それは……?」
「魔術の使用記録です。メイリーンさんはご存じないかもしれませんが、ここには今まで学園で使われた魔法と使用者が書かれています。犯罪などの犯人特定のために用意された物です」
「な、何ですって!?」
「これを見ればどの日に誰がどんな魔法を使ったのかが一目瞭然で分かります。さっそく読んでみましょう」
「や、やめなさい! そんなの読んでも意味なんてないわ!」
「黙れメイリーン。これは命令だ」
取り乱すメイリーンに、王子が命令をする。すると、メイリーンは悔しそうな顔をしながら黙り込む。
「……まず1か月前の記録です。この日使われたのは、『キエール』と『ウォーター』と『ムナゲノバース』です。ウォーターとムナゲノバースの使用者は一般の生徒でしたが、キエールの使用者欄にはメイリーンさんの名前が書かれていました」
「……!」
「そしてこの日は、メルナさんの鞄が消えると言う事案が発生しました。……メイリーンさん、あなた、キエールで鞄を消しましたね?」
「し、知らないわ、メルナのカバンなんて!」
「さらにその次の日です。この日使われたのは、『ゴースト』『シールド』『ムナゲノバース』です。ゴーストの使用者欄にあなたの名前が書かれています。そしてこの日メルナさんがお化けを見たと証言しています。これもあなたがメルナさんを怖がらせるためにやった事ですね?」
「ち、違う。ただ個人的にお化けの研究を」
「更にその次の日。この日は『ファイア』『ステータス』『ムナゲノバース』が使われました。この日はメルナさんの周囲でボヤ騒ぎがありました。これもあなたがファイアを使ってやった事でしょう?」
「くっ……」
「……なぁ。さっきから『ムナゲノバース』が毎日使われているけど、使ってるの誰なんだよ……」
ガルドが追求してる途中で、王子がツッコミを入れる。
「さぁ。メイリーンさん以外の使用者は今回の事件と無関係ですので、それは言えません。プライバシーがありますからね」
「そ、そうか」
「話を戻しましょう。その次の日に使われたのは『ウォーター』『メイクアップ』『フロガミエール』です。この日はメルナさんが頭上から何者かに水をかけられました。メイリーンさん、これも貴方がウォーターを……」
「おいちょっと待て、『フロガミエール』ってなんだ!? 風呂が見えるのか!? 覗きじゃねーか、そっちも調査しろ!」
「さぁ。魔法の効果は魔法名と違う場合もありますからね」
「そ、そうなのか? ならいいが」
「そしてさらにその次の日。『スパーク』と『王子ノ鞄ヌスーム』が使われました。これもスパークの使用者欄に……」
「おいこら、今はっきりと私の鞄盗むって言っただろ!? なんで鞄無くなったのか謎だったけど、その魔法が原因だったのかい!?」
「王子、落ち着いて。今はメイリーンさんの罪を問う場です」
「メイリーンの罪も問うべきだが、他の生徒の罪もちゃんと問えよ! その鞄まだ見つかってないんだぞ!?」
「まぁその話は後にしましょう。で、その次の日ですがこの日は『ウィルス』と『王子ノ足ノ小指、タンスニガンッテシテ相当痛ガール』が使われています。この日はメルナさんが風邪をひき……」
「後者、なっがい呪文だな!? と言うかあの日小指ぶつけたのはそういう裏があったんかい!?」
「そしてその次の日は『クルシー』と『ヒトコロース』が使われています。メルナさんは『この日の風邪がとても辛く苦しかった』と証言していますが、これもメイリーンさんがクルシーで……」
「待て待て待て、今絶対やっちゃいけない呪文が聞こえたぞ!? 即急に衛兵呼んで調査させるべきだろ!?」
「ちなみにこの次の日は『死体キエール』と『証拠インメーツ』が使われていますが、使用者はメイリーンさんではないので関係ありません」
「メイリーンとは関係ないけど、ヒトコロースと関係大有りだろ!? 完全に証拠消しにかかってるじゃねーか! というかこの使用記録ある時点で証拠残ってるし!」
「そして昨日は『パラライズ』と『国王1週間後ニ絶対殺ース』が使われていました。このパラライズもメイリーンさんがメルナさんに使い、金縛りを引き起こし……」
「衛兵いるかーっ! メイリーンとかどうでもいいから後者の呪文使った奴探して捕えろーっ!! 父上の暗殺企ててるぞーっ!?」
「ここまでがメイリーンさんが使った魔法の全てです。どうです? メルナさんをいじめていた事を認めますか?」
「くっ。これは認めるしかないようですね……」
メイリーンはそう言いガクッと地面に膝をついた。
「どうです王子、証拠としては十分な能力があるでしょう?」
「……もうメイリーンどうでもいいからさ、その使用記録きちんと見せろ。使用者欄見て色々逮捕する必要が出てきたから」
「仕方ないですね……どうぞ。個人情報なので口外しないで下さいよ」
「まったく……。ところでこの使用記録、今日の欄はどこに書かれている?」
「えーっと……あぁ、この『王子今夜絶対ニ死ーヌ』って書かれた部分が今日の欄です。ちなみに使用者はメルナさんですね」
「えっ」